サイリーグHD、2025年事業戦略を発表|大手企業との提携や新サービスで“サイバーレジリエンス”を強化|サイバーセキュリティ.com

サイリーグHD、2025年事業戦略を発表|大手企業との提携や新サービスで“サイバーレジリエンス”を強化



2025年5月20日、サイリーグホールディングス株式会社(以下、サイリーグHD)は、東京・大手町にて「事業戦略発表会」を開催しました。同社は、株式会社チェンジホールディングスのグループ会社として、サイバーセキュリティ分野を中心に事業を展開する中間持ち株会社です。

今回の発表会では、最新のサイバー脅威の動向とともに、国内大手セキュリティ企業との業務提携や新サービスの提供についての詳細が明らかになりました。

最新のサイバー脅威とその対策の必要性 ~徳丸浩氏が語る「認証技術の転換点」~

発発表会の冒頭では、サイバーセキュリティの第一人者であり、サイリーグHD エグゼクティブ・フェローの徳丸浩氏が登壇。急速に高度化するサイバー攻撃の現状と、それにどう向き合うべきかについて、具体的な事件を交えながら講演しました。

徳丸氏は、近年相次ぐSBI証券やじぶん銀行の不正アクセス事件を取り上げ、オンライン証券分野におけるセキュリティ対策の遅れに警鐘を鳴らしました。

オンラインバンキングに比べて、オンライン証券は不正アクセスの歴史が浅く、対策がまだこなれていない」

と述べたうえで、「出口対策」(不正送金防止など)ばかりに注目が集まっている現状を指摘。これは対症療法に過ぎず、根本的な解決策ではないため「いたちごっこ」になりやすいと分析しました。

さらに、SMSやワンタイムパスワードなどによる二要素認証(2FA)についても、

・フィッシングに弱いことは20年前から既知の課題
・すでにYouTuberですら「2FAも突破される」と警告している
・にもかかわらず、現場では十分な対策が行われていない

という現実を示し、現行の認証方式の限界を強調しました。

パスキーは、FIDO2などに基づく公開鍵暗号方式を活用した次世代の認証技術であり、ユーザーがパスワードを入力することなく、かつフィッシングにも強い特長があります。徳丸氏の言葉は、今後の認証技術のスタンダードが変わる兆しを示していると言えるでしょう。

サイリーグHDの今後の事業戦略とは?


サイリーグホールディングス株式会社 取締役 COO 石川 耕氏

続いて登壇したのは、サイリーグHD取締役COOの石川耕氏。同氏は、サイリーグHDが設立以来進めてきた事業の方向性とともに、今後の戦略について語りました。

特に注目されたのは、国内大手セキュリティ企業との業務提携の強化と、共同開発によるサービス提供です。これにより、企業が抱える「人材不足」や「ノウハウ不足」といった課題を支援し、日本全体のサイバーレジリエンスを底上げする狙いがあります。

また、AIを活用した脅威検知システムやクラウドベースのセキュリティプラットフォームの開発も進められており、導入企業のセキュリティレベルを包括的に引き上げる体制が整いつつあります。

セキュリティ人材育成にも注力

セキュリティ体制の強化に不可欠なのが「人材育成」です。発表会では、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド型のセキュリティ研修プログラムも明らかになりました。

このプログラムでは、実務に即した演習やケーススタディを通じて、攻撃を受けた際に迅速かつ正確に対処できる人材を育成。企業内部での対応能力を高め、外部依存度を下げることを目的としています。

S&Jと共同開発した「CyLeague サイバーレジリエンス・パッケージ」を発表

さらに注目を集めたのが、サイリーグHDとS&J株式会社による共同開発サービス「CyLeague サイバーレジリエンス・パッケージ ~サイバー攻撃対応サービス~」の発表です。2025年7月より提供開始予定のこのサービスは、事前契約型のインシデント対応支援サービスとなっています。

これにより、企業は突発的なサイバー攻撃に対して、事前に契約しておくことで、迅速かつ的確な支援を受けることが可能になります。料金は年間契約方式となっており、急な対応によるコストの増加や、社内リソースのひっ迫を未然に防ぐ設計となっています。

また、四半期ごとの脅威インテリジェンス提供や定例会の実施などにより、常に最新の情報をキャッチアップできる点も大きな特長です。万一の攻撃時には、あらかじめアサインされたセキュリティ専門家が初動から対応するため、企業の損失を最小限に抑えることができます。

このサービスは、S&Jの専門的なセキュリティノウハウと、サイリーグHDのネットワークおよび顧客接点を融合することで、多くの企業に“現実的なセキュリティ対策”を届けることを目指しています。

今後の展望とまとめ

今回の戦略発表会を通じて、サイリーグHDは「攻撃される前提」での体制づくりに舵を切り、従来の「防御一辺倒」のセキュリティから、「対応力と復元力」を重視するサイバーレジリエンス型のセキュリティモデルへの転換を明確に打ち出しました。

国内外でサイバー攻撃の手法が多様化・高度化する中、企業が自社を守るためには、テクノロジーだけでなく人材・情報・連携の強化が不可欠です。サイリーグHDとそのパートナー企業の取り組みが、今後の日本におけるセキュリティ業界の新たなスタンダードを形成していくことが期待されます。


※本記事は、2025年5月20日開催の「サイリーグHD事業戦略発表会」および各種公開資料をもとに構成しています。サービス詳細については、サイリーグHD公式サイトおよびプレスリリースをご確認ください。

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