日本初となる「情報セキュリティ学科」を2016年4月に開設した長崎県立大学は、セキュリティ演習の実践を目的として、情報セキュリティを実体験できるリアルタイムネットワーク可視化システム「WADJET(ウジャト)」を2017年初頭に導入しました。
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日本初の情報セキュリティ学科
公立大学の中でも長い歴史を誇る長崎県立大学は、大学・大学院の学生総数3,000 人を超える統合大学で、シーボルト校には国際社会学部、情報システム学部、看護栄養学部、国際情報学部の4 学部があります。
2016 年に開設された情報システム学部は、IT 関連企業への長期インターンシップや情報技術に関する国家資格取得などを通して、実践的教育を推進しています。
シーボルト校では、国内でも急務となっている情報セキュリティ技術者の育成を目的として、日本初となる情報セキュリティ学科を開設しました。サイバー犯罪から情報を守るために不可欠なネットワークセキュリティ、セキュアサーバ運用、情報セキュリティマネジメント、セキュアなシステム構築方法等を、豊富な演習を通して学ぶことができます。
「視える空間」での講義・演習
白を基調とした清潔感のあるセキュリティ演習室の最大ポイントは、死角を無くすために配備された4つのプロジェクタと2台のモニタ、ショールームのように、ガラス張りにされた機材関係が設置されたサーバルームです。
ガラス面に映し出されたプロジェクタの映像と、奥のサーバルームがリンクしているため、関連性/ 仕組みが一目瞭然となり、学生の理解度を深めることが可能となります。
また、消灯された演習室は、「WADJET( ウジャト)」が可視化したトラフィックやIPアドレス、アラートなどを、リアルタイムに体験できる先進的なサイバー空間に早変わりします。
演習室は、6人掛け円卓9卓を基本レイアウトとしていますが、講義内容によっては、4人のグループワークや2人1組、または個人の実践を可能とするように、円卓と椅子の移動が自由なフリーレイアウトとなっています。これにより、学生たちは、目的に沿って自由に移動でき、積極的に学べる環境を整えることが出来ます。
ファイアウォールの警告など、異常に反応してアラートが鳴るシステムは、情報を扱う授業に適していると思い導入を決めました。
情報セキュリティ学科では、危険性のあるサイトへのアクセスを余儀なくされるケースもあるでしょう。しかし、教員が授業中に機器のログを見ながらオペレーションするのは実現的ではありません。
WADJETを導入すれば、ボタン一つで危険な通信を止めることができます。また、そのような状況に直面した場合でも、学生の眼前でオペレーションができるのも利点です。
サイバーセキュリティの勉強にはリスクを伴いますが、状況や危険を「見える化」することにより、教員のオペレーション労力を軽減することができます。講義を中断することなくセキュリティの対処が可能となり、90分のコマを有効に使って演習を行うことができます。
危険の中で実践を積む=即戦力を育成
ネットワークの可視化は、学生の理解を促すと同時に、学校側の安全を担保することにも役立ちます。それゆえ、危険の中でも一歩踏み込んだ講義、演習ができるのです。
学生にとって実体験は貴重な財産となり、大きな強みとして社会に出てからも大いに役立つ部分となります。学生時代からリスクある状況を目で視て理解し、体験していればきっと社会に出ても即戦力の人材として重宝されるでしょう。
WADJET は学生の興味、関心を掻き立てる
WADJET導入のもう一つのメリットは、学生が興味を持ちやすいということです。
普段、直接見ることができないネットワークの世界が一瞬にして目の前に広がるので、どんな仕組みで、何をやるべきかが明確化されます。ビジュアル的に映えることも特長であり、オープンキャンパスなどでこの演習室を公開することを予定しています。
サイバーセキュリティ分野のハードルを、WADJET導入により下げ、学生が興味を持って、深く学んでいくことを願っています。
学生が能動的に使いこなし、発展させて欲しい
学生は授業で、ネットワーク上でシステムがどのように動いているかなど、モニタを見て覚えていきます。3年生になると演習が多くなるため、必然的にWADJETも多くの演習で活用することになります。つまり、情報セキュリティ学科に入れば、日常的にWADJETというシステムをと接することができるのです。
この演習設備を使いこなすことで、より冒険的なこともできると考えられます。WADJET を使って、学生自身が能動的にチャレンジしていってもらいたいものです。
大学は腰を据えて勉強ができる場ですので、学生自身がWADJET の効果的な使い方や発展性などを見出し、研究などでも活用してくれたら嬉しいです。