閉域網|サイバーセキュリティ.com

閉域網

閉域網(へいいきもう)とは、インターネットなどの公共ネットワークから切り離され、特定の組織やグループ内だけで利用できるプライベートなネットワークのことを指します。閉域網は、一般のインターネットとは異なり、外部からのアクセスが制限されているため、セキュリティ性が高く、通信内容の保護が必要とされるシステムで利用されることが多いです。主に企業や金融機関、官公庁、医療機関などが、情報の保護や安全な通信を目的として閉域網を採用しています。

閉域網では、組織内のデータ通信やシステム接続が専用回線や仮想プライベートネットワーク(VPN)を通じて行われるため、インターネットを介する場合に比べて情報漏洩や外部からの攻撃リスクを軽減することができます。

閉域網の特徴

1. 高いセキュリティ

閉域網はインターネットから完全に隔離されているため、外部からのアクセスが制限され、情報の安全性が高いのが特徴です。組織内の機密データや個人情報が含まれる通信でも、インターネット経由よりも安全に送受信が可能です。

2. 安定した通信品質

閉域網は専用回線を利用することが多く、インターネットのように多くのユーザーがアクセスして通信が混雑することがありません。そのため、ネットワークの安定性が高く、重要な通信に適しています。

3. アクセス制限が容易

利用者やアクセス範囲を限定することで、不要なアクセスを制御し、必要なユーザーのみが接続できるように管理できます。例えば、医療機関であれば特定の患者データにアクセスできるのは医療従事者のみといった設定が可能です。

4. 柔軟なネットワーク設計

組織内のネットワーク要件に応じて、ネットワークの構成やアクセス制限を柔軟に設計できます。たとえば、複数拠点を専用の閉域網で接続することで、拠点間の安全なデータ通信が可能になります。

閉域網の主な用途

1. 金融機関の通信ネットワーク

銀行や証券会社などの金融機関では、口座情報や取引データなどの機密性が高いデータを取り扱っているため、閉域網を利用して安全な通信を行っています。

2. 官公庁や自治体の情報ネットワーク

官公庁や地方自治体など、公共機関では、機密情報や個人情報を安全に管理するために閉域網が利用されます。これにより、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが軽減されます。

3. 医療機関での患者データ管理

病院や診療所などの医療機関では、患者の診療記録や検査結果などのデータを外部に漏らさずに管理するため、閉域網が利用されます。医療関係者間でのデータ共有にも、安全な閉域網が役立ちます。

4. 企業の専用ネットワーク

複数の拠点を持つ企業では、各拠点を閉域網で接続し、従業員が社内システムやデータベースに安全にアクセスできる環境を整えることが一般的です。また、リモートワークの導入に伴い、VPNを利用した閉域網での安全な接続が進んでいます。

5. IoTデバイスの接続

閉域網は、インターネット接続のリスクを避け、工場やオフィスに設置されるIoTデバイスを安全に管理するためにも利用されます。これにより、遠隔地からでも安全な管理や監視が可能となります。

閉域網のメリットとデメリット

メリット

  • セキュリティが高い:インターネットから隔離されているため、外部からの攻撃や情報漏洩のリスクが低く、データの安全性が確保されます。
  • 安定した通信:専用の回線やVPNを使用するため、通信の混雑がなく安定した通信が確保できます。
  • アクセス制御が容易:特定の利用者のみがアクセスできるため、不要なアクセスを制限できます。

デメリット

  • 導入コストが高い:専用回線やVPNを導入するには高額なコストがかかるため、初期費用や維持費用が増大します。
  • 運用の手間がかかる:閉域網の構築やメンテナンスには専任の人員が必要で、運用管理が煩雑になります。
  • 拡張性が制限される場合がある:閉域網は限られたユーザーが対象となるため、ネットワークの拡張性が制約される場合があります。

閉域網の種類

1. 専用線型閉域網

電話会社などの通信事業者が提供する専用線を使用した閉域網です。銀行のATMネットワークや企業のデータセンター間接続に利用されることが多く、非常に高いセキュリティと安定性を持っていますが、導入コストが高いのが特徴です。

2. VPN型閉域網

公共のインターネットを介しつつも暗号化技術を使用することで、閉域網のように安全性を確保するVPN(Virtual Private Network)技術を利用した閉域網です。コストを抑えながら閉域網のメリットを得られるため、企業や小規模な組織に適しています。

3. MPLS(Multi-Protocol Label Switching)型閉域網

MPLSは、通信事業者が提供するラベルスイッチング技術を使用した閉域網で、通信経路を効率化し、複数の拠点を高速かつ安全に接続できます。銀行や大企業で広く利用されています。

閉域網の活用例

1. 企業間でのデータ共有

企業が協力企業やパートナー企業とデータを共有する場合、インターネット上でのやり取りはリスクが高いため、閉域網を通じて安全にデータをやり取りします。

2. 医療機関と薬局間の処方データ連携

病院と薬局が連携して患者の処方データを安全に共有するために閉域網が使用されます。これにより、患者情報の保護と正確な薬剤提供が実現されます。

3. 公共インフラの遠隔監視

電力会社やガス会社、水道会社などの公共インフラでは、閉域網を通じて各施設の遠隔監視や制御を行うことで、重要なデータの保護と安定した運用が図られています。

まとめ

閉域網は、インターネットと隔離された安全なネットワークで、機密性の高い情報を取り扱う組織にとって重要な通信手段です。専用回線やVPN、MPLSといったさまざまな方式があり、それぞれの用途や組織の規模に応じて適切な閉域網が選ばれます。セキュリティや安定性の面で多くのメリットがある一方、導入や運用コストが高いため、慎重な検討が必要です。


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