コンピュータウイルス(Computer Virus)は、感染したコンピュータ内で自己複製し、他のプログラムやファイルに感染を広げるマルウェア(悪意のあるソフトウェア)の一種です。感染すると、ファイルの破壊や情報の改ざん、機密情報の流出、システム障害といった被害が発生する可能性があり、ユーザーにとって大きな脅威となります。ウイルスは、人の手によるファイル操作やメール、外部記憶メディアを介して広がるのが特徴で、コンピュータやネットワーク全体に甚大な影響を与えることがあります。
ウイルスは、1980年代に広まり始めたマルウェアの代表的な形態の一つで、攻撃者が意図的に作成した悪意のあるコードが、他のプログラムやファイルに潜む形で拡散します。現在では、多様な形態のウイルスが登場しており、感染方法や感染後の影響も様々です。
ウイルスの種類
- ファイル感染型ウイルス
プログラムファイル(.exeや.batなど)に感染するウイルスです。プログラムが実行されると、ウイルスも一緒に動作し、他のファイルにも感染を広げていきます。一般的なファイル感染型ウイルスは、自己複製によって他のシステムにも感染します。 - ブートセクタウイルス
コンピュータの起動に関連する「ブートセクタ」という領域に感染するウイルスです。感染したメディア(フロッピーディスクやUSBメモリなど)を通してシステムに侵入し、PCの起動時に感染が広がります。現在は少ないものの、根強い脅威です。 - マクロウイルス
Microsoft WordやExcelなどのオフィスアプリケーションで使用されるマクロ機能を悪用するウイルスです。主に電子メールの添付ファイルとして拡散し、マクロを有効にしたユーザーのファイルに感染して、データの破壊や他のファイルへの感染を行います。 - マルチパートウイルス
ファイル感染型とブートセクタ感染型の両方の特性を持つウイルスで、複数の感染経路を持ち、より広範囲で感染を拡大します。これにより、感染の発見や駆除が難しくなることがあります。 - ポリモーフィックウイルス
自己複製のたびにコードが変化するウイルスで、ウイルス検出ソフトウェアに発見されにくくするために、異なるコードを生成します。これにより、特定のシグネチャに基づいた検出を回避し、感染を広げます。 - レトロウイルス
セキュリティソフトウェアを標的とし、ウイルス対策機能を無効化することで自らの検出を回避します。このウイルスが感染すると、システムの防御が弱まり、他のウイルスやマルウェアの侵入も容易になるリスクがあります。 - ステルスウイルス
自身の存在を隠す機能を持ち、ファイルサイズや感染日を偽装することで、セキュリティソフトやユーザーの検出を回避します。ウイルスが動作していても、見かけ上はシステムが正常であるかのように装うため、発見が困難です。
ウイルスの感染経路
- メールの添付ファイル
ウイルス感染の主要な経路の一つは、メールの添付ファイルを通じた手法です。攻撃者は、悪意のあるファイルを添付したメールを送り、受信者がそのファイルを開くことでウイルスがシステム内に侵入するよう仕掛けます。この手法は「スピアフィッシング」と呼ばれ、特定の個人や企業をターゲットにしたケースも多く見られます。添付ファイルを開くと、ウイルスがシステムに感染し、さまざまな被害が引き起こされます。
- インターネットからのダウンロード
不正なウェブサイトや偽装されたダウンロードリンクからファイルをダウンロードすることで、ウイルスに感染するケースです。ソフトウェアのインストーラーやファイル共有サービスを介したダウンロードが主な手段です。特に、非公式なサイトや無料ソフトを装ったダウンロードは危険が高まります。 - USBメモリや外部記憶装置
USBメモリや外付けハードディスクなどの外部デバイスを介してウイルスが広がる場合があります。特にブートセクタウイルスは、外部記憶装置に潜んでPCに感染し、接続されたデバイス間で感染を拡大します。 - ネットワークの共有フォルダ
ネットワークで共有されているフォルダを介して、他のコンピュータに感染が広がることがあります。組織内ネットワークの共有フォルダや共有ファイルがターゲットになりやすく、特に大規模な企業ネットワークでは被害が拡大する可能性が高まります。 - Webサイトのマルウェア広告(マルバタイジング)
攻撃者は、悪意のある広告(マルバタイジング)を合法的なウェブサイトに仕込み、ユーザーが広告をクリックすることでウイルスに感染させます。この手法は、信頼性のあるサイトでも発生する可能性があり、セキュリティ意識が高いユーザーでも被害に遭うことがあります。 - ファイル共有サービス
ピア・ツー・ピア(P2P)ネットワークやファイル共有サービスを介してウイルスが拡散することもあります。たとえば、無料の動画、音楽、ゲームファイルなどにウイルスが埋め込まれていることがあり、ダウンロードとともに感染が広がるケースが多発しています。
ウイルス対策
- アンチウイルスソフトの導入と定期的な更新
アンチウイルスソフトウェアは、ウイルス検出と駆除に必要不可欠なツールです。最新のウイルス定義ファイルに更新することで、新たなウイルスやマルウェアに対応できるようにしておきます。 - ファイアウォールの設定
外部からの不正アクセスをブロックするファイアウォールの利用は、ネットワークを通じたウイルスの侵入を防ぐために重要です。特に、不要なポートやサービスのアクセスを遮断し、ネットワークの安全性を確保します。 - OSおよびアプリケーションの定期的な更新
OSやアプリケーションに潜む脆弱性が悪用されるとウイルスに感染するリスクが高まります。メーカーが提供するアップデートやパッチを定期的に適用して、脆弱性を解消することが推奨されます。 - 安全なインターネット習慣の徹底
不審なメールやリンク、添付ファイルのクリックは避け、信頼できないウェブサイトからのダウンロードは控えましょう。また、USBメモリや外部デバイスの利用にも注意し、スキャンしてから利用することが望ましいです。 - データのバックアップ
定期的にデータをバックアップしておくことで、万が一ウイルスに感染してデータが破壊された場合でも、データを復旧することが可能です。バックアップはオフラインで保管することで、ランサムウェアなどによる被害も軽減できます。 - 多要素認証(MFA)の導入
重要なアカウントに多要素認証を導入しておくと、ウイルスやマルウェアによる情報漏洩が起きた際にも、なりすましによる不正アクセスを防止できます。
まとめ
コンピュータウイルスは、システム内で自己複製して拡散し、ファイルの破壊や情報窃取、システムパフォーマンス低下など、さまざまな被害をもたらすマルウェアの一種です。感染経路には、メールの添付ファイルや不正なウェブサイト、外部記憶メディアなどがあり、ユーザーが知らない間にシステムが感染していることも少なくありません。
ウイルス対策として、アンチウイルスソフトの導入やOSの定期的な更新、安全なインターネット利用習慣の徹底が重要です。また、データのバックアップや多要素認証の導入など、セキュリティ対策を多層化することで、ウイルス感染時の被害を最小限に抑えることができます。定期的なセキュリティ対策の見直しを行い、最新の脅威に対応することが、安全なコンピュータ環境を保つための鍵となります。