CARTA(Continuous Adaptive Risk and Trust Assessment)は、「継続的かつ適応的なリスクと信頼の評価」を意味する概念で、ガートナー社によって提唱されたサイバーセキュリティのフレームワークです。CARTAのアプローチは、従来の静的で境界を固定したセキュリティモデルから脱却し、動的に変化するリスクに対してリアルタイムで継続的に評価し、適応するセキュリティ対策を行うことを目指しています。
CARTAは、現代のデジタル環境で求められるセキュリティのあり方を変革し、攻撃や脆弱性、ユーザーの行動変化などに迅速に対応することで、より柔軟かつ効果的なセキュリティ体制を構築します。この概念は、ゼロトラストセキュリティや、クラウドネイティブな環境におけるセキュリティ対策と密接に関わっており、リスクをリアルタイムで評価・管理することが特徴です。
CARTAの主な要素
CARTAは、以下のような要素で構成されています。
1. 継続的なモニタリング
セキュリティの状況を常に監視し、リアルタイムでリスクの変化を検出することが基本となります。ユーザーの行動やシステムの状態を継続的にモニタリングすることで、リスクを動的に評価します。
2. リスクベースの評価
単にアクセスを許可または拒否するだけではなく、各アクションやリスクの変化に応じて、適切なアクセス制御やセキュリティ対応を行います。例えば、ユーザーが異常な行動を示した場合には、追加の認証が求められることがあります。
3. 適応的な対応
リスクや環境の変化に対して柔軟に対応するため、CARTAではセキュリティポリシーや対策を動的に適用・変更します。これにより、セキュリティの脅威に迅速に対応し、リスクを最小限に抑えることができます。
4. ゼロトラストとの連携
CARTAのフレームワークは、ゼロトラストセキュリティモデルと親和性が高く、「すべてのアクセスを信頼しない」ことを基本とし、各アクセスや行動ごとに評価を行うアプローチを重視します。ゼロトラストの考え方と組み合わせることで、ネットワーク内外を問わず、常にリスクを評価し、適切なセキュリティ対策を講じます。
5. 継続的な改善と最適化
CARTAでは、セキュリティポリシーやシステムの状態を継続的に分析し、改善を繰り返すことで、セキュリティ体制を強化します。過去の攻撃や脅威のデータを活用し、プロアクティブな防御を行うことが求められます。
CARTAの利点
1. ダイナミックなセキュリティ管理
環境の変化やリスクの増加に対して、動的に対応できるため、従来の固定的なセキュリティ対策よりも柔軟性が高くなります。これにより、攻撃や脆弱性の発見が早期に行われ、迅速な対応が可能となります。
2. リアルタイムでのリスク評価
常時モニタリングによって、リスクをリアルタイムで評価し、状況に応じたセキュリティ対策を講じることができます。これにより、攻撃者が新たな脅威を試みた際にも、即時に対応することができます。
3. 効果的なリソース管理
CARTAは、リスク評価に基づいてセキュリティリソースを最適に配分することが可能です。優先度の高いリスクに集中することで、効率的なセキュリティ管理が実現します。
4. ゼロトラストの強化
ゼロトラストモデルと連携することで、信頼性をさらに高めることができ、ネットワーク内外のすべてのアクセスに対して厳密なチェックを行い、セキュリティを向上させます。
CARTAの適用例
1. ユーザー行動の監視
ユーザーが通常と異なる行動を取った場合に、それに応じてアクセス制御を強化するなど、ユーザーの行動パターンに基づいてリスク評価を行います。
2. セキュリティポリシーの動的変更
リスクが増大した場合には、セキュリティポリシーを即座に変更し、攻撃に対応することができます。たとえば、新たな脆弱性が発見された際に、即座にアクセス制限を行うなどの対応が可能です。
3. 継続的な脆弱性スキャン
システムやアプリケーションを常にスキャンし、脆弱性を発見した場合には即座に対応することで、未然に攻撃を防ぎます。
CARTAの課題
1. リソースの確保
継続的なモニタリングや動的なセキュリティ対応には、リソースが必要です。特に大規模な環境では、適切なリソースを確保し、効率的な管理を行うことが課題となります。
2. 高度な技術が求められる
CARTAの実装には高度な技術や専門的な知識が必要です。組織がCARTAを導入する際には、専門スキルを持つ人材が不可欠です。
3. 迅速な判断と対応が必要
継続的かつリアルタイムでリスクを評価するため、適切な意思決定を行う迅速な対応が求められます。組織全体でのセキュリティ体制を整備することが重要です。
まとめ
CARTA(Continuous Adaptive Risk and Trust Assessment)は、リアルタイムでのリスク評価と動的なセキュリティ対応を目指すフレームワークです。現代の複雑なサイバー脅威に対応するために、継続的な監視と適応的なポリシー変更を行い、リスクを最小限に抑えることを目指します。ゼロトラストモデルとの組み合わせにより、すべてのアクセスに対して高いセキュリティレベルを提供することで、柔軟かつ強力なセキュリティ対策を実現します。