DLLサイドローディング|サイバーセキュリティ.com

DLLサイドローディング

DLLサイドローディング(DLL Side-Loading)は、マルウェアや攻撃者が正規のプログラムが読み込むはずの動的リンクライブラリ(DLL)ファイルを不正に置き換えることで、悪意あるコードを実行する攻撃手法です。この手法では、正規のアプリケーションに見せかけて、悪意のあるDLLが読み込まれるため、攻撃が非常に目立たずに行われます。主に、古いソフトウェアや脆弱なアプリケーションによって、DLLファイルのロード順序が適切に管理されていない場合に利用されることがあります。

この攻撃は、システムに既にインストールされている正規のプログラムを利用するため、ウイルス対策ソフトウェアやセキュリティツールの検知を回避することができます。また、攻撃者は、標的のPCやシステムで信頼されているプログラムを悪用することで、セキュリティチェックをすり抜けやすくするという利点があります。

DLLサイドローディングの仕組み

DLLサイドローディングの攻撃が成功するまでの基本的なステップを以下に示します。

不正なDLLファイルの作成: 攻撃者は、正規のDLLと同じ名前を持つ不正なDLLファイルを作成します。このファイルには、マルウェアやバックドアなど、攻撃者が実行したいコードが含まれています。
正規アプリケーションの利用: DLLサイドローディングは、正規のアプリケーションを利用して攻撃を行うため、対象となるアプリケーションが必要です。攻撃者は、脆弱性を持つソフトウェアや古いバージョンのアプリケーションを特定し、それをターゲットとします。
不正なDLLの配置: 不正なDLLファイルを正規のアプリケーションの実行ディレクトリに配置します。このディレクトリにあるDLLが、システムが検索する際に最初に見つかるようにするのがポイントです。
アプリケーションの起動: 正規のアプリケーションが起動されると、通常通りDLLをロードしようとしますが、不正なDLLファイルが読み込まれることで、攻撃者のコードが実行されます。

DLLサイドローディングの特徴とリスク

DLLサイドローディングは、攻撃者にとって非常に効果的な手法であり、特定の環境でしか検知が困難であるため、次のような特徴があります。

正規アプリケーションを悪用

この攻撃手法では、正規のアプリケーションが悪用されるため、セキュリティソフトウェアに検知されにくい場合があります。システム管理者やユーザーは、アプリケーションそのものに問題がないと認識しているため、マルウェアの存在に気付きにくくなります。

脆弱なDLLロード順序の利用

DLLサイドローディングは、特定のアプリケーションがDLLをロードする際の順序を悪用します。正規のDLLが適切なディレクトリに存在していない場合や、検索パスが不十分な場合に、不正なDLLがロードされやすくなります。

持続的な攻撃のためのバックドア作成

DLLサイドローディングによって、不正なコードが実行されると、システムにバックドアを設置することも可能です。これにより、攻撃者は継続的にシステムにアクセスし、さらなる攻撃を仕掛けることができます。

特定のアプリケーションのバージョンや脆弱性を狙う

多くの場合、古いバージョンのアプリケーションや特定の脆弱性を持つソフトウェアがターゲットになります。これにより、攻撃の成功率が高まります。

DLLサイドローディングへの対策

DLLサイドローディング攻撃を防ぐためには、いくつかの対策が必要です。以下は、その具体的な対策方法です。

最新のソフトウェアへのアップデート

使用しているアプリケーションやオペレーティングシステムを常に最新のバージョンに更新することで、既知の脆弱性を悪用されるリスクを低減します。特に、古いソフトウェアは脆弱性が存在する可能性が高いため、定期的なアップデートが重要です。

アプリケーションのセキュアな設定

アプリケーションの設定を適切に行い、信頼できない場所からDLLがロードされないようにすることで、サイドローディング攻撃を防止できます。特に、検索パスの制御や権限の管理を徹底することが重要です。

権限管理の強化

不正なDLLファイルが特定の場所に配置されるのを防ぐために、ファイルシステムやフォルダのアクセス権限を適切に管理します。管理者権限を持たないユーザーによる重要なディレクトリへのアクセスを制限することで、攻撃のリスクを減らせます。

セキュリティソフトウェアの利用

高度な検知機能を持つセキュリティソフトウェアを導入し、システムの挙動を監視することで、DLLサイドローディングのような不審な動作を早期に検出することができます。

コード署名の確認

正規のDLLファイルにデジタル署名を適用し、署名のないファイルが読み込まれないように設定することも、サイドローディング攻撃の防止に役立ちます。

まとめ

DLLサイドローディングは、正規のアプリケーションを悪用し、不正なDLLをロードさせることで攻撃者のコードを実行する手法です。この手法は、セキュリティ対策をすり抜けるために非常に効果的であり、特に脆弱なアプリケーションを利用する環境では注意が必要です。対策としては、最新のソフトウェアへの更新、セキュアな設定の適用、権限管理の強化が求められます。これにより、システムのセキュリティを強化し、攻撃から守ることができます。


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