インターネットはとても便利なツールであり、無くてはならない社会的インフラです。しかし、子供たちが使用する場合においては、SNSから始まるいじめや、気軽な画像投稿による個人情報漏洩などの問題点が浮き彫りとなります。

今回は、一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)と学生団体Re:inc(リンク)が主催する「スマートフォンセキュリティシンポジウム」に参加し、お話を伺ってきました!

[参考]一般社団法人日本スマートフォンセキュリティ協会(JSSEC)
[参考]学生団体Re:inc(リンク)

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第一部は、教育方法学、授業実践開発を専門とし、メディアリテラシー、数学、企業との連携授業、いじめ・学級経営等の研究を行う千葉大学教育学教授藤川大輔氏による基調講演です。

子供たちのスマートフォン利用状況と課題

■千葉大学 教育学部教授・副学部長 藤川大輔氏

子供とスマートフォンの現状

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千葉大学 藤川大輔教授

スマートフォンの進化により、私たちの生活は数年前には予想していなかったような利便性の向上が実現されました。

コミュニケーションや情報収集の簡易化、各種アプリ使用によるサービスの享受など、メリットは数多く存在します。

しかし、“いつでもどこでも誰とでも繋がることの出来る”スマートフォンの便利さは、一方で多くの危険を孕んでいるということを忘れてはいけません。特に、“安全・危険”の判断がまだ不完全である子供たちにおいては、早急な対策が求められているのです。

スマートフォン普及前の対応状況

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2009年、青少年インターネット環境整備法が施工されたことをきっかけに、様々な分野において“安全なインターネット環境”の整備が急ピッチで進められました。

携帯電話会社は18歳未満の利用者へのフィルタリングを義務付けるとともに、第三者機関「EMA」によるモバイルサイトに対しての認定が開始されたのです。

また、小中学校では学習指導要領によって“情報モラル教育”の推進が明記され、教材の普及や、企業・NPO・警察による指導授業も行われています。総務省はインターネット・リテラシー指標(ILAS)の研究を推進し、義務教育終了時に求められる利用能力について社会的な合意形成を目指しています。

これらの取り組みにより、子供たちはインターネット上で起こり得るトラブルやその解決策について学び、実際にインターネットを介した児童買春や淫行等の福祉犯被害は減少傾向にあるのです。

子供のスマートフォン利用率の急増

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高校生のスマートフォン利用率は、平成23年度の6.8%から平成25年度には81.1%に伸び、現在では96.7%となっています。小学生においても、約50%の児童がスマートフォンを所持しているのです。

この様な、急激なスマートフォン利用率増加の要因として、子供向け製品や各種ブランドが展開する格安スマートフォンの存在が挙げられます。

また、IoT化が進む昨今では音楽プレーヤーや携帯ゲーム機でもインターネット通信が可能なものが出てきており、これらの普及も利用率増加を後押ししているのです。
(内閣府「平成27年度青少年のインターネット利用環境実態調査」より)

子供のスマートフォン利用増加による様々な問題

スマートフォン利用増加は様々な問題を引き起こしています。

長時間利用

青少年のインターネット平均利用時間は約142分と3年前の約2倍に増加しています。

睡眠時間は5年前からほぼ横ばいの中、勉強時間、スマートフォン利用時間が増加することで、“多忙感”を感じる子供が急増しているのです。“もっとゆっくり過ごしたい”と感じる割合は、小学生で74.2%、中学生85.1%、高校生84.7%を記録しています。

いじめ

2011年滋賀県大津市で発生した、いじめによる自殺事件を受け、2013年「いじめ防止対策推進法」が施工されました。

これにより、教育現場では「道徳教育の充実」「早期発見の為の措置」「相談体制の整備」とともに「インターネットへの対策」が推進され、いじめが疑われる事象が発生した場合、専門組織を設置し調査が行われるようになったのです。

犯罪被害

出会い系サイトおよびコミュニティサイトに起因する福士犯被害児童数は増加しています。

出会い系サイトに関しては、運営側を取り締まる法案も整備されている為、未成年利用は減少していますが、近年増加傾向にある“チャット型”のコミュニティサイトでは取り締まり等もなく、気軽にプロフィール公開やID交換が行える為、被害児童数が増加しているのです。

警察による「サイバー補導」の取り組みも進んでいますが、実際に見つかっている事件の約20倍の未遂事件が存在すると言われています。

フィルタリング

事件被害を防ぐ対策として、携帯事業者が提供するフィルタリング機能は有効的です。

しかし、実際のところ、事件被害児童の約95%はフィルタリングなしでスマートフォンを使用していたことが分かっています。これは、スマートフォンに対してのフィルタリング機能が複雑であることと、無線LANやアプリ使用により通信が許可されてしまう場合がある為で、現段階では対策として不十分と言えます。

また、2011年総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において “設計段階から青少年保護のしくみを組み込む”という「青少年・バイ・デザイン」の考えが提唱されましたが、発足から5年、未だ成果に結びついてはいません。

インターネットトラブルに巻き込まれない為の対策とは

教育プログラム、教材の設定

各企業で、スマートフォンに関連した教育プログラム、教材が提供されています。

  • NHK for School スマホ・リアル・ストーリー等の動画を無料で公開
  • ソフトバンク DVD「みんなで考えようスマホのコミュニケーション」
  • グリー 啓発アプリ「魂の交渉屋とボクの物語」

この様な製品を積極的に教育現場に導入し、継続的に指導を行っていく事が大切なのです。

環境整備の組織づくり

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安全なインターネット利用環境実現への対策は、教育機関のみに委ねず、家庭や地域、携帯電話関連事業者、官公庁等が協力し、情報交換や啓発活動を行う事が重要です。

2009年に発足した「安心ネットづくり促進協議会」では様々な組織との協働で、最新情報を共有するインターネット番組「グッドネットチャンネル」を放送するなど、関連組織を巻き込んだ取り組みが行われています。

また、子供たちに最も近い存在である家庭でのルール設定も必要不可欠です。スマートフォン利用によって起こり得る問題を想定した上で、事前に最低限の守るべきルールを設定し、家族全員で共有する事が大切なのです。

まとめ

スマートフォンを始めとする通信端末の急速な進化に対し、大人が教えるべき事は一体何なのか、強く考えさせられる内容でした。

いつでもどこでも繋がる便利さは「退屈のない生活」「繋がっていない事への不安」「自分自身で考える事の欠如」を子供たちの心にもたらしたのです。この現実を受け入れた上で、「セキュリティ」に対する教育はもちろん、子供たちの「心」の教育が大切ということですね。

第二部は、小中高生に対して啓発活動、広報活動等を通してインターネットを利用する上でのリテラシーやモラル形成を図り、ネットトラブルの減少や予防を目指す、ボランティア学生団体「Re:inc(リンク)」の活動についてのお話です。

大学生が始めるセキュリティ・イニシアチブ

■学生団体Re:inc代表 窪田大悟氏

サイバー防犯ボランティア学生団体Re:inc(リンク)とは

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学生団体Re:inc代表 窪田大悟氏

現在、4大学15名の学生・院生で構成されるボランティア学生団体Re:incは「子供たちと“感覚”の近い大学生だからこそ果たせる役割がある」という概念の下、安全なインターネット利用の普及に向け、様々な活動に取り組んでいます。

主な活動内容としては、小中高生を対象としたセキュリティワークショップの開催や、それに伴う勉強会、またPTAの方々との交流会(ディスカッション等)があります。

セキュリティワークショップとは

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現在Re:incが力を入れて取り組むセキュリティワークショップでは、対象の教育機関との事前の打ち合わせやアンケートを基に、テーマや議論のポイントが決定されます。

そして、実際のワークでは一つのシナリオ(事例)を使用し、その状況に対して“どう思うか”のディスカッションが行われます。最終的にグループごとでの意見をまとめ、全体発表を行い終了です。

このセキュリティワークショップは現在までに5校で実施されており、92%の生徒がワークショップの内容に満足という回答をしています。ワークを通してのアンケートや振り返りのミーティングを充実させることで、内容のブラッシュアップを常に行い、小中高生が“スマートフォンの正しい使い方”を考えるきっかけとなることを目指しているのです。

セキュリティワークショップを通しての気付きと今後の課題

ワーク中のディスカッションや、事前・事後に行うアンケートの中で、年齢の近い大学生であっても知らないネットトラブルの存在が明らかとなりました。これは、スマートフォン分野が1~2年の短期間のうちに、急激な進化を遂げていることが要因と考えられます。

また、インターネットを通じての誹謗中傷経験や、面識のない人物との連絡のやり取り等、小中高生のリアルなインターネット利用実態が分かる為、これを基にした教育現場での効果的な指導が期待できるのです。

そして今後の課題としては、Re:incの活動を継続的なものとする為の人員確保、関連グループの拡大が求められています。

まとめ

この活動は、大人と子供の中間に存在する“大学生”だから出来ることだと思います。

危険だからと言って、ただ禁止・否定をするのではなく、子供側の状況を理解した上で発せられる彼らの言葉は、素直に子供たちの心へ届くのではないでしょうか。全国の教育現場でこの様な取り組みが行われる事を期待します!

第三部は、Re:incのセキュリティワークショップを行った東京都立練馬高等学校の正木成昭教諭による、教育現場の実態についてのお話です。

協働学習の重要性
~Re:incセキュリティワークショップを通しての学び~

■東京都立練馬高等学校教諭 正木成昭氏

高校生とスマートフォン

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リクルート進学総研が行った「高校生価値意識調査2014」で、高校生のスマートフォン所有率は82.2%と、2011年の同調査に比べ5.5倍もの大幅増加を記録しました。

そして、所有者の内92.6%の生徒はSNSやゲーム等のアプリを使用しており、それらを用いて勉強を行う「スマ勉」も約60%の生徒が行っているとの調査結果が出たのです。これらのデータは現在さらに伸び続けていることが分かっています。

スマートフォンは現代の高校生にとって“なくてはならない生活ツール”なのです。しかし、その利用において、以前では存在しなかった新たなトラブルが発生してきていることをご存知でしょうか。

スマートフォン利用によるトラブルとは

コミュニケーショントラブル

コミュニケーションアプリの普及により、情報の伝達、意思疎通は簡易化されましたが、その反面、対面でのコミュニケーションは減少しています。細かなやり取りがアプリ内で完結してしまうため、休み時間を利用した他クラスの生徒との交流等はあまり見られなくなってきているそうです。

また、アプリ上で行われる意思疎通の中でのすれ違い、意見の食い違い、陰口、いじめ等も深刻な問題です。

スマホ(ネット)依存

スマートフォンの利用時間は年々増加傾向にあります。

1日2時間以上利用するという生徒は、平日67%、休日では77%の高い割合を占めており、その分睡眠や勉強の時間が減少しているのです。“繋がっていない事への不安”を感じる生徒は想像以上に多く、スマートフォン(インターネット)の“依存性の高さ”が問題視されています。

詐欺被害

フィルタリングが徹底されていない端末を利用した場合、ワンクリック詐欺や架空請求などのトラブルに巻き込まれるケースがあります。

また、ウィルス感染などにより個人情報の漏洩が起こってしまった事例もあり、社会性が確立されていない未成年の使用においては、様々な危険性があることが分かっています。

教育機関が考える具体的対策とは

東京都立練馬高等学校 正木成昭教諭

東京都立練馬高等学校 正木成昭教諭

東京都教育委員会は、この様な現状に対し「SNS東京ルール」の策定を発表しました。

東京都としての「SNS利用ルール」を決めた上で、各学校・家庭への周知を行い、補助教材や特別授業等を導入する事で、安全なスマートフォン利用を推進するのです。

この取り組みの中で、今後注目されるキーワードが「アクティブ・ラーニング」です。従来の教員による一方的な講義・指導ではなく、生徒が確実に知識を学び取る事に重きを置いた寛容性の高い授業スタイルが支持されてきています。

アクティブ・ラーニングの事例

実際のワークショップ風景

実際のワークショップ風景

東京都立練馬高等学校では、アクティブ・ラーニングの取り組みとしてRe:incが主催するセキュリティワークショップを行いました。

「ネット時代の生き方」というテーマの元、座学・ディスカッションを通し、教師・大学生・生徒の間で積極的な意見交換・共有が行われたのです。

このセキュリティワークショップは、実際に受講した生徒40人中35人が肯定的な感想を持つなど、アクティブ・ラーニングの有効性を示しています。課題を解決する為の方法を一方的に“教える”のではなく、生徒たち自らが“考え出す”ことで、その知識は確実に吸収され行動に移されるのです。

まとめ

教育現場で日々子供たちを見守る先生のお話では、考えさせられる点が多々ありました。

スマートフォンの利便性が生み出した“対面でのコミュニケーションの減少”は、子供たちの心を大きく変えてしまったように思えます。セキュリティワークショップを始めとする、アクティブ・ラーニングの取り組みは、発達途中の子供たちの心を“正しい方向”へと導くきっかけとなるのではないでしょうか。

第四部は参加者からの質問や、各データを基に講演者の方々のディスカッションが行われました。

スマートフォンと子供たち

子供たちの“倫理観”

スマホ利用に関わらず、トラブルが起こるのは子供たちの倫理観欠如が問題では?

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<藤川教授>
“見えない部分で毒を吐く”のは、子供に限ったことではありません。プライベートアカウントでは全く異なる内容を更新している大人も実際に多数存在します。

だからと言って、そのことが直接“倫理観の欠如”に結びつくわけではないですし、むしろ正常な状態であると言えるのではないでしょうか。

また、殺人事件などの凶悪犯罪は40~50年前に比べると大幅に減少しており、世代を問わず人々の倫理観は上がっていると言えます。だからこそ、稀に起こる犯罪が大きく取り上げられ、SNS等で拡散されることにより、大きなイメージとして残ってしまうのです。

<正木教諭>
生徒の中には、一時の感情のままに投稿を行ってしまうケースもあります。明らかな悪意がある場合は別として、経験の中で自分自身の行動が周囲へどの様な影響を及ぼすのかを学んでいくのではないでしょうか。倫理観形成のために、教育現場での“モラル指導”は重要だと考えています。

Re:inc活動の裏側

学業とRe:inc活動との両立は実際難しい点も多々あるそうです。特に、セキュリティワークショップ開催前には対象の教育機関と約10回程度の打合せが行われ、時間的拘束が大きく学生側の負担となっています。

今後の継続の為には人数増加等のハード面での強化とともに、学生にとって“自分たちの学びとなる活動”の推進など、ソフト面での進化も求められているのです。

スマホ利用に最適なルールとは

メディアに出ている“スマホ利用時に設定するべきルール”などを、そのまま家庭に持ち込んでも意味がありません。なぜなら、親子間でのコミュニケーション状況や、子供たちの性格差などに大きく左右されてしまうからです。

人は、行動を自ら選択するのであり、強制されることを嫌います。ルールは対象の子供によって変化するものだと理解した上で、最適だと思うものを親子で話し合い、選択し、実践していくことが大切なのです。

その点において、Re:incの行うセキュリティセミナーは、ルールとなる選択肢を増やすために有効な活動と言えます。

まとめ

危険から守る方法を教える事は簡単ですが、教えたからといって絶対に危険から守れるという事ではありません。子供たちが考え、選択していく方法が“正しいもの”であるように、継続的な大人のサポートが重要ということですね。
(子供を持つ母親として、非常に考えさせられる1日でした…)

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