リバース・ブルートフォース攻撃とは、通常のブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)とは逆のアプローチで行われるサイバー攻撃手法です。一般的なブルートフォース攻撃では、特定のユーザーアカウントに対して多数のパスワード候補を試行して突破を試みますが、リバース・ブルートフォース攻撃では、攻撃者が既知のパスワードを持っており、それを複数の異なるユーザー名で試行することで、認証突破を狙います。
この攻撃方法は、同じパスワードを使い回しているユーザーが多いことを利用した手法であり、特にパスワードが一般的である場合(例えば「password123」や「12345678」など)、多くのアカウントで使用されている可能性が高いため、成功率が上がる傾向にあります。以下では、リバース・ブルートフォース攻撃の特徴や手法、影響、そして対策について詳しく解説します。
リバース・ブルートフォース攻撃の特徴
1. 一般的なパスワードを複数のユーザーに試行
リバース・ブルートフォース攻撃では、攻撃者が「12345678」や「password123」などの一般的に使われるパスワードを用意し、複数のユーザー名に対して認証試行を繰り返します。これにより、パスワードが一致するユーザー名を見つけ出し、不正にログインを成功させます。
2. パスワード流出データを悪用
リバース・ブルートフォース攻撃では、過去に流出したパスワードデータを使用することが多く、既知のパスワードリストや辞書を用いることで成功率を高めます。パスワード漏洩が頻発する現代では、こうした流出データがダークウェブやハッカーの間で共有されており、攻撃者はこれを悪用して認証突破を図ります。
3. ログイン試行数が分散され、検出が難しい
一般的なブルートフォース攻撃は、特定のアカウントに対してログイン試行を繰り返すため、異常な試行回数が検知されやすいです。一方で、リバース・ブルートフォース攻撃では複数のユーザー名に対して試行が分散されるため、検知システムを回避しやすくなります。
4. パスワードリサイクルのリスクを狙う
リバース・ブルートフォース攻撃は、ユーザーが複数のアカウントで同じパスワードを使い回す「パスワードリサイクル」を狙う攻撃です。こうした習慣は多くの人に見られるため、特定の一般的なパスワードを試すことで、複数の異なるユーザーアカウントに対する突破を狙います。
リバース・ブルートフォース攻撃の手法
リバース・ブルートフォース攻撃には、以下のような手法が含まれます。
1. 共通パスワードの利用
攻撃者は、よく使われるパスワード(例:「password123」「123456」「qwerty」)をリスト化し、これを複数のユーザーアカウントに試行します。この方法は、共通パスワードが使われる頻度が高いアカウントで成功しやすく、特に一般ユーザーが多いサービスで効果を発揮します。
2. 既知のパスワードリストからの攻撃
過去に発生したデータ流出事件で漏洩したパスワードリストがダークウェブなどで公開されていることがあります。攻撃者はこれらのリストからパスワードを選択し、リバース・ブルートフォース攻撃を行います。流出パスワードリストには、実際にユーザーが設定したパスワードが含まれるため、成功率が高まります。
3. 辞書攻撃の併用
リバース・ブルートフォース攻撃では、辞書攻撃も併用される場合があります。辞書攻撃は、一般的な単語やフレーズをリスト化して試行する手法で、特定のキーワードやフレーズをユーザーがパスワードに設定しているケースに効果を発揮します。
リバース・ブルートフォース攻撃の影響
リバース・ブルートフォース攻撃は、特に多くのユーザーが同じパスワードを複数のアカウントで使用している場合に大きな影響をもたらします。以下はその主な影響です。
1. 不正アクセスによる個人情報の漏洩
攻撃者がリバース・ブルートフォース攻撃によってアカウントを突破すると、個人情報や機密情報にアクセスできるようになります。この結果、被害者の個人情報が漏洩し、悪用されるリスクが生じます。
2. サービスへの信頼低下
リバース・ブルートフォース攻撃によってサービスが攻撃され、ユーザーのアカウントが乗っ取られると、サービスの信頼性が低下し、ユーザー離れが進む可能性があります。特に個人情報や金銭取引が絡むサービスでは、信頼の低下は大きな損害をもたらします。
3. 二次被害のリスク
リバース・ブルートフォース攻撃で突破されたアカウント情報は、他のサービスでも利用される可能性があり、他のアカウントも同様に乗っ取られるリスクがあります。これにより、二次被害として複数のサービスで被害が発生する恐れが高まります。
リバース・ブルートフォース攻撃への対策
リバース・ブルートフォース攻撃からアカウントを守るためには、以下の対策が有効です。
1. 複雑なパスワードの設定
複雑で推測しにくいパスワードを設定することで、攻撃の成功率を低減できます。長さが10文字以上で、数字・記号・大文字・小文字を組み合わせたパスワードにすることで、リバース・ブルートフォース攻撃が成功しにくくなります。
2. パスワードの使い回しを避ける
複数のアカウントで同じパスワードを使い回すことは、リバース・ブルートフォース攻撃を受けやすくなる原因です。異なるアカウントには異なるパスワードを設定し、パスワード管理ツールを利用することで、複雑でユニークなパスワードの管理が容易になります。
3. 多要素認証(MFA)の導入
多要素認証(MFA)を設定することで、パスワードのみでの認証突破を防ぎ、アカウントのセキュリティを強化できます。これにより、パスワードが突破されたとしても、二重の認証手段が必要となるため、攻撃を防止する効果が高まります。
4. ログイン試行数の制限
ログイン試行回数を制限することで、一定回数以上の失敗が発生した場合にアカウントを一時的にロックしたり、追加認証を求めるようにすることで、リバース・ブルートフォース攻撃を防ぐことができます。これにより、攻撃者が短時間でのログイン試行を続けることが難しくなります。
5. IPアドレスや地理的異常の監視
アクセス元IPアドレスや地理的な異常アクセスを監視し、異常なログイン試行が発生した際にはアラートを発するシステムを導入することも有効です。特に複数のIPから短時間にリクエストが集中する場合には、ログインを遮断するなどの対策を講じます。
まとめ
リバース・ブルートフォース攻撃は、既知のパスワードや一般的に使われるパスワードを複数のユーザー名に対して試行する攻撃手法であり、特にパスワードの使い回しが多い場合に効果的です。被害を防ぐためには、複雑なパスワードの使用、パスワードの使い回しを避ける、MFAの導入、ログイン試行回数の制限などが有効です。
リバース・ブルートフォース攻撃は、現代のセキュリティリスクとして無視できない存在であり、ユーザーとサービス提供者双方が適切な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることが求められます。