HDD(ハードディスク)は、安価で大容量のデータを保存できるため、パソコンの記憶メディアとして広く普及しています。しかし、HDDは非常にデリケートな機器であり、その寿命も3~5年程度のため、ある日突然「認識しない/読み込まない」という状態に陥ることも珍しくありません。
HDDの障害は大きく分けて「論理障害」「物理障害」と呼ばれる2つの障害があります。
この2つの障害は、原因や対処法が全く異なっているため、間違った対処方法を行うと、さらに状況を悪化させてしまい、本来取り出せたはずのデータも取り出せなくなってしまいます。
そこで今回は「HDD障害の分類」や「データ復旧方法・注意点」などについて紹介していきます。
目次
HDD(ハードディスク)の論理障害とは
「論理障害」とは、HDD自体には問題がないものの「誤操作によるデータ消去や初期化・フォーマット」「読み書き中の強制終了によるファイル破損」などが原因で、記録されているデータやフォルダ構成などに不具合が生じている状態を指します。
論理障害の場合、下記のような症状が機器に発生します。
- フォーマットの要求
- OSが起動しない・頻繁にフリーズする
- 勝手にファイル名が書き変わる
- ブルースクリーンが表示される
- ファイルやフォルダが開けない
ただし、論理障害ではHDD自体正常に起動することも多く「物理障害」に比べると、発覚が遅れがちです。また、このような状態でHDDで作業を続けたり、ファイルのコピーを行うと、データが上書きされてしまい、論理障害であってもデータの復旧率が著しく低下してしまいます。
論理障害が発生する代表的な原因は、「誤操作」と「ファイルシステム障害」があげられます。
誤操作(データの消去やフォーマット)
論理障害は、誤った操作によるデータの消去や初期化・フォーマットなど、画面上での人的操作が原因で発生する場合が多く、日常的に起こりやすいトラブルといえます。
ただし、HDDでは削除・フォーマットした後、しばらくの間はデータやフォルダの痕跡が残るため、専門ツールで痕跡を解析することで、データとして復旧することが可能です。
ただし、削除してしまった後に何らかの操作を加える行為(復旧ソフトの作業も含む)は、その痕跡をどんどん上書きすることになります。
このような人的要因による論理障害の場合は速やかに電源を切り、より確実にデータ復旧が行える専門サービス業者に問い合わせすることをおすすめします。
ファイルシステム障害
ファイルシステムとは、どこにどのようなデータがHDDにあるのかを管理・認識できるようにする、本棚のような仕組みのことです。
しかし、データ書き込み中の強制終了などが原因となって、ファイルシステムの整合性が乱れてしまうと、データにアクセスが出来なくなるなどの異常をきたしてしまいます。
ただし、ファイルシステム障害の場合はデータそのものに破損がないことが多く、エラーチェッカーでデータ復旧が可能な場合があります。
HDD(ハードディスク)の物理障害とは
「物理障害」とは、HDDのパーツが「物理的衝撃」「落雷によるショート」「経年劣化」などが原因で物理的に破損し、正常に起動しない状態を指します。
物理障害の場合、下記のような症状が機器に発生します。
- カチカチ、カタカタと異音がする
- 焦げ臭いにおいがする
- フォーマットが促される
- BIOSがハードディスクを認識しない
- OSが起動しない
- 頻繁に再起動・フリーズする
- 黒い画面に「Operating System Not Found」「DISK BOOT FAILURE…」などのエラーメッセージが出る
代表的な物理障害には「磁気ヘッド障害」と「ファームウェア障害」があります。なお、物理障害の場合、個人で対応可能な範疇を超えているため、修復作業を行う際は業者への依頼が必要になるため注意が必要です。
磁気ヘッド障害
HDDの磁気ヘッドとは、データの記録面(プラッタ)に読み書きを行う装置のことです。
障害を起こした磁気ヘッドは不規則な動作をしてカチカチ、カタカタと異音を発するので、このような場合は個人でも「物理障害」と判断することが可能です。この状態での通電は、プラッタに傷(スクラッチ)がつく「重度物理障害」を引き起こすリスクが高く、2度とデータが取り出せなくなることがあります。
なお、磁気ヘッドの修復には極めて高度な防塵設備を施した「クリーンルーム」という専門施設でHDDを開封する必要があります。個人で対応することは到底できないため、絶対に通電せず、専門のデータ復旧業者に相談しましょう。もしプラッタに傷が付く前に破損箇所を特定し交換すれば、安定したデータ復旧が行えます。
ファームウェア異常
ファームウェアはHDDを動作させるプログラムです。
しかし、ファームウェアが書かれている領域に不良セクタや、磁気ヘッド障害によるスクラッチが発生していたり、あるいは経年劣化による磁性体の劣化などが原因で、ファームウェアが不具合を起こすと、正常にデータを読み書き出来なくなります。
症状に関しても、ファームウェア異常は他の物理症状や論理症状と判別が難しく、原因を特定しにくい傾向にあります。例えば、パソコンがHDDを認識しなかったり、ヘッドからカチカチと異音がする場合は、各パーツ自体が正常であっても、ファームウェア異常が原因で起こっていることがあります。そのため正確な診断と手順を行わなければ、ファームウェア異常は修復することが出来ません。
また各メーカーはファームウェアに関する情報を一切公表しておらず、メーカ・製品・製造時期ごとにファームウェアの構造も異なります。そのためファームウェアの解析は専門機関との提携か非常に高度な解析技術が必須であり、ファームウェアのノウハウを保持・公表しているデータ復旧業者は「技術力の高さ」を把握する上で有用な指標になるといえます。
HDD(ハードディスク)のデータ復旧方法
ここからHDD故障時のデータ復旧方法を紹介します。
ただし、紹介する方法のうち①②は個人作業となるため、失敗するとハードディスク内のデータも消失してしまう可能性があります。個人での復旧作業は、自己責任での実施であることを了承の上、実行しましょう。
①エラーチェッカーでHDDの軽度論理障害を自動修復する(Windows)
Windowsの場合、エラーチェックでHDDの論理障害(ファイルシステム障害・軽度の不良セクタ)を自動修復できる場合があります。
ただし、エラーチェックは物理障害に対応することはできません。
「物理障害が疑われるような場合」や「論理障害と物理障害の判別がつかない場合」はエラーチェッカーを使用してはいけません。
エラーチェッカーの操作手順は次のとおりです。
- まず「PC(コンピュータ)」を表示します。
2. チェックしたいハードディスクを右クリックし、プロパティを表示。ツールタブをクリックします。
3. エラーチェックの[チェック]をクリックします。
4. スキャンが開始されます。
5. もしエラーが検出された場合は、ファイルシステムを修復するため、再起動のメッセージが表示されます。再起動すると、自動でシステムの修復が開始します。
②データ復旧ソフトを使用する
論理障害の場合、HDD自体に物理的破損がないため、データ復旧ソフトでデータや破損箇所を復旧できることがあります。
しかし、データ復旧ソフトの復旧率は決して高くなく、そもそも物理障害には対応できないため、本来は無傷だったデータや機器自体を傷つけてしまう可能性もあります。
物理障害には専門設備で「部品交換」「ファームウェア修復」などの作業を行う必要があるため、個人での修復およびデータ復旧は不可能です。自己流の対応は避け、専門の業者に相談・依頼しましょう。
また「データ復旧ソフトを使う」ことは言い換えれば、操作を加えた分だけ内容が上書きされたり、もともと無かった障害が発生してしまう可能性があるということです。仮に、復旧ソフトを使用した後にデータ復旧業者に依頼すると、論理障害・物理障害を問わず、データの復旧率は低下する恐れがあるので注意しましょう。
③データ復旧業者に依頼する
HDDのデータ障害は場合によっては原因の特定が難しく、障害が併発していることもあります。やみくもに復旧作業を進めたりすると障害が悪化する恐れがあるため、個人では解決できないことが多々あります。
データを確実に取り出したいときは、データ復旧の専門業者に依頼するのが最も安全な手段だと言えます。
なお、物理障害のデータ復旧では、基本的にHDDの分解作業が伴うため、専門技術・知識・設備がないと復旧はできません。明確な物理症状が確認できる場合は、必ず専門家のデータ復旧業者に依頼しましょう。データ復旧の知識やノウハウがある専門の技術者がクリーンな環境下で部品交換を行います。
データ復旧業者の選定方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
HDD(ハードディスク)障害時の注意点
HDDに障害が起きていることが疑われる場合、以下の点に注意する必要があります。
通電し続けない
HDDが故障している状態では、通電を極力避けることが大切です。
通電中は、HDDに読み書きを行う磁気ヘッドも動作し続けています。しかし、物理障害が起きている状態では磁気ヘッドが不規則に動作することがあり、HDDの記録面(プラッタ)と磁気ヘッドが接触(ヘッドクラッシュ)してしまう可能性があります。
磁気ヘッドとの接触によりプラッタが傷つくと、記録されたデータも破壊されてしまいます。HDDの故障時には、出来るかぎり通電を避けましょう。
電源のON・OFFを繰り返さない
HDDにとって最も負荷が高い作業が電源のON・OFFです。
故障状態で電源のON・OFFの繰り返すと「磁気ヘッドとプラッタが接触してデータの記録面に取り返しのつかない傷がつく」「データの上書きが発生する」「データの読み込めない不良セクタが増加する」などでHDDの故障が急速に悪化し、必要なデータが完全消失してしまうことがあります。
HDDが故障している状態では、電源を何度もON・OFFしないようにしましょう。
分解はNG
物理障害を起こしたHDDの分解作業を個人で行うことは推奨しません。
なぜならHDDを分解するときは、小さな塵やホコリも故障の原因になるため、専用のクリーンルームで解体を行う必要があるからです。またHDDの分解には特殊な専門知識が必要な上、ユーザが一度分解してしまうと、破損箇所が増えるだけでなく、メーカーの保証対象から外れてしまうことがあります。
エラーチェックで修復できるのは軽度論理障害のみ
Windowsのエラーチェックは、軽度の不良セクタやファイルシステム障害を自動修復してくれますが、解消できるのは軽度論理障害のみです。
エラーチェックで不具合が改善しない場合は、物理障害が発生している可能性が高く、エラーが修復しないからといって、何度もエラーチェック・自動修復を実行するのは避けましょう。すでに障害が悪化している可能性があります。
論理障害と物理障害が見分けられないこともある
論理障害と物理障害は原因が異なるため、障害が発生した際の対処も異なります。
しかし、エラーメッセージやフォーマット要求など、2つの障害は症状が似通っていることがあり、場合によっては見極めが難しく、障害が併発している可能性もあります。
やみくもにデータ復旧ソフトを使用することは却って状態が悪化させる恐れがあります。大切なデータを安全に復旧するためには速やかに電源をOFFにしましょう。
なお、HDDが認識しない場合、メーカーや家電量販店にお問合せする方もいますが、メーカーや家電量販店は基本的に「外側の機器」を提供しているだけで、データ復旧の対応は行っていない場合がほとんどです。
データ復旧を希望する場合は、物理障害にも対応した技術力のあるデータ復旧の専門業者に任せるのが、最も安全にデータを復旧させるポイントとなります。
技術力の高いデータ復旧サービス・製品
おすすめのデータ復旧業者
データ復旧業者は全国100社以上あると言われており、復旧率や対応範囲は業者によって大きく違います。確実にデータ復旧するには、実績が豊富で復旧率の高い業者に依頼するのが一番です。
そこで、全国の業者から復旧率・実績・復旧スピード・価格や特長を比較して厳選したおすすめサービスをご紹介します。編集部おすすめのデータ復旧業者は、こちらのデジタルデータリカバリーです。
デジタルデータリカバリー
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対応製品 | ■記憶媒体全般 ハードディスク、外付けHDD、NAS/サーバー(RAID構成対応)、パソコン(ノートPC/デスクトップPC)、SSD、レコーダー、USBメモリ、SDカード、ビデオカメラ、スマホ(iPhone/Android)、ドライブレコーダー等 |
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復旧期間 | 最短当日に復旧完了(本社へ持ち込む場合) 約80%が48時間以内に復旧完了 |
設備 | 復旧ラボの見学OK クリーンルームクラス100あり 交換用HDD7,000台以上 |
特長 | ✔データ復旧専門業者 14年連続データ復旧国内売上No.1(※1) ✔復旧率最高値95.2%(※2)の非常に高い技術力 ✔官公庁や大手企業を含む累積46万件以上の相談実績 ✔相談・診断・見積り無料(デジタルデータリカバリーへの配送料も無料) ✔365日年中無休で復旧対応 |
所在地 | 本社:東京都六本木 持込み拠点:横浜、名古屋、大阪、福岡 |
デジタルデータリカバリーのさらに詳しい説明は公式サイトへ
※1:第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく(算出期間:2007年~2020年)
※2:2018年2月実績 復旧率=データ復旧件数/データ復旧ご依頼件数 (2017年12月~2021年12月の各月復旧率の最高値)
まとめ
HDDの「論理障害」「物理障害」、データ復旧方法と注意点などについて紹介しました。
HDD内のデータの保持や取り出しという観点では、いずれの個人作業もデータ消失のリスクが付きものです。
もしHDD内に重要なデータが保存されている場合は、個人での復旧・修復作業は推奨しません。またHDDに通電し続けたり、電源のON・OFFを繰り返すことで、データ復旧の可能性も著しく低下してしまいます。
HDDが故障した、あるいは異常が感じられた時点で、電源をすぐに落とし、大切なデータであればデータ復旧の専門業者に相談しましょう。