サマータイム制度導入問題の本質、プロセスフローを理解していない大人たち|サイバーセキュリティ.com

サマータイム制度導入問題の本質、プロセスフローを理解していない大人たち



既に各所で話題になっている、東京オリンピックに合わせた「サマータイム制度」の導入問題。おそらく、このコラムをご覧になるような方は、「できるわけないだろ」と至極当たり前の反応をされておられると思います。

ただ、なぜこんな”トンデモ提案”が、国の威信をかけるオリンピックを運営するほどの組織から出てくるのか。その辺りは考えておく必要があると感じます。

オリンピックに合わせたサマータイム導入が不可能な理由

一応、オリンピックに合わせたサマータイムが導入できない理由も書いておきます。

「システム対応が間に合わないから」

以上。

影響を調べるだけでも2年では足りない

“人体への影響”や”労働問題”などの話も出ていますが、それは長期的に導入するかどうかの話が出た時に考えれば宜しい。今回の件では枝葉です。”あと2年で導入”と期限が決まっているのであれば、もう「間に合わない」で終わり、です。

世の中に数多あるシステムのほぼ全てが、今までの日本時間で動いているのです。影響を調べるだけでも2年では足りないでしょう。

もし強行したら何が起こるか

もし、強行したらどれだけの被害が発生するか想像もできません。電気、ガス、水道だって人の生活パターンによって出力調整しますし、電車・飛行機の運行システムにズレが生じたら大事故です。金融だって決裁や振り込みが滞るかも知れません。上層部の無理なシステム統合スケジュールでシステムが破綻し、十年以上かけてようやく移行作業にまでこぎつけた、みずほ銀行のシステムなどは、もうお手上げでしょう。

重要インフラだけでもどれだけの被害が出るか想像もつきません。でも、それも”ごく一部”です。全ての企業・全ての家庭で使っているシステムが絡んでくるのです。万一強行されたら、戦後最悪の人災が引き起こされることは、ほぼ間違いないでしょう。

オリンピック組織委員会に欠けていること

企業が何か目標を決めた時、経営者は「達成するまでの道筋」を考えます。最終目標へのプロセスフローチャートの作成。これが最初に行うことです。これは、内部統制でもISOマネジメントシステムでも、要求されている事項です。

そのプロセスの1つに「システム変更」があれば、可能か不可能かなんてすぐわかることです。にもかかわらず、提案がなされたということは…

  1. できないことはわかっていたが、何らかの理由で提案した
  2. プロセスフローにシステム変更が無かった
  3. そもそもプロセスフローを考えていない

のいずれかなのでしょう。どんな理由かはわかりませんが、できれば1であって欲しいですね。

2であれば「組織運営能力の欠如」が明白です。サイバーセキュリティ経営ガイドラインの中で「ITリスクへの対応は”経営責任である”」と、国も認めているのですから。

そして3であれば、最早、”論理思考ができない人たち”ということですね。組織運営どころか、重要な仕事を任せるわけには行きません。

プログラミング教育を導入した目的とは

かなり強い批判をしましたが、これは”批判しないといけないこと”だと考えるからです。なぜなら、子供たちに顔向けができないからです。

文部科学省は、小学校での「プログラミング教育導入」を決定しました。これは”フローチャートを作成する能力を持たせること”を目指しています。そして、この教育をする目的は「論理的思考を持ち、自ら物事を考えられる次世代のリーダーを育成すること」なのだそうです。

プロセスフローを理解できず、論理的に考えられないリーダーは生き残れない。つまり、子供たちに「こういうリーダーでは能力不足だよ」と教えようとしている典型が、オリンピック組織委員会の運営者たちなのです。

子供たちに対し「リーダーに必要だから勉強しろ」と言っているんですから、もちろんリーダーの大人たちも勉強しなければいけませんよね。そして、プログラミング教育で要求していることができていないリーダーがいるのであれば、しっかり批判しなければいけません。それが、子供たちに対する大人の責務でしょう。

オリンピック組織委員会に対して必要なこと

ボクシングの村田涼太選手の言葉を借りれば、オリンピック組織委員会の常務理事以上の方たちも「悪しき古き人間達」です。今の時代の、特に社会的影響の大きな組織の、リーダーになれる人間ではないのです。日本ボクシング連盟だけの話ではありません。リーダーとして居続けたいなら、必要なことは学びましょう。子供たちに強要する前に大人たちが。

日大アメフト問題でもそうでしたが、目標までのフローを描けないリーダーは、他人を追い詰めることで、他人任せで目標を達成しようとします。いわゆるブラック企業でも、よく見かけることです。このタイプの指導はもう社会的に否定されていますね。顕在化すれば、日大やアマチュアボクシングのように批判されています。

サマータイム制度導入などという荒唐無稽な提案で、オリンピック組織委員会も組織として問題があることが明確になりました。なぜ、こんなバカな提案が為されるに至ったか、検証する必要があるレベルだと思います。サマータイム制度の話題はもう置いて、組織委員会の問題に国民の興味もマスコミの報道も目を向けるべきなのではないでしょうか。


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