PCで「データエラー(巡回CRCエラー)です。」というメッセージが表示されたら、要注意です。CRCエラーとは、ストレージ(内蔵HDDなど)のデータの一部が読めなくなったエラーです。このエラーが発生すると、ハードディスクにアクセスできなくなったり、ファイルがコピーできなくなったりする可能性があります。
CRCエラーが発生した場合は、安易にエラーチェックをかけたり、データ移行を試みたりすると状態を悪化させる危険性があります。そのため、まずはCRCエラーの原因を把握し、適切な対処を行うことが大切です。
本記事では、CRCエラーの発生原因と発生時の注意点、エラー発生場所ごとの修復方法について解説します。CRCエラーが発生した際は、本記事を参考にして対処してみてください。
目次
CRCエラーとは
PCでデータを保存しようとすると、「データエラー(巡回冗長検査(CRC)エラー)です」というエラーが発生することがあります。CRCとは「Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査」の略で、CRCエラーとは、データの送信・記録・コピーの際に、途中でデータが欠落したか変更されたことを検出するエラーです。
つまり、CRCエラーが発生した場合は、データが破損している可能性があります。
誤解しやすいのが、CRCは誤りを検出する仕組みで、正しい値へ訂正する機能ではない点です。PCには自動修復機能があり、不具合があれば修復を試みることができますが、これでも対処できなかった場合に、CRCエラーとなります。
CRCエラーが起こる原因
CRCエラーは、データの送信・記録・コピーの前後で不整合が生じた場合に発生すると説明しました。CRCエラーが生じる原因は主に以下の3つです。
- 接触不良
- 論理エラー
- 物理エラー
接触不良
以下のような原因でCRCエラーが表示されることがあります。
- 端子部分が汚れている
- ケーブルが劣化している
まずは端子部分の汚れをふき取り、長期間使用しているケーブルは新しいものに取り換えてみてください。
論理エラー
論理エラーとは、ファイルシステムの破損、誤操作によるフォルダやファイルの削除、強制的な電源切り替えや再起動によって、保存しているデータにエラーや論理的故障が発生するデータ障害を指します。
論理エラーの場合は、データの読み書きなどの動作が遅くなるなど、症状が断定しにくいことからエラーの発生を察知しにくいため、発覚が遅れてしまう場合が多いです。
論理エラーの原因として以下が挙げられます。
- レジストリ・ファイルシステムの破損
- プログラム・ドライバなどのインストール
レジストリ・ファイルシステムの破損
予期せぬ電源オフや取り外し、クラッシュが発生すると、レジストリまたはファイルシステムに保存されているデータが破損し、CRCエラーが発生することがあります。
なおレジストリファイルはWindowsの動作に必要な設定や情報を保存したもので、ファイルシステムはメディアに保存されたデータの管理方法を定めた仕組みです。これらが破損すると、データの読み書きが困難になる場合があります。
なるべく強制終了は控え、読み書きが終わらない場合でも完全に終了するまで待ってから電源を落とすようにしましょう。
Windows10でHDDが認識しない場合には、以下の記事も参考にしてください。
プログラム・ドライバなどのインストール
プログラム・ドライバなどをインストールする際に、インストールに失敗してしまったり、最新のドライバでは無い時やドライバが破損している時などにCRCエラーが発生する場合があります。
この時にはエラーメッセージが表示されるため、異常を察知しやすいので、ドライバの状態が最新の状態になっていることを確認してインストールを実行するようにしましょう。
物理エラー
ハードディスクは非常に精密な機械であり、内部を守るために密閉されています。衝撃にも弱く、密閉されているとはいえ、経年劣化などにより磁気ヘッド部分が損傷することがあります。
本来、磁気ヘッド部分とデータの読み書きを行う円盤型のプラッターは、お互いが触れないように少しだけ隙間が空いています。ところが、磁気ヘッドの損傷によりお互いが触れてしまうと、プラッターが傷ついてしまい、データの読み書きが正常にできない状態に陥ります。
物理エラーの原因として、以下のものが挙げられます。
- HDDが破損している
- 磁気エラーが発生している
- 不良セクタの発生
HDDが破損している
HDDは、磁気ヘッドやディスク表面などの物理的な部品で構成されています。これらの部品が破損すると、データが正しく読み取ることができなくなり、CRCエラーが発生する可能性があります。
HDDの破損の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 衝撃や振動による物理的な損傷
- 高温多湿・水没など
- 経年劣化による摩耗
症状によってはカチカチ・カタカタと異音が発生したり、焦げたような異臭が発生する場合もあります。
磁気エラーが発生している
HDDのディスク表面には、磁気信号でデータが記録されています。磁気エラーとは、この磁気信号が強い磁場の影響などで誤って記録されたり、消えてしまったりすることを指します。
不良セクタの発生
HDDのデータ読み書きの最少記録単位はセクタと呼ばれ、ディスクの表面にキズができると、その部分はデータの読み書きができなくなります。この箇所を「不良セクタ」と呼び、SSDなどメモリ媒体では「不良セル」と呼ばれます。不良セクタが一定数を越えると、自己修復できず、ファイルを開けなくなったり、データが消えたりする場合があります。
不良セクタに起因する物理障害は復旧難易度が高く、不良セクタを含むデータを復旧するには、高度な技術と設備、経験が必要です。そのため、CRCエラーが発生した場合は、早めにデータ復旧業者に相談することをおすすめします。データ復旧業者は、高度な技術と設備を駆使し、不良セクタを含むデータの復旧を行います。
データ復旧は業者に依頼するのが確実
CRCエラーやその他、通常では見られない不具合を確認したときは、まず、PCの電源を落として「それ以上何もしない」のが得策です。自力で対処しようとして電源のオン/オフや再起動を繰り返すことで、本来なら復旧できたデータまで失ってしまうことになります。したがって、電源を落とした状態で、データ復旧の専門家に相談することをおすすめします。データ復旧業者では、PCメーカーでも復旧できない難易度の高いデータ復旧に対応できる場合があります。
対処法を試しても修復できない場合は専門業者へ依頼しよう
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CRCエラー発生時の注意点
CRCエラーが発生したときの対処で、行ってはいけないことがあります。エラー発生中に不適切な操作をすると、本来復旧できるデータまで消失してしまうため、注意が必要です。
- 「chkdsk」の実行はNG
- 過度な電源のオン/オフや再起動はNG
- 対処法を試しても修復できない場合は専門業者へ依頼しよう
「chkdsk」の実行はNG
「chkdsk」とは、Windowsで標準搭載されているドライブエラーのチェックコマンドです。
「chkdsk」に「/f」や「/r」のオプションを指定して実行すると、ファイルシステムを修復できるというものです。しかし、CRCエラーが生じているときは絶対に実行してはいけません。
「chkdsk」の目的は、Windowsにとって適性なファイルシステムにすることであり、ハードディスクのエラーチェックやハードディスクのエラーの修復ではありません。当然、「chkdsk」を使用してもユーザにとって必要なファイルが修復されるわけではありません。
「chkdsk」を実行してしまうと、他の手段で救出できる可能性があるデータも、「chkdsk」がエラーと判断した部分のデータをまるごと切り捨てた状態で、上書きされてしまいます。本来復旧できていたかもしれないデータまで失ってしまう可能性が高いため、「chkdsk」は実行してはいけません。
過度な電源のオン/オフや再起動はNG
CRCエラーや障害が発生している状態で、電源のオン/オフや再起動を繰り返すのはやめましょう。エラー状態で通電を繰り返すと次のような損傷が発生し、本来復旧できていたデータまで失ってしまいます。
スクラッチ | ハードディスクのヘッド部分が破損した状態で通電を続けることで、磁気ディスクへの傷「スクラッチ」が付いてしまいます。 |
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データの上書き | PCを起動するとハードディスクには起動に関する情報なども自動的に書き込まれます。本来復旧すべきデータの上に、それらの情報を上書き保存してしまうことがあります。 |
不良セクタ | データを読み込むことができない領域である不良セクタが、通電の繰り返しにより拡大してしまいます。 |
CRCエラーの対処法(修復方法)
CRCエラーが発生した場合は、どのように対処すべきでしょうか。エラーの発生場所ごとに説明します。
- HDDでCRCエラーが発生した場合
- USBメモリ・SDカードでCRCエラーが発生した場合
- DVD・CDでCRCエラーが発生した場合
- OutlookでCRCエラーが発生した場合
HDDでCRCエラーが発生した場合
磁気ヘッドやプラッターの損傷など物理的損傷が原因の場合は、データの復旧を最優先で行い、その後ハードディスクの交換等を行います。
個人でできる主な対処法として以下の三つが挙げられます。
- 周辺機器を交換する
- PCの場合は内臓HDDを交換する
- データ復元ソフトを利用する
周辺機器を交換する
ハードディスクでのCRCエラーは、SATAケーブル(パソコンとハードディスクを接続するケーブル)の接続不良が原因で発生することがあります。PC内のあらゆる電子部品で電気的なノイズが発生する可能性があり、また、そのノイズが他の電子部品に伝達されることも少なくありません。
特に、高速でデータを伝送するSATAは、この電気的なノイズに影響されやすいため、SATAケーブルでのデータ伝送中に、CRCエラーが生じることがあります。SATAケーブルを使用しているときは、SATAケーブルを抜き差しして、ケーブルのコネクタをハードドライブ・マザーボードに正しく差し込んでください。また、SATAケーブルを新しいものに交換するとCRCエラーが解消することがあります。
PCの場合は内蔵HDDを交換する
PCの内蔵HDDが原因でCRCエラーが発生している場合には、内蔵HDDを交換することで解決することがあります。しかし、これはPCの動作の復旧を優先する場合でありHDDに保存したデータは全て消えてしまうため注意が必要です。
故障したHDDからデータを取り出すには、障害の原因を診断して適切に対処する必要があります。HDDからデータを復旧する方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
データ復元ソフトを利用する
データ復元ソフトを利用することで、軽度の論理エラーであれば修復できる可能性があります。
復元ソフトの例として、以下のようなものが挙げられます。
- Disk Drill
- EaseUS Data Recovery Wizard
- Recoverit
- Recuba
- Recover Files
有料のものから無料のものまで様々で、対応可能な症状や修復可能な容量が変化します。
しかし、注意点としてソフトのダウンロードやスキャンの作業によってHDDの状態が悪化してしまったり、データを上書きしてしまう危険があります。
また、対応可能な症状は軽度の論理障害に限られます。データが取り出せなくなってしまうリスクがあるため、物理障害や重度の論理障害の場合には復元ソフトを絶対に使用しないでください。症状が判別できない状態でデータ復元ソフトを扱うのはデータを失ってしまうリスクがあります。
確実にデータを取り出したい場合や復旧ソフトの取り扱いが不安な方はなるべく個人での作業を控え、専門業者に依頼することをおすすめします。
USBメモリ・SDカードでCRCエラーが発生した場合
USBメモリとSDカードの記録する場所のセクタ不良や、基盤回路やコントローラチップ、データチップの劣化により巡回冗長検査CRCエラーが表示されるケースがあります。
USBメモリ・SDカードでCRCエラーが表示される場合は、USBメモリ・SDカードが故障しかかっているか、すでに故障している状態が大半です。データの復旧をしたら、新しいものに交換しましょう。データ復旧用のソフトウェアなども市販されていますが、万が一、失敗してしまうと本来復旧できるデータさえも消失してしまいます。データの復旧は、技術力の高い専門業者へ相談することをおすすめします。
DVD・CDでCRCエラーが発生した場合
DVD・CDなどの光学メディアの表面に、手の指紋・ホコリ・汚れが付着しているためにCRCエラーが発生している可能性があります。この場合は、眼鏡専用クロスなどでDVD・CDの記録面を拭き取ります。
また、クロスなどで拭き取れる汚れなどの他、DVD・CDに目に見えない細かい傷が付いているためにCRCエラーが発生している可能性もあります。この場合は、市販の光学メディア専用リペアキットで傷を補修することで、CRCエラーが解消することがあります。
OutlookでCRCエラーが発生した場合
メールアプリ「Microsoft Outlook」で、次のようなメッセージと共にCRCエラーが発生し、メールの送受信や削除ができなくなることがあります。
- “○○.pstにアクセスできません。データエラー(巡回冗長検査(CRC)エラー)です。”
- “○○をコピーできません。データエラー(巡回冗長(CRC))エラーです。”
OutlookでのCRCエラーの原因は、PSTファイルが破損しているか、PSTファイルが保存されているハードディスクで問題が生じていることです。PSTファイル(.pst)はOutlookデータファイルで、ダウンロード済みのメールメッセージ・予定表情報・連絡先などの情報が保存されているファイルです。
PSTファイルの破損に対処するため、Microsoftは、PSTファイルを修復するためのツール「受信トレイ修復ツール」を提供しています。OutlookでCRCエラーが発生したときに、使用してみるのも一つの方法です。
参照Outlook データ ファイル (.pst および .ost) を修復する/Microsoft
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まとめ
CRCエラーが発生すると、突然ファイルの保存やコピーができなくなり非常に焦ります。データを最大限復旧するために大切なのは、「何もせずに」電源を落として現状を維持することです。その上で、専門知識のあるデータ復旧業者に相談をしましょう。
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