NIST SP800-218|サイバーセキュリティ.com

NIST SP800-218

NIST SP 800-218は、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が発行したソフトウェア開発におけるセキュリティ対策のガイドラインです。正式名称は**”Secure Software Development Framework (SSDF)”**で、ソフトウェア開発のライフサイクル全体を通じてセキュリティを強化するためのフレームワークを提供します。

NIST SP 800-218は、ソフトウェアの設計、開発、運用、保守の各段階で適用できるセキュリティベストプラクティスを体系的にまとめたもので、特に政府機関や規制の多い業界での利用を想定しています。

NIST SP 800-218の目的

  1. セキュアなソフトウェアの開発 開発プロセスにセキュリティを組み込み、安全なソフトウェアを提供します。
  2. サプライチェーンセキュリティの確保 ソフトウェア開発に関わるすべてのサプライチェーンを安全に保つための指針を提供します。
  3. リスクの軽減 脆弱性の発生リスクを最小限に抑え、サイバー攻撃から組織やユーザーを保護します。
  4. 政府調達要件への準拠 アメリカ政府の調達基準に準拠するため、開発者や企業が必要なフレームワークを実践できるよう支援します。

NIST SP 800-218の構成

このフレームワークは、セキュリティ対策を4つの主要カテゴリに分類しています。それぞれに具体的なプラクティスと行動指針が示されています。

1. 準備(Prepare)

ソフトウェア開発の全体計画や環境でセキュリティを考慮する段階。

  • セキュリティ要件の定義
    • 開発に先立ち、ソフトウェアのセキュリティ要件を明確化。
  • セキュリティリソースの確保
    • セキュリティツールや訓練を含む必要なリソースを提供。
  • セキュリティ責任の明確化
    • 各開発ステージにおけるセキュリティの責任を割り当て。

2. 保護(Protect)

ソフトウェア開発中にセキュリティリスクを軽減するための取り組み。

  • 安全な設計の実施
    • 設計段階で脅威モデリングやセキュリティレビューを実施。
  • コードのセキュリティ強化
    • コーディング規約に基づき、安全なプログラミングを推奨。
  • 開発環境の保護
    • 開発ツールやシステムをセキュアに維持。

3. 検出(Detect)

セキュリティリスクや脆弱性を迅速に発見し、対応するための取り組み。

  • コードレビューと静的解析
    • コードの自動解析ツールを使用して、脆弱性を検出。
  • 動的およびインタラクティブテスト
    • 実行時の挙動を検証してセキュリティ欠陥を発見。
  • サプライチェーンの監視
    • 使用するオープンソースライブラリやサードパーティソフトウェアのセキュリティを定期的に評価。

4. 対応(Respond)

セキュリティインシデントに対処し、改善を継続するための取り組み。

  • インシデント対応計画の実施
    • 脆弱性やインシデントが発生した場合の対応手順を明確化。
  • 脆弱性の修正
    • 発見された脆弱性を迅速に修正し、修正内容を記録。
  • 継続的改善
    • セキュリティ対策の評価を継続的に行い、プロセスを改善。

NIST SP 800-218の適用対象

1. 政府機関

アメリカ連邦政府機関は、NIST SP 800-218に準拠することで調達基準を満たす必要があります。

2. ソフトウェア開発企業

民間企業は、セキュリティを強化するためにこのフレームワークを活用し、製品の信頼性を向上させることが求められます。

3. サプライチェーン全体

オープンソースソフトウェアやサードパーティライブラリを含むすべての関連開発者やプロバイダーが対象です。

NIST SP 800-218を実践するためのステップ

1. 現状評価

既存の開発プロセスとNIST SP 800-218のギャップを特定します。

2. セキュリティ方針の策定

フレームワークに基づき、セキュアな開発を実現するためのポリシーや手順を作成します。

3. ツールの導入

脆弱性スキャンツールや静的解析ツールなど、必要な技術を導入します。

4. トレーニングの実施

開発者やプロジェクト管理者に対して、セキュア開発のトレーニングを行います。

5. 継続的改善

定期的な監査やレビューを通じて、開発プロセスを最適化します。

NIST SP 800-218のメリット

  1. セキュリティ強化 ソフトウェアの設計から運用まで、セキュリティを一貫して確保します。
  2. リスク軽減 脆弱性やサイバー攻撃のリスクを最小化できます。
  3. 信頼性向上 セキュリティに準拠した製品を提供することで、顧客や取引先の信頼を得られます。
  4. 規制準拠 政府調達要件や業界規制に対応することが可能です。
  5. 標準化されたプロセス 一貫性のある開発フレームワークにより、効率的な運用が可能になります。

NIST SP 800-218の課題

  1. 導入コスト 新しいプロセスやツールの導入にはコストがかかる場合があります。
  2. 開発速度への影響 セキュリティ対策を組み込むことで、開発期間が延びる可能性があります。
  3. トレーニングの必要性 開発者やプロジェクトチームにセキュア開発の教育を行う必要があります。

まとめ

NIST SP 800-218は、セキュリティを重視したソフトウェア開発を実現するための強力なフレームワークです。政府機関だけでなく、民間企業にとっても、信頼性の高いソフトウェアを提供し、サプライチェーン全体のセキュリティを向上させるための基盤となります。導入にはコストやリソースが必要ですが、サイバー脅威が増大する現代において、NIST SP 800-218はセキュアなソフトウェア開発のために不可欠な指針となるでしょう。


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