エアクラッキング|サイバーセキュリティ.com

エアクラッキング

エアクラッキング(Air Cracking)は、Wi-Fiネットワークのセキュリティを破るために、無線LAN(Wi-Fi)の暗号化キーを不正に解読する手法です。具体的には、暗号化されたWi-Fi通信のデータを傍受し、解析することで、WEP(Wired Equivalent Privacy)やWPA/WPA2(Wi-Fi Protected Access)のパスワードを解読し、不正にネットワークにアクセスすることを目的としています。この行為は、許可なく他者のネットワークに侵入するため、不正アクセス禁止法などに違反し、厳しく処罰される行為です。

エアクラッキングは、主に「辞書攻撃」や「ブルートフォース攻撃」などの方法で行われます。侵入に成功すると、通信内容を盗聴できるほか、ネットワーク内の機器に不正アクセスが可能になるため、企業や個人にとって重大なセキュリティリスクとなります。

エアクラッキングで使用される主なツール

エアクラッキングには、専用のツールが使用されることが多く、特に以下のツールがよく知られています。

  1. Aircrack-ng
    Aircrack-ngは、Wi-Fiネットワークのパケットキャプチャ、暗号化キーの解析、認証情報のクラッキングを行うためのオープンソースツールです。WEPやWPA/WPA2のパスワード解読に対応しており、LinuxやWindowsで使用可能です。
  2. Kismet
    Kismetは、無線LANのパケットをモニタリングし、ネットワークトラフィックをキャプチャするツールです。Wi-Fiネットワークの情報を可視化するために使用され、Aircrack-ngと組み合わせることで、暗号化キーの解析に利用されます。
  3. Reaver
    Reaverは、WPS(Wi-Fi Protected Setup)を対象としたブルートフォース攻撃ツールで、WPSの脆弱性を利用してWi-Fiパスワードを解析するのに用いられます。特にWPSが有効化されているルーターに対して効果的です。
  4. Wireshark
    Wiresharkは、ネットワークパケットのキャプチャと解析が可能なツールで、エアクラッキングでも使用されることがあります。Wi-Fiネットワークのパケットを詳細に解析し、暗号化情報の解析に役立てることができます。

エアクラッキングの主な手法

  1. WEP暗号化のクラッキング
    WEPは、古いWi-Fi暗号化方式で、セキュリティの脆弱性が多く見つかっています。WEP暗号化では、IV(Initialization Vector)というデータの繰り返しによって暗号化が簡単に解析されるため、Aircrack-ngなどのツールを使うと短時間でパスワードが解読可能です。
  2. WPA/WPA2-PSKのクラッキング
    WPAおよびWPA2の暗号化方式は、WEPよりも強力ですが、パスワードが短かったり、弱いパスワード(辞書にある単語など)の場合は辞書攻撃によって解読されることがあります。WPA/WPA2のクラッキングは、まずハンドシェイクデータをキャプチャし、辞書攻撃やブルートフォース攻撃を行って解読を試みます。
  3. ブルートフォース攻撃
    ブルートフォース攻撃は、可能なパスワードの組み合わせをすべて試行して解読を試みる方法です。ブルートフォース攻撃は時間がかかりますが、パスワードが短い場合や単純な場合には有効です。
  4. 辞書攻撃
    辞書攻撃は、あらかじめ用意した単語リスト(辞書)を使用してパスワードを解読する手法です。弱いパスワードや簡単なパスワードは、この辞書攻撃で短時間で解読される可能性が高いです。
  5. WPSピン攻撃
    WPS(Wi-Fi Protected Setup)は、簡単に接続を行うための機能ですが、この機能の脆弱性を利用してパスワードを解読するのがWPSピン攻撃です。Reaverなどのツールを使ってブルートフォース攻撃を行うことで、WPS対応ルーターのパスワードが比較的容易に解読される場合があります。

エアクラッキングのリスクと影響

エアクラッキングが成功すると、攻撃者はネットワークに不正アクセスできるため、次のようなリスクや影響が発生します。

  1. データの盗聴と不正利用
    エアクラッキングでWi-Fiネットワークに侵入されると、通信内容が盗聴されるリスクが高まります。特に、企業の機密情報や個人情報が流出すると、深刻な被害をもたらすことになります。
  2. ネットワークの不正利用と帯域占有
    不正アクセスによってネットワークが利用されると、インターネットの帯域が占有され、正規ユーザーが正常に利用できなくなる可能性があります。また、攻撃者がネットワークを利用して違法行為を行うと、所有者が責任を問われることもあります。
  3. マルウェアの拡散
    エアクラッキングで侵入されたネットワークに接続されている端末が、マルウェアやランサムウェアの拡散対象となる可能性があります。攻撃者は、ネットワーク内の端末にマルウェアを感染させ、さらなる不正活動を行うことができます。

エアクラッキングへの対策

  1. WPA3などの強力な暗号化方式を使用する
    WEPやWPA/WPA2よりも強力な暗号化方式であるWPA3を使用することで、エアクラッキングに対する防御を強化します。WPA3はより複雑な暗号化方式を採用しているため、解読が困難です。
  2. 強力なパスワード設定
    辞書攻撃やブルートフォース攻撃に対抗するために、大文字、小文字、数字、特殊文字を組み合わせた強力なパスワードを設定します。短く単純なパスワードは避け、できるだけ複雑で長いパスワードを使用することが推奨されます。
  3. WPSを無効化する
    WPSには脆弱性が存在するため、ルーターの設定でWPS機能を無効化することが推奨されます。WPSを無効化することで、ブルートフォース攻撃のリスクを減らせます。
  4. SSIDの非公開設定
    SSID(ネットワーク名)を非公開にすることで、ネットワークが検出されにくくなります。SSIDが非公開の場合でも、特定のツールを使えば検出される可能性はありますが、基本的にはセキュリティの向上に役立ちます。
  5. 定期的なパスワード変更
    定期的にWi-Fiパスワードを変更し、過去に取得されたハンドシェイクデータや古いパスワードが使われるリスクを軽減します。
  6. ファームウェアの更新
    ルーターのファームウェアに脆弱性が発見される場合もあるため、定期的にファームウェアを更新して最新のセキュリティ対策を適用することが重要です。

まとめ

エアクラッキングは、Wi-Fiネットワークの暗号化キーを不正に解読する行為で、ネットワークのセキュリティに大きな脅威をもたらします。特にWEPや古いWPA/WPA2暗号化方式は脆弱性があるため、企業や家庭でのWi-Fiネットワークを守るために、WPA3などの強力な暗号化方式や、強力なパスワード、WPS無効化などの対策が重要です。

エアクラッキングは、許可なく行うと不正アクセス禁止法などに抵触し、重大な法的リスクを伴うため、正当な目的や許可なく試みることは避けましょう。


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