NDR(Network Detection and Response)|サイバーセキュリティ.com

NDR(Network Detection and Response)

NDR(Network Detection and Response)とは、ネットワーク上の脅威を検知し、これに対して迅速に対応するためのセキュリティソリューションです。NDRは、ネットワークトラフィックをリアルタイムで監視し、異常な動作や攻撃の兆候を検出して、サイバー攻撃から企業や組織を守ります。従来の境界防御やウイルス対策ソフトでは見つけにくい高度な脅威にも対応できるため、近年では多くの企業がNDRを導入しています。

NDRは、脅威検出後に自動的に対策を講じる機能や、セキュリティ担当者にアラートを送る機能も備えており、これにより迅速なインシデント対応を可能にします。

NDRの特徴

1. ネットワーク全体の監視

NDRは、企業や組織のネットワーク全体をリアルタイムで監視します。ネットワーク上を流れるすべてのトラフィック(内部および外部)をキャプチャし、その動作やパターンを分析することで、異常な挙動や不正なアクセスを早期に検知します。特に、マルウェアランサムウェアゼロデイ攻撃といった高度な脅威にも対応できるのがNDRの強みです。

2. AI・機械学習を活用した脅威検知

NDRは、AI(人工知能)や機械学習を活用して、通常のネットワークトラフィックパターンと異なる異常な動きを検知します。これにより、従来のシグネチャベースの脅威検知技術では検出が難しかった未知の脅威やゼロデイ攻撃にも対応することが可能です。また、機械学習はネットワークの挙動を学習し、時間の経過とともに精度を高めていくため、より効果的なセキュリティ対策を実現します。

3. 高度な脅威の可視化

NDRは、ネットワーク全体の可視化を強化することで、特定のデバイスやエンドポイントだけでなく、全体的なセキュリティの状態を把握できるようにします。これにより、ネットワーク内で何が起きているのかを直感的に理解でき、脅威が発生した場合には迅速に対応するための重要な情報を提供します。

4. インシデント対応の自動化

NDRの多くは、自動化されたインシデント対応機能を備えています。異常な活動が検知されると、自動的にアラートを発し、ネットワークを隔離したり、疑わしい通信をブロックするなど、即座に対策を実行します。このような自動対応により、セキュリティ担当者の負担を軽減し、脅威に対する迅速な対処が可能となります。

NDRのメリット

1. 高度な脅威への対応

従来のセキュリティソリューションでは検知が難しい高度な脅威(APT: Advanced Persistent Threatsやゼロデイ攻撃)にも対応可能です。NDRはネットワークのトラフィックを分析し、これまでにない攻撃手法や未知のマルウェアを検出することができます。特に、サイバー攻撃が高度化・巧妙化している現代において、NDRは必須のツールといえます。

2. リアルタイムの脅威検知と即応

NDRはネットワークトラフィックをリアルタイムで監視し、異常を即座に検知します。これにより、脅威が発生してから被害が拡大するまでの間に素早く対応することができ、被害を最小限に抑えることができます。特に、ランサムウェアやマルウェアがネットワークに拡散する前に対処できる点が重要です。

3. ネットワーク全体のセキュリティ強化

NDRはネットワーク全体をカバーするため、特定のデバイスやエンドポイントだけでなく、内部ネットワークやクラウド環境まで含めてセキュリティを強化します。これにより、企業や組織は全方位的なセキュリティ対策を講じることができ、潜在的な脆弱性を減らすことが可能です。

4. 管理と運用の効率化

NDRは、脅威の検出から対応までを一元管理できるため、セキュリティ担当者の業務を効率化します。ダッシュボードを通じてネットワーク全体のセキュリティ状態を把握でき、脅威が検出された際には迅速に対応策を実行できるため、運用管理がスムーズになります。

NDRとEDR、SIEMの違い

NDRはEDR(Endpoint Detection and Response)やSIEMSecurity Information and Event Management)と似た役割を持ちますが、それぞれの用途には明確な違いがあります。

  • EDR(Endpoint Detection and Response)は、エンドポイント(PCやスマートフォンなどの端末)を対象に、脅威の検出や対応を行います。エンドポイントに対する攻撃に特化しているのがEDRの特徴です。一方、NDRはエンドポイントに限定せず、ネットワーク全体を監視対象としています。
  • SIEM(Security Information and Event Management)は、ログデータやイベント情報を集約して分析し、脅威を検出するツールです。SIEMは主にログベースの分析を行い、異常な挙動やセキュリティインシデントを検知しますが、NDRはリアルタイムでネットワークトラフィックを分析する点で異なります。

多くの企業では、NDR、EDR、SIEMを組み合わせて使用することで、ネットワーク全体とエンドポイントの双方でセキュリティ体制を強化し、幅広い脅威に対応できるようにしています。

NDR導入のステップ

1. 現状のネットワーク環境の確認

まず、企業や組織のネットワーク構成やセキュリティの現状を確認します。どのようなトラフィックが流れているのか、どの部分に脆弱性が存在するのかを把握し、NDRをどのように適用するかを計画します。

2. NDRソリューションの選定

次に、自社のニーズに合ったNDRソリューションを選定します。多くのNDRプロバイダーが存在するため、価格、機能、サポート体制、スケーラビリティなどを考慮し、適切な製品を選びます。代表的なNDRソリューションには、DarktraceExtraHopVectraなどがあります。

3. NDRの導入と設定

選定したNDRソリューションをネットワークに導入し、適切な設定を行います。リアルタイムでトラフィックを監視するためのセンサーやエージェントを配置し、ダッシュボードの設定を最適化します。さらに、脅威検知時の対応方法(自動ブロック、アラート発信など)も事前に設定します。

4. 運用と継続的なモニタリング

NDRは導入後、継続的に運用する必要があります。日常的にネットワークの状態を監視し、脅威の発生時には迅速に対応します。また、NDRが生成するレポートを活用して、定期的にセキュリティポリシーを見直し、ネットワークセキュリティの改善を行います。

NDRの未来

今後、NDRはさらに進化し、より高度なAI技術や機械学習を取り入れることで、脅威検知の精度が一層向上すると予想されます。また、5Gの普及やIoT(Internet of Things)の拡大に伴い、NDRはこれらの新しいネットワーク環境にも適応していくことが求められるでしょう。クラウド環境やハイブリッドネットワークに対応したNDRソリューションの需要も増加すると考えられます。

まとめ

NDR(Network Detection and Response)は、ネットワーク全体をリアルタイムで監視し、異常な動作やサイバー攻撃を検出して迅速に対応するセキュリティソリューションです。AIや機械学習を活用して未知の脅威にも対応でき、ネットワーク全体のセキュリティを強化します。EDRやSIEMと組み合わせることで、より強固なセキュリティ対策を実現できるため、現代の企業にとってNDRは不可欠なツールといえるでしょう。


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