
近年、幅広い世代でパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が急速に普及したことに伴い「デジタル遺品」のトラブルが急増するようになりました。
特に、最近のデジタル機器はセキュリティが強化されているため、機器にロックをかけたまま管理者本人が亡くなると、遺族は故人の管理していた情報にアクセスできず、故人の債務整理や相続手続などにも支障が生じ、金銭的なトラブルに発展することも決して珍しくありません。
今回の記事ではデジタル遺品の種類から、起こり得るトラブル、やってはいけないこと、対処方法まで徹底解説します。
目次
デジタル遺品とは?
デジタル遺品とは故人が生前に利用していたパソコンやスマートフォンなどデジタル機器やインターネット上のアカウントなど保存されているデータのことです。
具体的には、スマートフォンやパソコンに保存された写真・動画・文書ファイルのほか、SNSアカウントやクラウドにあるアカウント情報、ネット銀行や電子マネーなどの金融資産も含まれます。今や60代の90%、70代の80%が1つ以上モバイル端末を所有しており、無形のデジタル遺品が端末内にあっても不思議ではありません。アカウントなどはパスワード等を知らないと本人以外アクセスできないため見落とされやすく、遺品整理が遅れてさまざまな問題につながる可能性があります。
特にSNSのアカウント放置やサブスクリプションサービスの停止、暗号資産の相続放棄といったトラブルが顕在化したことも注目の背景です。法律面の整備が追いついていないこともあり、遺族が戸惑うケースが増えており、生前からの準備が強く推奨されています。
このようにデジタル遺品は高齢化が進んだ日本が抱えている社会問題ですが、同様に自死や突然死などで若年層のデジタル遺品も目立っており、今後もデジタル遺品にまつわる相談やトラブルは増加していくことが予想されます。
画像出典:総務省「通信利用動向調査 令和5年調査」
出典:総務省
デジタル遺品の種類
デジタル遺品のデータは大きく分けて以下の2つに分けられます。
種類 | 内容 |
---|---|
オフラインデータ | パソコン、スマートフォン、外付けHDDなど、有形メディア内に保存されたデータ
(写真・動画・メールアドレス・住所録など) |
オンラインデータ | SNS、ブログ、メール、クラウドストレージ、電子マネー、仮想通貨を含む電子口座など、ネットワークを介した無形メディア内に保存されたデータ
(アカウント情報や取引履歴など) |
オフラインデータは「手元にあるデジタル機器の情報」のため視認しやすい一方、オンラインデータは「インターネット上に分散している情報」であるため、遺族はその存在自体を見落としやすく、トラブルを招きやすくなります。
特に最新のデータでは60代~70代のモバイル端末の所有率が8割~9割となっています。次に年齢階層別でインターネットの利用目的・用途についてみてみましょう。
画像出典:総務省「通信利用動向調査 令和5年調査」
画像のように、調査に回答した60代以上の約半数がインターネットを利用して商品・サービスの取引を行っています。この中には端末上にクレジットカード情報や銀行口座を登録して利用している人物が少なからず含まれることが予想されます。これにより、アカウントのパスワード等を相続人と共有していない場合、サービスの引き落としが半永久的に続く可能性があります。デジタル遺品を相続したが、サービスの引き落とし等が続く場合、銀行等に連絡するのはもちろんですが、専門の業者に相談してデジタル遺品のパスワードを解除してもらうことも検討しましょう。
デジタル遺品を生前に整理しておくべき理由
デジタル遺品は、形がないため遺族に認識されにくく、放置や誤処理が起きやすい特徴があります。パスワードの未共有やサービス情報の不明瞭さから、重要データの消失や資産の相続漏れが発生することも十分可能性としてはあります。生前に情報を整理し、信頼できる家族や専門業者と共有しておくことで、遺族の負担軽減とスムーズな手続きにつながります。
- iPhoneのパスワードが解除できなくなってしまう
- パソコンのパスワードが解除できなくなってしまう
iPhoneのパスワードが解除できなくなってしまう
iPhoneのパスワードロック解除にはPINコードや顔認証・指紋認証が必要な場合があります。
また他の端末とは違い、iPhoneのパスワードは10回間違えてしまうとスマホ内のデータが初期化されてしまう機能が標準搭載されています。
ログインを試みて手あたり次第にパスワードを入力してしまい、スマホ内にアクセスできなくなってしまったというトラブルが多発しています。
パスワードのロック解除は専門業者でなければ難しい作業ですので、やみくもに対処するのではなく専門業者に依頼しましょう。
パソコンのパスワードが解除できなくなってしまう
一般的なWindows/MacOSのパソコンのパスワードは、iPhoneと違い何度か試してもデータが初期化される機能は搭載されていません。
しかし、パスワードを推測して解除するのは難易度が高く、パスワードのメモなどがない場合、解除するためには専門業者に依頼したほうがより高い確率で解除に至る可能性があがります。
「データがどうしても必要」「今すぐに写真や文書などのデータを取り出したい」という方はパスワードの解除を専門業者に依頼することをおすすめします。
デジタル遺品にまつわるトラブル
デジタル遺品に関連する代表的なトラブルは以下の3種類です。
- データにまつわるトラブル
- 契約に関するトラブル
- 相続に関するトラブル
データにまつわるトラブル
パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器には友人・会社・家族・取引先の連絡先をはじめ、家族写真など膨大な個人情報が保存されてます。
そのため遺族が故人の端末をそのまま廃棄・売却したり、第三者に譲渡すると以下のリスクが発生します。
- 思い出の写真や動画が消えてしまう
- 訃報を伝える関係者の連絡先が分からなくなる
- 個人情報が流出して第三者に悪用される
特に、若年層のデジタル遺品はスマートフォンなどの携帯機器が中心で、そこにしか故人の情報が残っていないということも多く、不用意なパスワード入力や無理な復元作業により、大切な写真や重要データが消失してしまう可能性もあるためより一層扱いに関して注意が必要です。
また、放置されたアカウントが不正アクセスを受け、個人情報が流出・悪用されることもあります。早期に専門家に相談し、安全な手順でアクセスを試みることが重要です。
契約に関するトラブル
有料サイトや課金アプリ(サブスクリプションサービス)の契約は自動更新が多く、故人が生前に解約していなければ、没後も契約が継続され、銀行口座から金銭が引き落とされ続けてしまいます。
一般的には、故人のクレジットカードを止めたり、引き落とし先の銀行口座を凍結することで、故人の利用していたサービスを把握せずとも自動引き落としを防ぐことが出来ます。
しかし、この手段にはリスクがあり、故人が生前利用していたサービスの自動引き落としを一律で停止すると、サービスによっては一定期間後にクラウドストレージなどに遺されたオンラインデータ(デジタル遺品)が勝手に削除されてしまう恐れもあるため、注意が必要です。
相続に関するトラブル
遺産相続や事業承継に必要な資料は多岐にわたり、電子データとして一元管理される事も目立ってきています。またネット銀行や仮想通貨、電子マネーなどの取引には厳重なセキュリティがかかっているほか、紙資料が全く残っていないというケースも想定できます。特に2024年時点でネット銀行の口座数は1位の楽天銀行だけでも約1,500万口存在しています。このようなネット銀行やネット証券会社のアカウントに相続人本人がアクセスできない場合、故人の資産が把握できず、相続手続が困難になることが予想されます。また、故人がオンラインに遺した「デジタル遺産」の存在を知らないまま遺産分割を行うことで、後になって遺族同士で相続紛争に発展する可能性があります。
特に注意しておきたいのが、遺族のあずかり知らないところで故人が「FX(外国為替証拠金取引)」や「先物」など、高リスクの取引を行っていたケースです。こうした事実を遺族が関知しないままでいると、損失が際限なく膨らみ続け、気づかないまま相続したことで莫大な借金や負債を背負う恐れがあります。
ネット銀行の口座数2024
画像出典:Marketing DataBase
このようなオンライン上の資産の存在を知るために、端末のパスワードが不明な場合はパスワード解除業者に一度相談しましょう。専門的なツールを利用して対応いたします。
デジタル遺品を整理する際に注意すべき点
デジタル遺品を整理する際、以下の3点に注意して作業しましょう。
- 遺族で話し合う前に整理しない
- 遺品整理でそのまま破棄・売却・譲渡しない
- むやみにパスワードを打ち込まない
遺族で話し合う前に整理しない
デジタル機器やアカウントに含まれる情報は、単なる個人の記録だけでなく、相続財産としての価値を持つ場合があります。相続においては、遺産分割協議(法定相続人全員による話し合い)を経て初めて、各相続人の取り分が決定します。それまでは故人の遺産は法定相続人全員の「共有財産」とされます。そのため、遺族間での話し合いを行わずに一部の人が勝手にデジタル遺品を整理・閲覧・削除・譲渡してしまうと、財産隠しや勝手な相続といったトラブルの原因になります。法律上の権利関係を理解し、慎重に対応することが大切です。
遺品整理でそのまま破棄・売却・譲渡しない
デジタル遺品のロックが解除できないからといって、機器をそのまま遺品整理業者やリサイクルショップ、知人など第三者に譲渡・売却するのは推奨できません。
デジタル機器の内部にはメールアドレスやカード情報など、あらゆる個人情報が保存されています。そのため、機器をそのまま破棄・売却・譲渡すると、「故人の大切な記録が消失する」「本来は現金化できるはずのデジタル資産を受け取れない」「個人情報を悪用される」「サブスクリプションサービスの引き落としが続く」などのトラブルに発展してしまう可能性があります。
むやみにパスワードを打ち込まない
解除を試みて何度もパスワードを誤入力すると、スマホやPCがロックされたり、初期化されたりするリスクがあります。結果として、大切なデータが永久に失われる危険性もあるため、パスワードが不明な場合は無理に操作するのではなく、パスワードが書かれたメモなどを探したり、専門のパスワード解除業者への相談して解除しましょう。安易なパスワード入力はデータ消失の原因となりかねません。
デジタル遺品整理の方法
デジタル遺品を整理する方法は、以下の3点を参考にしてください。
- 遺族で相談して決定する
- 金銭取引に関する整理は口座凍結してから割り振りを決める
- ロック解除できない場合はデジタル遺品業者に依頼する
遺族で相談して決定する
デジタル遺品の整理は、故人の遺志に則った対応を取るべきですが、突然死などで故人の遺言が存在しない場合、遺族の判断に委ねられます。
なお、デジタル遺品には、分類上「ネット証券などデジタル遺産(現金化できるもの)」と「思い出や趣味の写真(現金化できないもの)」があります。前者は民法上「相続財産」の対象ですが、後者は第三者に売却したり譲渡することが困難であるため、故人の遺志や生前の人格を尊重して、データを継承するかどうかを話し合う必要があります。
金銭取引に関する整理は口座凍結してから割り振りを決める
故人がネットバンキングなどに遺した資産は「デジタル遺産」として遺族が受け取れます。故人の没後、すぐに各窓口に連絡を取って口座を凍結し、法定相続人全員で話し合って財産分与の割り振りを検討しましょう。
ただし、故人の負債額が大きすぎる場合は、遺産を放棄することも考えるべきといえます。
ロック解除できない場合はデジタル遺品業者に依頼する
ロックがかかった機器からデータを取り出そうとすると解除が不可能になったり、データが消えてしまうことがあります。
ロック解除は個人で行わず、デジタル遺品整理の専門業者に対応を依頼しましょう。技術力の高い専門業者だとエンジニアが最先端の技術を駆使してデジタル遺品の解析を行うことで、自分で解決を試みるよりも安全かつ高確率でロック解除とデータの取り出しを行うことが可能です。
デジタル遺品整理でおすすめの専門業者
技術力のあるデジタル遺品整理業者の選定といっても、数ある業者の中から信頼できる業者を判断するのは難しい話です。
そこで、30社以上の会社から以下のポイントで厳選した編集部おすすめの調査会社を紹介します。
信頼できるデジタル遺品整理に対応している調査会社を選ぶポイント
- 官公庁・捜査機関・大手法人の依頼実績がある
- 緊急時のスピード対応が可能
- セキュリティ体制が整っている
- 法的証拠となる調査報告書を発行できる
- データ復旧作業に対応している
- 費用形態が明確である
上記のポイントから厳選したおすすめのフォレンジック調査会社は、デジタルデータフォレンジックです。
デジタルデータフォレンジック
公式サイトデジタルデータフォレンジック
デジタルデータフォレンジックは、累計3万9千件以上の豊富な相談実績を持ち、全国各地の警察・捜査機関からの相談実績も395件以上ある国内有数のフォレンジック調査サービスです。
一般的なフォレンジック調査会社と比較して対応範囲が幅広く、法人のサイバー攻撃被害調査や社内不正調査に加えて、個人のハッキング調査・パスワード解析まで受け付けています。24時間365日の相談窓口があり、最短30分で無料のWeb打合せ可能とスピーディーに対応してくれるので、緊急時でも安心です。
運営元であるデジタルデータソリューション株式会社では14年連続国内売上No.1のデータ復旧サービスも展開しており、万が一必要なデータが暗号化・削除されている場合でも、高い技術力で復元できるという強みを持っています。調査・解析・復旧技術の高さから、何度もテレビや新聞などのメディアに取り上げられている優良企業です。
相談から見積りまで無料で対応してくれるので、フォレンジック調査の依頼が初めてという方もまずは気軽に相談してみることをおすすめします。
費用 | ★相談・見積り無料 まずはご相談をおすすめします |
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調査対象 | デジタル機器全般:PC/スマートフォン/サーバ/外付けHDD/USBメモリ/SDカード/タブレット 等 |
サービス | ●サイバーインシデント調査: マルウェア・ランサムウェア感染調査、サイバー攻撃調査、情報漏洩調査、ハッキング調査、不正アクセス(Webサイト改ざん)調査、サポート詐欺被害調査、Emotet感染調査 ●社内不正調査: 退職者の不正調査、情報持ち出し調査、横領・着服調査、労働問題調査、文書・データ改ざん調査、証拠データ復元 ●その他のサービス: パスワード解除、デジタル遺品調査、セキュリティ診断、ペネトレーションテスト(侵入テスト)、OSINT調査(ダークウェブ調査) 等 ※法人・個人問わず対応可能 |
特長 | ✔官公庁・法人・捜査機関への協力を含む、累計39,000件以上の相談実績 ✔企業で発生しうるサイバーインシデント・人的インシデントの両方に対応 ✔国際標準規格ISO27001/Pマークを取得した万全なセキュリティ体制 ✔経済産業省策定の情報セキュリティサービス基準適合サービスリストに掲載 ✔警視庁からの表彰など豊富な実績 ✔14年連続国内売上No.1のデータ復旧サービス(※)を保有する企業が調査 ※第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく。(2007年~2020年) |
基本情報 | 運営会社:デジタルデータソリューション株式会社 所在地:東京都港区六本木6丁目10-1 六本木ヒルズ森タワー15階 |
受付時間 | 24時間365日 年中無休で営業(土日・祝日も対応可) ★最短30分でWeb打合せ(無料) |
デジタル遺品の生前対策
亡くなってからデジタル遺品の対処をするのではなく、生前にデジタル遺品の相続対策を行っておくことでパスワード解除の手間を省くことができます。
パスワードを自分だけで管理するのではなく、家族や信頼できる人物と共有しておくことによって、デジタル遺品のトラブルは回避できます。
特に各アカウントのパスワードをメモなどの紙媒体に記載しておくことで、
法人の方の場合は経営者のパソコンやスマホのパスワード、引継ぎが必要なデータなどを社内で共有しておくと会社の引継ぎなどの問題にも対応できるでしょう。
しかしパスワードの共有は簡易的な対策ですので、引継ぎが必要な情報をオンライン上だけでなく、紙媒体などで管理しておくことも一つの方法です。
パスワードを生前から知られたくない場合は?
パスワードを生前から共有したくないという方が多い結果、デジタル遺品の問題は後を絶えません。
その場合にはエンディングノートやメモ用紙などにパスワードを記載しておく、遺言状などにパスワードを記載しておくなどの対応が有効と思われます。
メモ用紙などの場合、財布や通帳といった亡くなった際に初めて他人に確認される場所と一緒に保管しておくと、生前に知られることはないでしょう。
まとめ
今回はデジタル遺品の対応方法について解説しました。
遺族は故人のデジタル遺品を整理する際、オフラインとオンラインの両軸で行う必要があります。
また口座やサービスの解約、相続手続、パスロック解除などの作業は非常に煩雑であるため、遺族に負担がかかりがちです。こうした問題は遺族だけで解決しようとするのでなく、専門業者に対応や協力を依頼することも検討すると良いでしょう。