バースデー攻撃|サイバーセキュリティ.com

バースデー攻撃

バースデー攻撃(Birthday Attack)**とは、暗号学において、特定のハッシュ関数や暗号アルゴリズムの衝突(同じハッシュ値が得られる異なるデータ)を利用して、セキュリティを突破するための手法です。この攻撃は、「誕生日のパラドックス」に基づいており、暗号の強度を低下させる可能性があります。特にハッシュ関数において、異なるデータで同じハッシュ値が生成されることがある場合に有効です。

バースデー攻撃は、ハッシュ衝突の検出を目的としており、暗号強度の評価やデジタル署名の脆弱性評価に利用されることが多いです。

バースデー攻撃の仕組み

バースデー攻撃は、誕生日のパラドックスと呼ばれる確率的な現象に基づいています。たとえば、23人が集まると、2人の誕生日が同じである確率は約50%になるというものです。これは、個別の誕生日の組み合わせが増えるため、思った以上に衝突が発生しやすくなるためです。この現象はハッシュ関数の衝突でも同様で、ハッシュ値の出力サイズがnビットの場合、約2n/22^{n/2}回の試行でハッシュ衝突が見つかる可能性があります。

具体的な例を挙げると、128ビットのハッシュ関数であれば、理論上は2642^{64}回の試行で同じハッシュ値が得られる衝突が見つかる確率が50%に達します。

ハッシュ衝突の発生方法

  1. 入力データの生成:攻撃者は、異なるデータを次々とハッシュ関数に入力します。
  2. ハッシュ値の比較:生成されたハッシュ値を比較し、同じハッシュ値が得られる異なる入力データが見つかれば衝突が発生したことになります。
  3. 攻撃の利用:衝突が見つかったハッシュ値を利用して、メッセージの内容が同じであるかのように装うことが可能になります。これにより、改ざん検出やデジタル署名の信頼性が損なわれる可能性があります。

バースデー攻撃の例

バースデー攻撃が成功した場合、以下のようなリスクが発生します。

  • デジタル署名の改ざん
    デジタル署名では、文書やメッセージが改ざんされていないことを確認するためにハッシュ値が利用されますが、バースデー攻撃でハッシュ衝突が発生すると、異なるメッセージで同じ署名が得られ、改ざんが検出されにくくなります。
  • ファイルの同一性検証のすり抜け
    ハッシュ値は、ファイルの同一性を確認するために使用されますが、バースデー攻撃によって同じハッシュ値を持つ異なるファイルが生成されると、不正なファイルが正規のファイルと同じであるかのように認識され、セキュリティ上の脆弱性となります。

SHA-1の脆弱性とバースデー攻撃

一部の古いハッシュ関数(SHA-1など)は、バースデー攻撃によるハッシュ衝突が比較的見つかりやすいため、セキュリティリスクが高くなっています。そのため、近年ではSHA-256やSHA-3といった、より安全性の高いハッシュ関数の使用が推奨されています。

バースデー攻撃の対策

バースデー攻撃に対抗するには、ハッシュ衝突の発生確率を下げるため、ハッシュ値のビット長を十分に長く保つことが重要です。また、以下の対策が有効です。

  1. 強力なハッシュ関数の使用 SHA-1などの脆弱性が報告されているハッシュ関数ではなく、SHA-256やSHA-3といった衝突耐性の高いハッシュ関数を使用することが推奨されます。
  2. ハッシュ関数の定期的な見直し 暗号学的な安全性は時間の経過や新たな攻撃手法の出現により変わるため、ハッシュ関数を定期的に見直し、更新することが重要です。
  3. ハッシュ値のダブルハッシュ ハッシュ値をさらに別のハッシュ関数でハッシュ化する「ダブルハッシュ」や、他の手法と併用することで、衝突のリスクを低減することができます。

まとめ

バースデー攻撃は、ハッシュ関数における衝突を利用した攻撃手法で、特定の条件下で暗号の強度を低下させる可能性があります。誕生日のパラドックスに基づいて衝突の確率を高め、セキュリティシステムやデジタル署名に対して不正なアクセスを図ることができるため、対策が必要です。

近年では、SHA-256やSHA-3などの高強度なハッシュ関数の利用や、定期的な見直しにより、バースデー攻撃のリスクを低減し、安全なシステム設計が求められています。


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