POODLE攻撃(Padding Oracle On Downgraded Legacy Encryption)とは、2014年に発見された暗号プロトコルに対する脆弱性であり、SSL 3.0(Secure Sockets Layer 3.0)に存在する暗号化の欠陥を悪用して通信内容を解読する攻撃手法です。名前の由来は「ダウングレードされたレガシー暗号のパディングオラクル攻撃」から取られており、略してPOODLE(プードル)と呼ばれています。
この脆弱性を利用することで、攻撃者は被害者の通信内容を盗聴し、セッションのクッキーや認証情報を取得する可能性があります。具体的には、攻撃者は被害者とサーバー間の通信を中間者攻撃(Man-In-The-Middle、MITM)として悪用し、SSL 3.0にフォールバックされた暗号化通信の内容を解読することが可能になります。
POODLE攻撃の背景
SSL 3.0は、1996年に登場した古い暗号プロトコルで、後継のTLS(Transport Layer Security)が普及するまで使用されていました。しかし、互換性のために一部のシステムでは依然としてSSL 3.0が有効にされている場合があり、攻撃者はこれを悪用して暗号化の強度を低下させる「プロトコルダウングレード攻撃」を行います。これにより、最新のTLSが使用されている環境でも、意図的に古いSSL 3.0を使用させて脆弱性を突くことが可能となります。
POODLE攻撃の仕組み
- プロトコルダウングレード攻撃
通常、クライアント(ユーザーのブラウザ)とサーバーはTLSを使用して通信します。しかし、攻撃者は通信を中断させることで、クライアントとサーバーが互換性のあるSSL 3.0にフォールバックするように仕向けます。 - パディングオラクル攻撃の利用
SSL 3.0には、CBCモード(Cipher Block Chaining)に関する脆弱性が存在します。攻撃者はこの脆弱性を利用して、パディングの処理を通じて暗号化された通信データを徐々に解読し、平文を復元することが可能です。具体的には、暗号化されたメッセージの末尾のバイトを変更してエラーメッセージを確認し、メッセージの内容を推測する手法が取られます。 - セッション情報の盗聴
最終的に、攻撃者はセッションのクッキーや認証情報を取得し、不正にセッションを乗っ取るなどの攻撃が可能になります。
POODLE攻撃の影響
- 機密情報の漏洩
攻撃者は、セッションのクッキーや認証情報を取得することで、ユーザーのセッションを乗っ取り、不正アクセスを行う可能性があります。これにより、個人情報や機密データが漏洩するリスクが生じます。 - 古いプロトコルの脆弱性
SSL 3.0は過去のプロトコルであり、多くの新しい脆弱性も抱えている可能性があります。POODLE攻撃は、古いプロトコルを使用する環境で特に影響が大きいです。
POODLE攻撃への対策
1. SSL 3.0の無効化
サーバーやクライアント側でSSL 3.0を無効化し、TLS 1.1以上のバージョンを強制的に使用するよう設定します。これにより、POODLE攻撃のリスクを根本的に排除できます。特に、ブラウザの設定でSSL 3.0を無効化することで、古いプロトコルへのフォールバックを防ぐことが可能です。
2. TLS_FALLBACK_SCSVの導入
TLS_FALLBACK_SCSV(Signalling Cipher Suite Value)は、プロトコルダウングレード攻撃を防ぐためのメカニズムです。これを導入することで、クライアントが無理に古いプロトコル(SSL 3.0など)にフォールバックすることを防ぐことができます。
3. 暗号設定の見直し
サーバーやクライアントで使用する暗号スイートの設定を見直し、セキュリティ上の問題がある古い暗号スイートを無効化することで、より安全な暗号通信を確保します。
4. セキュリティポリシーの更新
企業や組織内でセキュリティポリシーを見直し、古いプロトコルや脆弱性のある通信方式を使用しないように設定します。また、最新のセキュリティパッチを適用し、継続的なセキュリティ監視を行うことが重要です。
まとめ
POODLE攻撃は、古い暗号プロトコルであるSSL 3.0の脆弱性を悪用し、通信内容を解読する攻撃手法です。プロトコルダウングレード攻撃を通じて暗号化強度を低下させ、パディングオラクル攻撃で通信データを解読することで、機密情報の盗聴やセッション乗っ取りを可能にします。対策として、SSL 3.0の無効化やTLS_FALLBACK_SCSVの導入、暗号スイートの見直しを行い、セキュリティを強化することが重要です。