サイバーディフェンスマトリックス|サイバーセキュリティ.com

サイバーディフェンスマトリックス

サイバーディフェンスマトリックス(Cyber Defense Matrix)とは、企業や組織がサイバーセキュリティ対策の全体像を可視化し、効果的な防御策を構築するためのフレームワークです。このマトリックスは、さまざまなセキュリティ対策を体系的に整理し、特定の分野や状況で必要な対策を見つけ出し、既存の防御体制のギャップを発見するために活用されます。

サイバーディフェンスマトリックスは、元AmazonのチーフセキュリティアーキテクトであるSounil Yu氏によって考案されました。攻撃からの保護を目的としたサイバーセキュリティの主要要素を「NISTのサイバーセキュリティフレームワーク」と、組織内の資産カテゴリごとに整理し、実用的な視点でセキュリティ対策を見える化するためのモデルです。

サイバーディフェンスマトリックスの構造

サイバーディフェンスマトリックスは、次の2つの軸で構成されています:

  1. 横軸:サイバーセキュリティの5つの機能
    サイバーディフェンスマトリックスの横軸は、NIST(米国国立標準技術研究所)のサイバーセキュリティフレームワークで提唱された5つの主要機能で構成されます:

    • 識別(Identify):重要な資産やリスクを特定し、セキュリティの優先順位を決める。
    • 防御(Protect):脅威が発生する前に防止し、システムやデータを守る。
    • 検知(Detect):脅威を迅速に発見し、異常な動作を監視する。
    • 対応(Respond):発生した脅威に対して迅速に対策を行い、被害を最小限にする。
    • 復旧(Recover):インシデントから回復し、システムの正常な運用を回復する。
  2. 縦軸:組織内の資産カテゴリ
    縦軸は、組織が守るべき資産を「デバイス」「アプリケーション」「ネットワーク」「データ」「ユーザー」の5つに分類します。これにより、各資産がどの機能に対応するべきかが明確になります。

マトリックスは上記のように横5×縦5の25のマス目で構成されており、組織がそれぞれの資産カテゴリについてどの機能で対策が実施されているか、またはどこに不足があるかを一目で把握できるようになっています。

サイバーディフェンスマトリックスの活用方法

サイバーディフェンスマトリックスは、以下のように活用されます。

  1. 既存のセキュリティ対策の評価とギャップ分析
    サイバーディフェンスマトリックスを用いることで、既存のセキュリティ対策がどの資産・機能に適用されているかを確認できます。これにより、対策が不十分な領域を特定し、追加の対策が必要な領域や未対応の領域(ギャップ)を明らかにします。
  2. サイバーセキュリティ戦略の構築
    マトリックスに基づいて、各資産と機能ごとに必要な対策を一覧化し、長期的なサイバーセキュリティ戦略を策定します。こうした戦略を基に、必要なリソースの割り当てや予算配分を計画できます。
  3. 新たなセキュリティ製品の評価
    新しいセキュリティソリューションを導入する際、マトリックス上でその製品がどの領域に効果を発揮するのかを可視化し、既存の対策との重複や補完関係を確認します。これにより、最も効果的な製品選定が可能となります。
  4. インシデント対応の準備と評価
    それぞれのセキュリティ機能ごとに対応計画を定義し、インシデント対応プロセスを評価します。脅威を検知した際のプロセスから復旧までの一連の対策が整っているかを確認することで、迅速な対応体制を構築できます。
  5. セキュリティ意識の向上と教育
    サイバーディフェンスマトリックスを用いて、社員や経営層に対してセキュリティの重要性や現状の課題を視覚的に示し、意識を向上させます。各部門でのセキュリティ教育やトレーニングにも活用できます。

サイバーディフェンスマトリックスの利点

サイバーディフェンスマトリックスを活用することで、以下のようなメリットがあります。

  1. 全体像の可視化
    マトリックスにより、組織のサイバーセキュリティ体制の全体像を一目で把握でき、対策の網羅性が評価しやすくなります。
  2. セキュリティギャップの明確化
    対策が不足している領域や、他の資産カテゴリではカバーされているが特定のカテゴリに欠けている対策を発見しやすくなります。
  3. リソース配分の最適化
    リスクの大きい領域にリソースを集中させたり、重複している対策を調整したりすることで、コストの無駄を削減できます。
  4. 戦略的なセキュリティ強化
    全体戦略の一環として優先度の高い領域を識別し、計画的に対策を実施することで、長期的にセキュリティを強化できます。
  5. 複数部門での協力体制の構築
    サイバーディフェンスマトリックスを用いることで、セキュリティチームだけでなく、IT部門や経営層、その他の部門とも連携して、組織全体でセキュリティ対策に取り組む体制を作ることができます。

まとめ

サイバーディフェンスマトリックスは、組織のサイバーセキュリティ対策を体系的に整理し、全体像の把握と戦略的な防御策構築に役立つフレームワークです。NISTの5つの主要なセキュリティ機能と組織の資産カテゴリを基に、対策の不足領域や強化が必要な部分を明らかにし、計画的かつ効率的にセキュリティ体制を構築します。


SNSでもご購読できます。