医療機関に必要なセキュリティ対策の要点!患者データを守るために必要な施策とは|サイバーセキュリティ.com

医療機関に必要なセキュリティ対策の要点!患者データを守るために必要な施策とは



患者の大切な個人情報を守るためには、医療機関におけるセキュリティ対策が不可欠です。しかし、電子カルテの導入など医療のIT化が進む中、サイバー攻撃のリスクも高まっています。この記事では、医療機関に求められるセキュリティ対策の要点と、患者データを守るための具体的な施策について解説します。セキュリティ対策を適切に実施することで、患者の信頼を守り、安全で質の高い医療を提供することができるでしょう。

医療機関におけるセキュリティ対策の必要性

医療機関では、患者の個人情報や診療情報など、機密性の高いデータを扱っています。これらの情報を適切に管理し、保護することは医療機関の重要な責務です。

医療情報の特徴と重要性

医療情報は、患者の生命や健康に直結する極めて重要な情報です。また、個人の身体的・精神的状態や家族関係など、プライバシーに関わる情報も多く含まれています。

そのため、医療情報は厳重に管理され、適切な権限を持つ者のみがアクセスできるようにする必要があります。万が一、医療情報が漏えいした場合、患者の人権侵害や社会的信用の失墜につながる恐れがあります。

セキュリティ対策の目的と意義

医療機関におけるセキュリティ対策の目的は、患者情報を不正アクセスや漏えい、改ざんなどの脅威から守ることです。これにより、患者のプライバシーを保護し、診療の質と安全性を確保することができます。

また、セキュリティ対策は法令遵守の観点からも重要です。個人情報保護法や医療法など、医療情報の取り扱いに関する法規制が存在します。これらの法令に違反した場合、罰則や行政指導の対象となる可能性があります。

セキュリティ対策を怠った場合のリスク

医療機関がセキュリティ対策を怠った場合、様々なリスクが生じます。情報漏えいによる患者の不利益や、システムの不正利用による誤診断・誤投薬などの医療事故が発生する恐れがあります。

また、サイバー攻撃により医療情報システムが停止すれば、診療業務に大きな支障をきたします。金銭的な損失だけでなく、医療機関の信頼性や社会的評価の低下といった二次的な被害も予想されます。

以上のように、医療機関にとってセキュリティ対策は必要不可欠です。患者の安全と信頼を守るためにも、組織を挙げてセキュリティ強化に取り組むことが求められています。

医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの概要

医療機関における情報セキュリティ対策の重要性が高まる中、厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を策定しています。このガイドラインは、医療機関が患者の個人情報を適切に保護し、安全に管理するための指針を示したものです。

ガイドラインの目的と位置づけ

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、医療機関における情報セキュリティ対策の基本的な考え方や具体的な措置を示すことを目的としています。このガイドラインは、法的拘束力を持つものではありませんが、医療機関が情報セキュリティ対策を実施する上での重要な指針として位置づけられています。

また、このガイドラインは、個人情報保護法や医療法などの関連法規と整合性を取りながら、医療情報システムの特性を踏まえた上で策定されています。医療機関は、このガイドラインを参考にしつつ、自らの状況に応じた適切な情報セキュリティ対策を講じる必要があります。

ガイドラインの構成と主な内容

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、本編と別冊から構成されています。本編では、情報セキュリティ対策の基本的な考え方や実施すべき事項が示されています。一方、別冊では、本編の内容を踏まえた上で、より具体的な対応方法や事例が紹介されています。

ガイドラインの主な内容は以下の通りです。

  • 医療情報を扱う際の責任のあり方
  • 医療情報システムの基本的な安全管理措置
  • 外部保存を行う際の安全管理措置
  • スキャナ等で診療録を電子化する場合の要件

これらの内容は、技術の進歩や制度の変更に応じて定期的に見直され、必要に応じて改定が行われています。医療機関は、最新のガイドラインを確認し、自らの情報セキュリティ対策に反映させることが求められます。

ガイドラインの適用範囲と対象

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の適用範囲は、医療機関が取り扱うすべての電子的な医療情報を対象としています。これには、電子カルテシステムや医療画像管理システムなどの医療情報システムだけでなく、パソコンやモバイル端末など、医療情報を取り扱うすべての機器が含まれます。

また、このガイドラインは、医療機関だけでなく、医療情報システムの開発や運用に携わるベンダーや委託先なども対象としています。医療機関は、これらの関係者と連携し、適切な情報セキュリティ対策を講じる必要があります。

医療機関に求められるセキュリティ対策の要点

医療機関には、患者の大切な個人情報や機密性の高い医療データを守るため、強固なセキュリティ対策が求められます。ここでは、医療機関に必要とされるセキュリティ対策の要点について解説します。

組織的安全管理措置

組織的安全管理措置とは、医療機関のセキュリティ対策を組織全体で取り組むための方策を指します。具体的には、セキュリティポリシーの策定や責任者の任命、従業員への教育・訓練などが含まれます。

医療機関は、セキュリティポリシーを文書化し、全ての職員に周知徹底することが重要です。また、セキュリティ対策の実施状況を定期的に監査し、改善を図っていく必要があります。

物理的安全管理措置

物理的安全管理措置は、医療情報システムを設置する施設や機器のセキュリティを確保するための対策です。具体的には、サーバールームへの入退室管理、機器の盗難防止、災害対策などが挙げられます。

医療機関は、重要な機器を安全な場所に設置し、適切な環境管理を行うことが求められます。また、機器の持ち出しを制限し、盗難や紛失を防止する必要があります。

技術的安全管理措置

技術的安全管理措置とは、医療情報システムそのものの安全性を高めるための対策を指します。具体的には、アクセス制御、ウイルス対策、暗号化などが含まれます。

医療機関は、ユーザーIDとパスワードによる厳格なアクセス管理を実施し、権限のない者によるデータへのアクセスを防止する必要があります。また、最新のウイルス対策ソフトを導入し、定期的なパターンファイルの更新を行うことが重要です。

人的安全管理措置

人的安全管理措置は、医療情報システムを扱う職員のセキュリティ意識を高め、適切な運用を確保するための対策です。具体的には、従業員への教育・訓練、守秘義務の徹底、退職者からのアクセス権限の速やかな削除などが挙げられます。

医療機関は、全ての職員に対してセキュリティ教育を実施し、機密情報の取り扱いについて周知徹底することが求められます。また、システムへのアクセス権限は必要最小限とし、人事異動や退職に伴って速やかに見直しを行う必要があります。

患者データを守るための具体的な施策

医療機関において、患者データを適切に保護することは非常に重要です。ここでは、患者データを守るために必要不可欠な具体的な施策について説明します。

アクセス制御と認証管理

患者データへのアクセスを制限し、適切な権限を持つ医療従事者のみがアクセスできるようにすることが大切です。アクセス制御と認証管理を適切に行うことで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを大幅に減らすことができます。

具体的には、ユーザーIDとパスワードによる認証に加え、多要素認証の導入を検討しましょう。また、職種や役割に応じたアクセス権限の設定や、定期的なパスワード変更の義務付けも重要です。

ネットワークセキュリティ対策

医療機関内のネットワークを適切に保護することは、患者データの安全性を確保する上で欠かせません。外部からの不正アクセスや攻撃を防ぐために、ファイアウォールの設置やVPNの使用などの対策を講じる必要があります。

また、無線LANを使用する場合は、暗号化の強化や不要なSSIDの削除など、セキュリティ設定を適切に行うことが重要です。ネットワーク機器のファームウェアも常に最新の状態に保ち、脆弱性を放置しないようにしましょう。

マルウェア対策とパッチ管理

コンピュータウイルスやランサムウェアなどのマルウェアから患者データを守るために、アンチウイルスソフトの導入と定期的な更新が不可欠です。さらに、OSやソフトウェアの脆弱性を狙った攻撃を防ぐため、パッチ管理を適切に行い、常に最新の状態に保つことが重要です。

自動更新機能を活用し、セキュリティパッチの適用漏れがないように注意しましょう。また、使用していないソフトウェアは削除するなど、不要なリスクを排除することも大切です。

暗号化とデータの保護

患者データを保存する際は、暗号化を行うことで情報漏洩のリスクを大幅に減らすことができます。ハードディスクやUSBメモリなどの記憶媒体に保存する場合は、ファイル単位または全ドライブ単位での暗号化を検討しましょう。

また、クラウドサービスを利用する場合は、信頼できるプロバイダを選択し、データの暗号化やアクセス制御などのセキュリティ機能を適切に設定することが重要です。紙の文書をスキャンしてデジタル化する際も、暗号化や厳格なアクセス制御を行い、情報漏洩を防ぐ必要があります。

監査ログの取得と分析

患者データへのアクセスや操作を記録する監査ログを取得し、定期的に分析することは、不正アクセスや情報漏洩の早期発見に役立ちます。監査ログには、アクセス日時、ユーザー情報、実行された操作などを記録し、異常な動きがないかチェックします。

監査ログの保存期間は、法的要件や組織のポリシーに従って適切に設定しましょう。また、ログデータを確実に保護し、不正な改ざんや削除を防ぐことも重要です。定期的なログ分析により、セキュリティインシデントの兆候を早期に発見し、迅速な対応につなげることができます。

セキュリティ対策の実施における留意点

医療機関におけるセキュリティ対策の実施には、様々な留意点があります。ここでは、その中でも特に重要な4つの点について見ていきましょう。

セキュリティポリシーの策定と周知

セキュリティ対策を効果的に実施するためには、まず組織としてのセキュリティポリシーを明確に定める必要があります。セキュリティポリシーとは、情報セキュリティに関する基本方針や、具体的な対策基準を文書化したものです。

セキュリティポリシーを策定する際は、経営層のコミットメントを得ることが重要です。トップダウンでセキュリティの重要性を示すことで、組織全体での取り組みにつなげることができます。また、策定したポリシーは、全ての職員に周知・徹底を図ることが必須です。

定期的なリスクアセスメントの実施

セキュリティ対策は、リスクアセスメントに基づいて実施されるべきものです。リスクアセスメントとは、自組織の情報資産に対する脅威と脆弱性を洗い出し、そのリスクを評価するプロセスのことです。

医療機関では、患者の個人情報や診療情報など、機密性の高い情報を数多く扱っているため、それらの情報資産を守るために、定期的にリスクアセスメントを行う必要があります。リスク評価の結果に基づいて、適切な対策を講じることが肝要です。

インシデント対応体制の整備

サイバー攻撃などのセキュリティインシデントは、いつ発生してもおかしくありません。そのため、インシデント発生時に迅速かつ適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。

インシデント対応体制を整備する際は、インシデントの検知から、対応、事後処理までの一連の流れを明確にしておくことが求められます。また、関係者の役割と責任を明確化し、緊急時の連絡網を整備しておくことも必要不可欠です。

教育・訓練の重要性

セキュリティ対策の多くは、システムや技術的な対策だけでなく、それを運用する人の意識や行動に大きく左右されます。したがって、全ての職員に対して、セキュリティ教育・訓練を実施することが極めて重要です。

教育・訓練では、セキュリティポリシーの理解促進はもちろん、日常業務におけるセキュリティ対策の実践方法について、具体的に指導する必要があります。加えて、定期的に訓練を実施し、インシデント対応手順の習熟を図ることも忘れてはなりません。

医療機関におけるセキュリティ対策の今後の課題

医療機関におけるセキュリティ対策は、患者のプライバシーや機密情報を守るために非常に重要です。しかし、技術の進歩とともに新たな脅威が出現し、法規制も強化されつつあるため、医療機関はこれまで以上に注意深く対策に取り組む必要があります。

本稿では、医療機関が直面するセキュリティ対策の課題について、セキュリティ脅威の動向と対応、法規制の強化と対応、医療IoTセキュリティへの対応、セキュリティ人材の育成と確保の4つの観点から解説します。

セキュリティ脅威の動向と対応

近年、サイバー攻撃の手法は高度化・巧妙化しており、医療機関もその標的となっています。ランサムウェアによる医療情報の暗号化や、フィッシング攻撃による医療従事者のアカウント情報の窃取など、様々な脅威が存在します。

これらの脅威に対応するためには、最新のセキュリティ情報を収集し、適切な対策を講じることが重要です。例えば、ソフトウェアの脆弱性を修正するためのパッチを速やかに適用したり、医療従事者に対してセキュリティ教育を実施したりすることが効果的です。

法規制の強化と対応

個人情報保護法や医療分野の個別法の改正により、医療機関に求められるセキュリティ対策のレベルは年々高くなっています。特に、改正個人情報保護法では、医療情報を含む要配慮個人情報の取り扱いに関して、より厳格な規定が設けられました。

医療機関は、これらの法規制に適切に対応するために、自組織の現状を把握し、必要な対策を講じる必要があります。具体的には、個人情報の管理体制の整備や、情報漏えい時の対応手順の策定などが求められます。

医療IoTセキュリティへの対応

医療現場におけるIoT機器の活用が進む中、それらのセキュリティ対策も重要な課題となっています。医療IoT機器は、ネットワークに接続されることで利便性が向上する一方、サイバー攻撃の対象にもなり得ます。

医療機関は、IoT機器のセキュリティリスクを適切に評価し、必要な対策を講じる必要があります。例えば、IoT機器の設定変更やファームウェアの更新を適宜行ったり、不要なポートを閉じたりすることが重要です。また、IoT機器を含むネットワーク全体の監視・管理体制を整備することも欠かせません。

セキュリティ人材の育成と確保

セキュリティ対策を効果的に実施するためには、それを担う人材の存在が不可欠です。しかし、セキュリティ人材は慢性的に不足しており、医療機関も例外ではありません。

医療機関は、セキュリティ人材の育成と確保に注力する必要があります。例えば、既存の職員に対してセキュリティ教育を実施し、スキルアップを図ることが考えられます。また、必要に応じて外部の専門家を活用することも有効です。セキュリティ人材の確保は容易ではありませんが、医療情報を守るために欠かせない投資といえるでしょう。

まとめ

医療機関では、患者の大切な個人情報を適切に守るために、強固なセキュリティ対策が不可欠です。セキュリティ対策の目的は、患者情報を不正アクセスや漏えい、改ざんなどの脅威から守り、患者のプライバシーを保護し、診療の質と安全性を確保することにあります。

医療機関に求められるセキュリティ対策の要点には、組織的、物理的、技術的、人的な安全管理措置があります。具体的には、アクセス制御と認証管理、ネットワークセキュリティ対策、マルウェア対策とパッチ管理、暗号化とデータの保護、監査ログの取得と分析などが挙げられます。

セキュリティ対策を実施する上での留意点としては、セキュリティポリシーの策定と周知、定期的なリスクアセスメントの実施、インシデント対応体制の整備、教育・訓練の重要性などがあります。今後の課題としては、セキュリティ脅威の動向と対応、法規制の強化と対応、医療IoTセキュリティへの対応、セキュリティ人材の育成と確保などが挙げられます。


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