
2020年3月から日本でも5Gのサービスが開始しました。2020年11月現在では、一部の地域でしか利用できない5Gですが、2023年から2025年にかけて日本全国で利用可能地域を拡大する予定です。ところで5Gについて調べると気になるのが「Sub6」や「ミリ波」という言葉。これはどのような意味なのでしょうか。
今回は5Gで使われているSub6やミリ波についての概要と、5Gで注意すべきセキュリティについて徹底解説します。
5Gの種類
5Gとは、第5世代移動通信システムのことです。「超高速化」「超多数同時接続」「超低遅延」の3点を特徴である無線通信の規格のことで、2020年から日本でも5Gに対応しているスマートフォンが続々と販売されています。
しかしスマートフォンの仕様を見ると、「Sub6とミリ波に対応」や「Sub6のみに対応」などデバイスによって少し異なっている箇所があります。この2つの違いは、通信に使われる電波の周波数帯です。図で紹介すると次のようになっています。
それではこれら2つの違いについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
Sub6(サブシックス)
Sub6は5Gの中でも6GHz未満の周波数帯のことです。これまで利用してきた4Gが3.6GHz帯を使っていたことから、Sub6は4Gの延長線上の周波数帯と捉えることができます。国内では4.5GHz帯と3.7GHz帯の2つが利用可能であり、ドコモとKDDIでは200MHz幅、ソフトバンクと楽天には100MHz幅が割り当てられています。
ミリ波
ミリ波は30GHzから300GHzの周波数帯のことです。この区分けは厳密なものではなく、日本では28GHz帯もミリ波に含まれます。帯域幅が広いため、国内ではドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の4キャリアに対して、それぞれ400MHz幅ずつ割り当てられています。
Sub6(サブシックス)の特徴
Sub6とミリ波の違いは、通信に使われる周波数帯の違いです。周波数が低いのはSub6の方です。Sub6の実装は技術的難易度が低く、現在国内で普及している5GのほとんどがSub6となっています。
一般的に無線通信では、周波数が高いほど直進性が強くなり、障害物に回り込む性質が弱くなります。また大気中の水分などの影響を受けて減衰しやすいため、広いエリアをカバーすることが難しくなります。
5G通信の場合、Sub6とミリ波ではSub6の方が低周波数であるため、広範囲での通信が可能です。そのため現状ではSub6による5G通信で困ることはありません。
ミリ波の特徴
一方、ミリ波は5Gのなかでも高い周波数帯を利用しています。そのためSub6とは逆に、通信可能エリアは狭くなりますが、Sub6と比べて高速通信と広い帯域幅の確保が可能です。帯域幅が広いほど多くの通信容量が確保できるため、ミリ波は狭いエリアに多くの利用者がいる環境に向いています。
Sub6とミリ波のメリットデメリット
Sub6とミリ波の特徴から、それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
Sub6 | ・通信可能範囲が広い ・障害物の影響を受けにくい ・4Gの技術を活かせる ・2020年現在で普及している |
・通信速度が遅い ・同時接続量が少ない |
ミリ波 | ・通信速度が速い ・同時接続量が多い |
・通信可能範囲が狭い ・障害物の影響を受けやすい ・2020年現在であまり普及していない |
5G対応の現状
2020年3月にスタートした5Gですが、国内における対応状況はどうなっているのでしょうか。
国内メーカーはSub6が主流
国内のスマートフォンでは、シャープが国内初の5G対応スマートフォン「AQUOS R5G」を発表しました。Galaxyシリーズでは「Galaxy S20 5G」が最初の5G対応モデルです。他にもSONYから発表された「Xperia 1 Ⅱ」も5G対応です。
国内メーカーでは他にも5G対応のスマートフォンが登場していますが、2020年11月現在ではSub6が主流の状態です。
ミリ波のスマホも登場
少ないながらもミリ波に対応したスマートフォンもいくつか登場しています。2020年11月現在、ドコモのスマートフォンでミリ波に対応している機種は以下の3つです。
- arrows 5G F-51A
- Galaxy S20+ 5G SC-52A
- Galaxy Note20 Ultra 5G SC-53A
auのスマートフォンでミリ波に対応している機種は以下の3つです。
- Galaxy S20+ 5G SCG02
- Galaxy S20 Ultra SCG03
- Galaxy Note20 Ultra 5G SCG06
2020年10月に発売されたiPhone12ではアメリカ版のみミリ波に対応しており、日本版のiPhone12はミリ波には対応していません。
5G対応エリアについて
5Gでは、Sub6とミリ波の周波数帯が採用されていますが、5Gを全国エリアに対応させるためには、Sub6とミリ波だけでは対応しきれないのが現状です。そのため周波数帯の小さい既存の4Gの周波数を5Gに転用させる必要があります。
1つの周波数帯を使って4Gと5Gを同時に展開できるダイナミック・スペクトラム・シェアリングという技術があります。これは4Gで使われている周波数帯に5Gを混入させる技術であり、これを使うことで5Gによる通信を4Gと同等のエリアで実現できます。
しかし、そもそも高い周波数帯を使う通信は、障害物に弱いという特性は克服できません。日本全国いたるところで5Gの恩恵を受けるためには、現在よりも多くの基地局を設置するしかありません。そのため将来ミリ波が普及するとしても、それはスタジアムや障害物のない広場などに限られると思われます。
5Gで注意すべきセキュリティ
5Gによる通信では、どのようなセキュリティ対策が必要なのでしょうか。
攻撃の手法や規模が大規模化する可能性
5Gの最大の特徴は従来の通信と比べて、通信速度が圧倒的に速くなることです。さらにネットワークに接続できる端末数も増大するため、トラフィック量が爆発的に増えます。高速で大容量の通信が可能となるため、サイバー攻撃の攻撃手法や攻撃規模の増加や大規模化が見込まれます。
このような状態になると、人の手によるセキュリティ対策では対策しきれなくなります。そのためAIを活用したセキュリティ対策の導入や、セキュリティ対策を自動化するインテリジェントオートメーション(IA)などを用いて、迅速にセキュリティ対策を実行できる環境整備が必要です。
IoT機器のセキュリティ対策が必須
5Gの普及によりインターネットに接続されるIoT機器の数が飛躍的に増加することが予想されます。IoT機器に対するサイバー攻撃は、すでに現実のものとなっています。例えばWebカメラに侵入して、記録されている映像をインターネット上で不正に公開しているWebサイトなどは有名です。
また家庭内や職場に設置されている、ルーターや複合機、ビデオレコーダーなどが乗っ取られて、サイバー攻撃の踏み台として悪用されたり、他のIoT機器へのマルウェアを感染させたりする手段として利用されることもあります。
市場には出所が不明なIoT機器も多く、そのようなIoT機器は適切なサポートがなされていないものがあります。IoT機器を導入する際には、脆弱性やバグが明らかになったときに、ファームウェアやパッチなどをリリースして、迅速にリスクを解消しようとするメーカーの機器を利用することをおすすめします。
まとめ
2020年3月から5Gに対応したスマートフォンが続々と登場し、これからもさらに多くの5G対応のデバイスが増えることが予想されます。今回紹介したSub6とミリ波を使った通信は、メリットとデメリットで紹介したように、一長一短です。
今後しばらくはSub6の普及が進むと思われますが、ミリ波に対応したデバイスも増えていくでしょう。特にこれから5G対応のスマートフォンを購入しようと思っているのでしたら、Sub6やミリ波への対応状況をチェックすることをおすすめします。