電磁的記録不正作出等罪|サイバーセキュリティ.com

電磁的記録不正作出等罪

電磁的記録不正作出等罪(でんじてききろくふせいさくしゅつとうざい)は、コンピュータや電子機器に保存される電磁的記録(データ)を偽造・改ざんする行為を処罰するための刑法の規定です。日本の刑法第161条の2に定められており、業務上の信用を守り、情報社会におけるデータの信頼性を確保するために設けられています。この罪の対象には、契約書や取引記録、会計データなど、業務や業務の管理上重要なデータが含まれます。

この罪は、デジタルデータの不正な改ざんや偽造によって企業や組織に損害を与える行為、または他人を騙すことを目的としたデータの偽造を防ぐために重要な役割を担っています。

電磁的記録不正作出等罪の構成要件

電磁的記録不正作出等罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 他人の業務に関わる電磁的記録であること

対象となるのは、業務上の重要な記録やデータであり、個人的なメモや趣味に関するデータなどは該当しません。業務遂行や管理に使用されるデータ、取引履歴や会計情報などがこの罪の対象です。

2. 不正に作成または改ざんしたこと

データが不正に作成された場合、または既存のデータを改ざんした場合に、この罪が成立します。たとえば、会計データを偽って利益を操作する行為や、架空の取引記録を作成する行為がこれに当たります。

3. 作出や改ざんが故意であること

誤ってデータが書き換えられた場合や、意図せず不正が行われた場合は該当しません。業務や他人に損害を与える目的で故意に行われた行為のみが処罰の対象となります。

電磁的記録不正作出等罪の具体例

1. 架空取引の記録作成

業務上の取引が行われていないにもかかわらず、架空の取引を記録して売上を水増しし、利益を不正に操作する行為です。これは企業の業務記録を偽造する行為であり、電磁的記録不正作出等罪に該当します。

2. 会計データの改ざん

利益や損失を不正に操作するために、経費や売上データを意図的に改ざんする行為です。決算書の信憑性を損なう不正行為として、この罪が適用されることがあります。

3. 偽の在庫データの作成

実際には存在しない在庫データをシステムに登録することで、在庫数を不正に操作する行為です。これにより、関係者を欺いたり、業務上の決定に誤解を与えたりする場合に該当します。

4. 出勤記録の不正操作

出勤管理システムにおいて、実際には勤務していない日を勤務したように記録したり、勤務時間を水増ししたりする行為も、この罪に該当する可能性があります。

電磁的記録不正作出等罪の罰則

電磁的記録不正作出等罪の罰則は、刑法第161条の2に基づき、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。罰則は不正行為による損害の程度や影響の範囲、悪質性によって重くなります。組織や個人がこれにより多大な損害を受けた場合、厳しい処罰が課されることが多いです。

電磁的記録不正作出等罪の防止策

電磁的記録不正作出等罪のリスクを防ぐために、企業や組織では以下の対策が推奨されます。

1. アクセス権限の管理

重要なデータにアクセスできる権限を厳密に管理し、権限のない従業員が業務に関わるデータを操作できないようにします。管理者権限のアクセスは特に慎重に付与し、不要な権限は速やかに取り消します。

2. 監査と監視の強化

定期的にデータの監査や操作ログの監視を行い、不正なデータの作成や改ざんがないか確認します。異常なアクセスやデータ操作が発生した場合に早期に発見し対応できる体制を整備します。

3. バックアップとデータ整合性の確認

不正なデータ作成や改ざんが疑われる場合に備え、定期的にデータのバックアップを取得します。さらに、業務に利用するデータの整合性を随時確認することで、改ざんされたデータが業務に使用されることを防ぎます。

4. 社内教育と倫理意識の向上

従業員に対して、業務データの適正な扱いと法的責任について教育を行い、データの不正作出や改ざん行為が企業や関係者に重大な影響を与えることを理解させます。これにより、不正行為の予防と、企業全体のコンプライアンス意識の向上を図ります。

5. データ操作時の承認プロセス

重要なデータ操作には、複数の承認を得るプロセスを導入することで、不正なデータ操作が単独で行われないようにします。二重チェックや電子署名による記録の確保が効果的です。

まとめ

電磁的記録不正作出等罪は、他人の業務データを不正に作成・改ざんし、組織や関係者に損害を与える行為を罰する刑法の規定であり、刑法第161条の2に基づいて処罰されます。この罪は、デジタルデータの信頼性を守るために重要な役割を果たし、情報化社会における業務データの安全性を保つための基本的な法的枠組みです。

企業や組織は、このリスクを防ぐためにアクセス権限の管理や定期的なデータ監査、データのバックアップなどを行い、データの信頼性と整合性を維持することが求められます。また、社内教育を通じて倫理意識の向上を図り、従業員がデータの不正作出を行わないような環境を整えることも、重要な防止策となります。


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