断続的暗号化|サイバーセキュリティ.com

断続的暗号化

断続的暗号化(Intermittent Encryption)とは、データ全体を暗号化するのではなく、特定の部分のみを暗号化する手法です。このアプローチは、主にランサムウェアが暗号化効率を高めるために利用する技術として登場しました。データの一部だけを暗号化することで、攻撃者は従来の暗号化方法よりも短時間で大量のファイルを暗号化できるようになり、被害規模を増大させることができます。

また、断続的暗号化は、攻撃以外にも効率や速度が求められる暗号化処理に応用されることが考えられます。例えば、企業のデータ保護で断続的暗号化を取り入れることで、システムの負荷を軽減しつつ一定のセキュリティを確保する方法も検討されています。

断続的暗号化の仕組み

断続的暗号化では、通常ファイル全体ではなく、一定の間隔で選ばれたファイルの一部だけが暗号化されます。この仕組みは、ファイル全体の暗号化よりも計算リソースを削減でき、より短時間で暗号化を完了できるため、攻撃者にとって特に有効な手法となっています。

断続的暗号化の例

  • ブロックごとに暗号化:ファイルの最初の1ブロックを暗号化し、次のブロックは暗号化せず、再度次のブロックを暗号化する、という形で断続的に暗号化を行います。
  • ファイル内のランダムな範囲を暗号化:ファイル全体を一定の割合でランダムに暗号化することで、短時間でデータを使用不能にします。
  • 特定の重要な部分のみを暗号化:ファイルのヘッダーや特定のメタデータ部分のみを暗号化し、ファイルを開けなくすることも可能です。

断続的暗号化の目的とメリット

断続的暗号化には、主に以下の目的とメリットがあります。

1. 暗号化速度の向上

断続的暗号化を使うことで、従来の全面暗号化に比べてデータ暗号化にかかる時間が短縮されます。これにより、ランサムウェア攻撃ではより多くのファイルを短時間で暗号化できるため、攻撃者が検出される前に作業を完了する可能性が高まります。

2. 計算リソースの削減

ファイル全体を暗号化しないため、CPUやメモリの負荷が低減されます。これにより、特に計算リソースに限りがある環境やクラウド環境において、システムへの影響を最小限に抑えつつ暗号化を行うことが可能です。

3. データの使用不能化

データの一部を暗号化するだけでファイル全体が使用不能になるケースが多いため、攻撃の効果は従来の全面暗号化と同等に保たれます。例えば、ファイルの重要な部分が暗号化されると、ファイル全体が破損し、復元不可能な状態になります。

断続的暗号化のリスクとデメリット

断続的暗号化には、以下のようなリスクやデメリットも存在します。

1. 暗号化の信頼性低下

断続的暗号化は部分的にしかデータを暗号化しないため、セキュリティが低下するリスクがあります。ファイル全体が暗号化されていない場合、部分的なデータが漏洩したり、悪用される可能性が残ります。

2. 攻撃検出の難易度が上昇

従来の暗号化攻撃に比べ、断続的暗号化は処理が短時間で完了するため、システムが異常な挙動を検知するのが難しくなります。そのため、攻撃の痕跡が検出されにくく、対策が遅れる可能性があります。

3. データ復旧が困難

一部だけを暗号化するため、データの復旧が全面的な暗号化より難しくなる場合があります。特に、ランダムな箇所が暗号化された場合には、完全な復元が難しいケースも考えられます。

断続的暗号化の用途と活用例

断続的暗号化はランサムウェアに悪用されるケースが多いものの、正当な目的での活用も期待されています。

1. 大量データの保護

断続的暗号化は、処理の高速化とリソース節約が求められる場面において、大量のデータを短時間で暗号化するのに有効です。例えば、企業のデータバックアップにおいて、全データの暗号化はリソース負荷が高いため、断続的暗号化で部分的に暗号化を行い、一定のセキュリティを確保する方法が考えられます。

2. ストレージ容量の制限がある環境

クラウド環境やモバイルデバイスなど、ストレージ容量が限られる場合において、データの一部のみを断続的に暗号化することで、システムパフォーマンスの低下を抑えながらセキュリティを維持することが可能です。

3. データ共有と権限管理

一部のデータのみを暗号化することで、特定のユーザーにのみアクセス可能にする機能としても活用できます。たとえば、文書の重要な部分のみを暗号化し、閲覧権限を持つユーザーのみが復号できる設定にすることで、情報管理とセキュリティの両立が図れます。

断続的暗号化の対策と防御法

断続的暗号化が攻撃に利用される場合、次のような防御策が有効です。

  1. 異常なファイルアクセスの監視:ファイルへの連続的なアクセスや暗号化処理が検出された際には警告が出るよう、エンドポイントセキュリティや監視システムを設定することで、攻撃の兆候を早期に察知できます。
  2. 定期的なバックアップ:データのバックアップを自動化し、定期的に実行することで、万が一暗号化された場合でもデータを安全に復元することが可能です。バックアップファイルは、ネットワークから隔離して保管します。
  3. ファイルアクセス権の厳格化:特に重要なデータファイルについては、アクセス権を厳密に管理し、信頼されたユーザーのみがアクセスできるようにすることで、攻撃リスクを最小限に抑えます。
  4. アンチランサムウェア対策の導入:断続的暗号化を含むランサムウェアの兆候を検知し、即時にブロックできるアンチランサムウェアソフトウェアを導入することで、初期段階で攻撃を阻止することが可能です。

まとめ

断続的暗号化は、ファイルの一部のみを暗号化する手法で、特にランサムウェアが短時間で大規模な攻撃を行うために悪用されるケースが多く見られます。ファイル全体を暗号化しないため、時間とリソースが節約され、システムへの負荷も軽減されるという特徴があります。しかし、攻撃目的で利用されると、短時間で大きな被害をもたらすリスクがあるため、異常なファイルアクセスやバックアップの定期実行などの対策が重要です。

この技術は、悪意ある攻撃のみならず、効率的なデータ管理や保護手段としても応用が期待されており、適切に利用することで、安全かつ効率的なデータ保護を実現することができます。


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