サイバーリスク・レーティング|サイバーセキュリティ.com

サイバーリスク・レーティング

サイバーリスク・レーティング(Cyber Risk Rating)とは、企業や組織が持つサイバーリスクのレベルを評価し、数値化やランク付けする手法です。外部からの攻撃に対する耐性やセキュリティ対策の充実度、潜在的な脆弱性など、サイバーリスクに影響を与える要因を多面的に分析することで、組織のサイバーセキュリティ状態を可視化します。

サイバーリスク・レーティングは、企業のサイバーセキュリティ対策の有効性や脆弱性を評価し、改善すべき点を明確にするために役立つだけでなく、投資家やパートナーが取引先や協業先を選定する際の判断材料としても利用されます。これにより、組織は自社のリスクを理解し、適切な対策を講じることで、サイバー攻撃による損失や被害のリスクを低減することが可能です。

サイバーリスク・レーティングの評価項目

サイバーリスク・レーティングの評価には、以下のような項目が一般的に含まれます。

1. インフラとネットワークセキュリティ

  • ファイアウォールやIDS/IPSの設定:適切なファイアウォールや侵入検知・防止システムが導入されているか。
  • 公開されているポートの管理:外部からアクセス可能なネットワークポートが適切に管理されているか。
  • ネットワーク構成の安全性:ネットワークが階層化されているか、内部・外部ネットワークが適切に分離されているか。

2. ソフトウェアとシステムの脆弱性

  • パッチとアップデートの適用状況:ソフトウェアやOSに最新のセキュリティパッチが適用されているか。
  • 脆弱性管理:定期的な脆弱性診断やリスク評価が行われ、未対応の脆弱性が放置されていないか。
  • レガシーシステムの有無:サポートが終了している古いシステムが存在するか。

3. データ保護とプライバシー管理

  • データ暗号化の実施:重要なデータが暗号化されているか、またデータの保管・転送時のセキュリティ対策が講じられているか。
  • アクセス制御:ユーザーのアクセス権が厳格に管理され、不要なアクセスが制限されているか。
  • プライバシーポリシーとコンプライアンス:GDPRやCCPAなどのデータ保護法に準拠したプライバシーポリシーが適用されているか。

4. インシデント対応とリカバリー

  • インシデント対応計画の整備:サイバー攻撃やインシデント発生時の対応手順や体制が整備されているか。
  • 従業員トレーニング:インシデント発生時の対応力を高めるためのトレーニングや訓練が行われているか。
  • バックアップとリストア体制:システムやデータの定期的なバックアップと、その復旧手順が確立されているか。

5. サイバーセキュリティ文化とリテラシー

  • 従業員のサイバーリテラシー:従業員が日常的なサイバーリスク対策(フィッシングメールの識別、パスワード管理)を理解しているか。
  • セキュリティ意識の啓発活動:組織全体でサイバーセキュリティの重要性が認識され、継続的な意識向上が図られているか。

サイバーリスク・レーティングの利点

サイバーリスク・レーティングには、以下のような利点があります。

  1. リスクの可視化と改善点の明確化
    評価結果をもとに、現状のセキュリティレベルやリスク要因が明確になり、必要な改善点を具体的に把握することが可能です。
  2. パートナーや取引先の信頼性評価
    投資家や取引先は、サイバーリスク・レーティングを確認することで、サイバー攻撃のリスクを把握した上で、信頼できるビジネスパートナーを選定する材料とできます。
  3. 法令遵守(コンプライアンス)支援
    多くのサイバーリスク・レーティングでは、GDPRやCCPAといったデータ保護法への準拠状況も評価されるため、法令遵守への取り組みを確認する指標として役立ちます。
  4. インシデント対応能力の向上
    サイバーリスク・レーティングの結果を基に、インシデント発生時の対応力や復旧体制を強化することで、インシデント発生時のダメージを軽減できます。

サイバーリスク・レーティングの手法

サイバーリスク・レーティングは、組織の内部・外部データをもとに行われ、以下のような方法で実施されます。

1. 外部の脆弱性スキャン

公開されているIPアドレスやウェブサイトに対して外部スキャンを行い、セキュリティ脆弱性の有無を確認します。これにより、インターネットからアクセス可能なシステムやサービスの脆弱性が明らかになります。

2. リスクインテリジェンスの利用

第三者機関や専門サービスによって提供されるサイバーリスク・レーティングサービスでは、サイバーインシデントの統計情報や業界別のリスク指標など、リスクインテリジェンスデータを活用して評価が行われます。

3. 従業員アンケートとセキュリティ文化の評価

組織内でのサイバーセキュリティに対する意識や従業員の行動についてアンケート調査を実施し、セキュリティ文化の充実度を評価します。従業員のセキュリティ意識が高ければ、サイバーリスクも低く評価される傾向にあります。

4. 継続的な監視と改善

サイバーリスク・レーティングは一度の評価で完結するものではなく、継続的な監視と評価が重要です。リスクは刻々と変化するため、定期的に見直し、最新のサイバー脅威やシステム更新に応じた対策が求められます。

サイバーリスク・レーティングの課題

サイバーリスク・レーティングには次のような課題も存在します。

  • 評価基準の統一性:各レーティングサービスによって評価基準やスコアの算出方法が異なるため、同一のリスクであっても評価結果が異なることがあります。
  • 内部データの反映:レーティングの多くは外部情報に基づくため、組織内部のセキュリティ対策の強化が評価に十分に反映されないことがある点が課題です。
  • 誤評価のリスク:脅威インテリジェンスの内容や評価タイミングのズレによって、組織の実態に即さない評価結果が出ることがあり、適切な対策を講じる上での障害となる場合もあります。

まとめ

サイバーリスク・レーティングは、組織が抱えるサイバーリスクを可視化し、対策を強化するための指標として広く活用されています。サイバー攻撃が高度化・多様化する現代において、レーティングを通じてリスク管理能力を向上させることは、企業や組織のサイバーセキュリティ体制の強化にとって不可欠です。レーティング結果を定期的に確認し、サイバーリスク対策の強化や見直しを行うことで、サイバー攻撃やインシデントへの耐性を向上させ、業務の安定化を図ることが可能です。


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