セキュリティスコアリング(Security Scoring)とは、企業やシステム、ネットワークのセキュリティ状態を評価し、数値やスコアとして表すことです。このスコアは、組織がどの程度のセキュリティリスクにさらされているかを視覚的に把握するために役立ち、脆弱性の改善や対策の優先順位付けに活用されます。セキュリティスコアリングの目的は、定量的な指標を用いてセキュリティリスクの評価を標準化し、リスク管理の向上やセキュリティ意識の向上に貢献することです。
この記事の目次
セキュリティスコアリングの仕組み
1. リスク評価
セキュリティスコアリングは、ネットワーク構成やシステムの脆弱性、セキュリティ設定、ユーザーの行動、データ保護レベルなどを分析し、リスクの高低を評価します。脆弱性の数や、既存のリスク要因の深刻度をもとにスコアを算出する場合が多いです。
2. スコアリングアルゴリズム
セキュリティスコアリングは、リスクの評価や各セキュリティ要素の重要度を加味した独自のアルゴリズムに基づきスコアが算出されます。一般的に100点満点や、1〜1000の範囲などでスコアが表され、スコアが高いほどセキュリティが強固であることを示します。
3. 自動化と継続的評価
多くのセキュリティスコアリングツールは、組織のセキュリティ状態を継続的にモニタリングし、システムやネットワークの状況変化に応じてスコアを自動で更新します。これにより、常に最新のセキュリティ状態を把握できます。
セキュリティスコアリングの主な評価要素
1. システムの脆弱性
ソフトウェアやOSのバージョン、既知の脆弱性など、外部から攻撃されやすい要因を基に評価します。例えば、未更新のパッチや古いプロトコルが使用されている場合、スコアが低くなります。
2. ネットワークセキュリティ
ネットワーク上のアクセス制御や通信の暗号化状態などが評価されます。ファイアウォール設定やVPNの利用など、ネットワークの保護対策がスコアリングに影響します。
3. アクセス制御
ユーザーやデバイスごとの権限管理、アクセス制御の適切性などもスコアの対象です。適切な認証方法(二要素認証など)の有無や、最低権限の原則の遵守が評価されます。
4. セキュリティポリシーとプロトコルの順守
組織のセキュリティポリシーや業界標準の順守度もスコアに影響します。たとえば、ISO 27001などのセキュリティフレームワークに準拠しているかや、データ保護ポリシーの厳格さも評価要素です。
5. インシデント対応
過去のセキュリティインシデントの発生履歴、対応プロトコル、従業員のトレーニング状況などもスコアに影響します。迅速な対応プロセスや、インシデント対応のテストが定期的に行われているかも評価されます。
セキュリティスコアリングの利点
1. セキュリティ状態の可視化
セキュリティスコアリングにより、現在のセキュリティ状態を数値で把握できるため、どの程度のリスクがあるのかを明確に理解でき、改善点の特定が容易になります。
2. 優先順位の明確化
スコアが低い箇所を優先的に対策することで、効率的なリスク管理が可能です。限られたリソースを重要なリスク対策に集中させることができます。
3. 継続的なセキュリティ強化
自動化されたセキュリティスコアリングは、システムの変更や更新に伴うセキュリティリスクを常にモニタリングし、改善点をタイムリーに把握できます。
4. コンプライアンス対応
セキュリティスコアリングの結果は、セキュリティ基準や規制の順守状況を確認するのにも役立ちます。スコアリングが規制基準と一致しているか確認することで、コンプライアンス対応の可視化が可能です。
5. 利害関係者への説明に便利
セキュリティの状況を定量的に示すことで、経営層や利害関係者に対し、セキュリティの重要性や必要な投資を分かりやすく説明できます。スコアが向上している場合、その進展を報告することで信頼を得る助けとなります。
セキュリティスコアリングツールの例
1. BitSight
BitSightは、企業の外部セキュリティ状態を評価し、第三者リスク管理に活用されるツールです。企業のネットワークとその露出状況、脆弱性を分析し、スコアを提供します。
2. SecurityScorecard
SecurityScorecardは、企業のセキュリティ状態を視覚的に把握し、サイバーリスク管理を支援するツールです。ネットワークセキュリティ、情報漏洩、パッチ管理などの複数の要因を分析してスコアリングします。
3. Microsoft Secure Score
Microsoft 365向けに提供されているスコアリングツールで、設定や活動に基づいてセキュリティ状態を評価し、改善のための具体的なアクションも提案します。
4. UpGuard
UpGuardは、システムやサードパーティのセキュリティ評価を提供するプラットフォームで、脆弱性やデータ漏洩リスクをスコアとして表示し、セキュリティ状態の改善点を指摘します。
セキュリティスコアリングの課題
1. スコアリングの客観性
スコアリングのアルゴリズムが異なると同じ企業でもスコアが異なる場合があり、スコアの客観性や一貫性に課題が生じることがあります。信頼性のあるスコアリング基準が求められます。
2. 情報の偏り
ツールによっては、特定のセキュリティ要素に偏った評価が行われ、全体的なリスクが反映されにくい場合があります。全体的なセキュリティ状態を公平に評価できる仕組みが必要です。
3. 実際のリスク反映の難しさ
セキュリティスコアが高くても、実際のリスクが完全に排除されているとは限りません。スコアリングだけに依存せず、定性的な評価や人的リスク要因の分析も併せて行うことが重要です。
まとめ
セキュリティスコアリングは、企業や組織のセキュリティ状態を数値で評価し、セキュリティリスクを把握・管理するための有効な手段です。スコアリングによって脆弱な箇所が明確になり、対策の優先順位を決めやすくなるため、効率的なセキュリティ改善が可能です。ただし、ツールによってスコアの算出方法や評価基準が異なるため、スコアのみに頼らず、他のリスク評価手段も併用することが重要です。セキュリティスコアリングは、継続的なセキュリティ強化やコンプライアンスの維持に役立つため、サイバーセキュリティのベストプラクティスの一環として広く活用されています。