ワンタイムパスワード|サイバーセキュリティ.com

ワンタイムパスワード

ワンタイムパスワード(One-Time Password, OTP)とは、一度限り有効な使い捨てのパスワードで、オンラインサービスやアプリケーションのログイン時などに利用されるセキュリティ手段です。通常の固定パスワードとは異なり、毎回異なるパスワードが発行されるため、悪意のある第三者がパスワードを盗み出しても再利用できず、不正アクセスを防ぐことができます。

ワンタイムパスワードは主に、ネットバンキング、電子商取引、二要素認証(2FA)、多要素認証(MFA)などに利用され、セキュリティ強化が必要な場面で多く使用されています。ワンタイムパスワードを利用することで、従来のパスワード認証方式の脆弱性を補い、より安全な認証が可能です。

ワンタイムパスワードの仕組みと発行方法

ワンタイムパスワードは、以下のような方法で発行され、ユーザーに提供されます。

1. SMSやメールによる送信

ログイン時にシステムが生成したワンタイムパスワードが、ユーザーの登録した電話番号にSMSで、またはメールアドレスに送信されます。ユーザーはこのワンタイムパスワードを画面に入力して認証を完了します。この方法は、簡単に実装できるため、多くのサービスで採用されています。

2. 認証アプリによる発行

Google AuthenticatorやAuthyといった認証アプリを使用して、ワンタイムパスワードを生成する方法です。アプリはユーザーのデバイスにインストールされ、認証コードを一定間隔で更新します。この方法は、オフラインでも利用可能で、利便性とセキュリティを両立しています。

3. ハードウェアトークン

金融機関や企業では、専用のハードウェアトークンが提供されることがあります。トークン端末は、ユーザーが持ち歩けるように設計されており、ボタンを押すとワンタイムパスワードが表示されます。この方法は物理的なセキュリティが強化されるため、高いセキュリティが求められるシステムで採用されています。

4. プッシュ通知認証

モバイルデバイスにプッシュ通知を送り、ユーザーが確認することでワンタイムパスワードの認証を行う方法です。パスワードの入力が不要なため、手軽に利用できます。また、プッシュ通知には位置情報などの追加情報を含めることもできるため、不正アクセス検知にも役立ちます。

ワンタイムパスワードの生成方式

ワンタイムパスワードには、代表的な生成方式がいくつかあります。

1. 時間ベースのワンタイムパスワード(TOTP)

TOTP(Time-based One-Time Password)は、一定の時間ごとに新しいパスワードを生成する方式です。生成されたパスワードは短時間のみ有効であり、時間が経過すると新しいパスワードが生成されます。認証サーバーとデバイスの時刻が同期している必要があるため、セキュリティが高く、銀行や認証アプリでよく利用されています。

2. カウンターベースのワンタイムパスワード(HOTP)

HOTP(HMAC-based One-Time Password)は、ユーザーが特定の操作を行うたびにカウンターを増やし、生成されるワンタイムパスワードです。生成にはカウンターの値を使用するため、TOTPとは異なり、時間の制約がありません。ワンタイムパスワードを使い切ると新しいパスワードが生成され、主にハードウェアトークンなどで使用されます。

ワンタイムパスワードのメリット

1. セキュリティ向上

ワンタイムパスワードは、一度きりの使い捨てパスワードのため、たとえパスワードが盗まれても再利用されることがありません。これにより、フィッシングやパスワード使い回しによる不正アクセスのリスクを低減できます。

2. 利便性の確保

認証アプリやSMS、メールを通じてワンタイムパスワードが手軽に取得できるため、利便性を損なうことなく高いセキュリティを実現できます。モバイルデバイスを活用すれば、いつでもどこでも認証が可能です。

3. パスワード忘れのリスク軽減

ワンタイムパスワードは毎回異なるため、ユーザーが覚える必要がありません。特に、複雑なパスワードを設定する必要がないため、パスワード忘れによるリスクも低減されます。

ワンタイムパスワードのデメリット

1. 利用時の手間

固定のパスワードに比べ、毎回新しいパスワードを取得する必要があるため、認証に多少の手間がかかります。特に、複数回ログインが必要な場合には不便さを感じることがあります。

2. デバイス依存

ワンタイムパスワードを受け取るために、スマートフォンやハードウェアトークンが必要な場合が多いため、これらのデバイスが使えないと認証が困難になります。また、SMSを利用する場合、電波状況によってはパスワードが届かないこともあります。

3. デバイス紛失のリスク

ワンタイムパスワードを生成するデバイス(認証アプリやハードウェアトークン)を紛失すると、再発行の手続きが必要となります。特に、ハードウェアトークンの場合、再発行まで認証が利用できないリスクがあります。

ワンタイムパスワードの具体的な活用シーン

1. オンラインバンキング

銀行のオンラインシステムでは、振込やログイン時にワンタイムパスワードを利用することで、不正アクセスや詐欺被害のリスクを低減しています。振込時に毎回異なるワンタイムパスワードを入力することで、認証の安全性が確保されます。

2. 二要素認証(2FA)

ワンタイムパスワードは、ユーザーIDとパスワードの組み合わせに加えて利用される二要素認証(2FA)において広く採用されています。特に、SNSやメールサービス、クラウドサービスなどのアカウント保護で多く使用されています。

3. 社内システムへのログイン

企業の社内システムやVPN接続で、ワンタイムパスワードを用いるケースも増えています。これにより、リモートワークやテレワークの際の安全なアクセスが確保され、不正アクセスからシステムを保護できます。

4. 電子取引やオンラインショッピング

一部のオンラインショップでは、高額な取引や初回取引時にワンタイムパスワードを使用して、なりすましによる購入を防止しています。オンライン決済での利用者認証にも役立っています。

まとめ

ワンタイムパスワードは、一度限りの使い捨てパスワードを利用することで、パスワード盗難や不正アクセスを防ぐための有効なセキュリティ手段です。TOTPやHOTPといった生成方式で安全に認証を行い、銀行業務やオンライン取引、社内システムなど、幅広い分野で活用されています。

ワンタイムパスワードの導入によって、従来のパスワード認証の脆弱性を補うことができ、特に二要素認証として使用することで、利便性とセキュリティを両立できます。一方で、デバイス依存や利用時の手間といったデメリットもあるため、利用シーンに応じて適切に運用することが求められます。


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