コードサイニング|サイバーセキュリティ.com

コードサイニング

コードサイニング(Code Signing)とは、ソフトウェアやスクリプトに対してデジタル署名を行い、そのソフトウェアの作成者が正規の開発者であることを証明し、配布中に改ざんがされていないことを確認する技術です。これにより、ソフトウェアの利用者はそのプログラムが信頼できるものであると確認でき、セキュリティリスクを低減させることが可能になります。

一般に、コードサイニングは、開発者がデジタル証明書を取得し、電子署名を付与する形で行われます。特にOSやアプリケーションのインストーラ、ブラウザ拡張機能、モバイルアプリ、デバイスドライバなどに広く活用され、不正ソフトウェアやマルウェアの拡散を防ぐために重要な役割を果たしています。

コードサイニングの仕組み

コードサイニングは、次のようなステップで行われます。

  1. デジタル証明書の取得
    開発者は認証局(CA: Certificate Authority)からデジタル証明書を取得します。この証明書には開発者の身元情報が含まれており、署名によって作成者を証明するために使用されます。
  2. 署名の作成
    ソフトウェアのコードやアプリケーションのハッシュ値(データの指紋のようなもの)を作成し、これにデジタル署名を付与します。署名は開発者の秘密鍵で行われ、ユーザーは公開鍵で確認できます。
  3. 配布と検証
    ソフトウェアやアプリケーションは電子署名が付与された状態で配布され、ユーザーのシステムでデジタル署名が検証されます。署名が有効であれば、配布中に改ざんされていないことを確認できるため、ユーザーは安全にインストールを行えます。

コードサイニングにより、ソフトウェアがインストールされる際、認証局によって正規の開発者であることが保証され、データの改ざんを防ぐことができます。

コードサイニングのメリット

コードサイニングの導入には、以下のようなメリットがあります。

  1. 信頼性の向上
    ソフトウェアの作成者が認証され、改ざんされていないことが証明されるため、ユーザーは安心してインストールができます。
  2. セキュリティ警告の回避
    正当な署名が付いていないソフトウェアには警告が表示されますが、コードサイニングを行っていれば、警告なしでインストールが可能となり、ユーザーの不安を軽減できます。
  3. ブランドの保護
    正規の開発者による署名が確認されるため、悪意のある第三者によって不正に流用された場合でもブランドを守ることができます。
  4. 改ざん防止
    コードサイニングにより、ソフトウェアの配布中に不正な変更が加えられていないことを証明でき、ユーザーが安心して利用できる環境が整います。

コードサイニングのデメリットと課題

一方で、コードサイニングにはいくつかのデメリットや課題も存在します。

  1. 証明書取得コスト
    認証局から証明書を取得する際に費用が発生するため、小規模開発者やフリーソフトウェアの提供者にとってはコスト負担となる場合があります。
  2. 秘密鍵の厳重管理
    サイニングに使う秘密鍵が不正に盗まれると、悪意のあるコードにも署名が付けられ、信頼が損なわれるリスクがあります。そのため、秘密鍵の管理には特に注意が必要です。
  3. 証明書の有効期限
    デジタル証明書には有効期限があるため、継続的に更新しなければなりません。期限切れの証明書では署名が信頼されなくなるため、更新が必要です。
  4. 不正証明書の発行リスク
    まれに、認証局が誤って悪意あるユーザーに証明書を発行してしまう場合があります。この場合、マルウェアなどに対しても正規の署名が付与されてしまうリスクがあります。

コードサイニングの主な適用例

コードサイニングは、次のようなシーンで利用されます。

  • OSのインストーラーやアプリケーション
    WindowsやmacOS、Linuxのインストーラーやアップデートファイルに署名を行い、改ざんがないことを確認します。
  • ブラウザの拡張機能
    Webブラウザの拡張機能には、コードサイニングによって正当なソースからの提供であることが確認されるものが多いです。
  • モバイルアプリ
    iOSやAndroidのアプリは、公式のストアで提供される前にコードサイニングが行われます。署名がないアプリは公開が許可されません。
  • デバイスドライバ
    WindowsなどのOSでは、ハードウェアデバイスのドライバにもコードサイニングが必要です。これにより、不正なドライバのインストールを防ぎます。

まとめ

コードサイニングは、ソフトウェアの正当性を保証し、ユーザーが安心して利用できる環境を提供する重要な技術です。デジタル署名によって配布中の改ざんを防ぎ、ユーザーのセキュリティリスクを低減させることができます。しかし、証明書の取得や秘密鍵の管理、証明書更新のコストなどの課題も存在するため、開発者は信頼できる認証局を選択し、秘密鍵の厳重な管理を行うことが求められます。


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