パソコンやスマートフォンが当たり前のように使われる現代では、故人が残した写真や文書、SNSやネット銀行などのアカウントも「遺品」として扱われるようになっています。
これらは「デジタル遺品」と呼ばれ、時に相続やプライバシー、セキュリティに関わる重要な情報を含んでいます。
整理されていないまま放置されると、情報流出や資産の喪失につながる恐れがあり、遺族がトラブルに巻き込まれることもあります。
そこで本記事では、デジタル遺品の基本的な考え方から、分類・整理のポイント、トラブル事例と対処法までを、初めての方でもわかりやすく解説します。
目次
デジタル遺品とは何か?
デジタル遺品とは、故人が生前に使用していたスマートフォンやパソコンなどの電子機器、またはインターネット上に残したアカウントやデータを指します。
例えば、次のような情報が該当します。
- スマホやパソコンに保存された写真・動画・メモ・連絡先
- メールアカウント、SNSアカウント(LINE, X, Facebookなど)
- ネット銀行、証券口座、暗号資産、ポイントサービス
- Amazon・楽天などの通販アカウント
- クラウドストレージ(Google Drive, iCloudなど)
- サブスクリプションサービス(Netflix、Amazon、Spotify等)
これらのデータは、見た目には残っておらず、「どこに何があるか」を家族が把握するのは非常に困難です。情報の所在が分からなければ、重要な資産にアクセスできない、SNSアカウントが放置される、といった事態に発展します。
一般的にデジタル遺品は次の2つに分類されます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| オフラインデータ | スマートフォンやパソコン、外付けHDDなどの手元の機器に保存されたデータ。写真・動画・文書ファイル・連絡先など。 |
| オンラインデータ | ネット上に分散されて保存された無形のデータ。SNS、クラウド、メール、ネットバンキング、電子マネー、仮想通貨、サブスクリプション、ブログ、YouTubeなどのアカウントや取引履歴。 |
これらのデータには、金銭的な価値を持つ「デジタル遺産」も含まれます。たとえば、ネット銀行の預金や暗号資産(仮想通貨)、株式口座などです。
こうした資産情報を適切に引き継げないと、相続されないまま時効を迎える可能性もあるため、早めの備えが重要です。
デジタル遺品が抱えるリスクと課題
近年では60代・70代でもスマートフォンやオンラインサービスを日常的に使う人が増えており、ほとんどの人が何らかの「デジタル遺品」を持っているといえます。
デジタル遺品の整理が遅れると、次のようなリスクにつながる恐れがあります。
契約の放置による金銭的損失
サブスクリプション、クラウド契約、会員費などは、解約しなければ毎月料金が引き落とされ続けます。
クレジットカードが紐づいたまま放置されると、資産が減っていく可能性があります。
相続できない金融資産
ネット銀行や証券口座、仮想通貨は、紙の証明書が存在しないことが多く、気づかれないまま時効を迎える恐れがあります。
2024年現在、楽天銀行だけでも1,500万口座以上が存在しており、誰もが該当する可能性があります。
個人情報・データの流出
放置されたアカウントが乗っ取られたり、誤ってスマホを処分した結果、写真・連絡先・取引情報が第三者の手に渡るリスクもあります。
このような事態を防ぐためには、生前にどんなサービスを利用していたか、パスワードはどこに保管されているかなどを整理しておく「デジタル終活」が重要です。
すでに相続した端末やアカウントの中身が分からず困っている場合は、無理に操作せず、専門業者に相談することも検討しましょう。
デジタル遺品を生前に整理しておくべき理由
デジタル遺品は形がないため、遺族が存在に気づきにくく、整理や相続の際にトラブルが起きやすい特徴があります。
特にパスワードの未共有や利用サービスの把握漏れにより、次のような問題が発生することがあります。
- 資産の存在に気づかず、相続の期限を逃してしまう
- サブスクやネット銀行の引き落としが継続して資産が失われる
- SNSアカウントが乗っ取られて悪用される
- パソコンやスマホを処分した結果、写真や情報が流出する
このようなリスクを避けるには、生前に次のような「デジタル終活」を行っておくことが有効です。
- 利用中のサービスやアカウントの一覧を記録する
- ID・パスワードを安全な場所に保管する
- 不要なアカウントは削除しておく
- 引き継ぐべき情報は、遺言やエンディングノートに明示する
専門業者に依頼すべきケースとは
デジタル遺品の整理やアクセスは、自分たちで行える範囲もありますが、一定のケースでは専門業者のサポートが不可欠です。
無理に対応しようとすると、かえってデータが消えてしまったり、証拠性を損なう恐れもあるため注意が必要です。
以下のような状況に該当する場合は、初期対応を誤る前にプロへ相談することをおすすめします。
ロック解除ができない端末がある
iPhoneやAndroidスマホ、Windows/Macなど、パスワードロックされた端末は、間違った方法で解除を試みると初期化されて中身が完全消失することがあります。
特にiPhoneは10回以上誤入力すると自動初期化が実行されるため、パスワードが不明な場合は自己流の解除は厳禁です。
アクセスできないアカウントがある
LINEやGmail、クラウド、ネット銀行などにログインできない場合、正規ルートでの本人確認や手続きが必要です。
しかし、本人がすでに故人である以上、家族だけでは対応が難しいことも多いのが実情です。
専門業者は、必要に応じて証明書の準備やID復元のための法的根拠を整えるサポートも行っており、スムーズな引き継ぎと解約を実現できます。
相続・法的手続きで証拠が必要な場合
遺産分割や不正取引の調査、仮想通貨・証券の存在確認など、相続に関わる事実証明が必要な場合には、フォレンジック技術(=証拠保全調査)の活用が有効です。
特にデジタル資産の金額や取引履歴は、画面キャプチャだけで証拠として不十分なこともあります。調査報告書を公的書類として提出できる業者であれば、弁護士や司法書士と連携した対応も可能です。
デジタル遺品整理でおすすめの専門業者
技術力のあるデジタル遺品整理業者の選定といっても、数ある業者の中から信頼できる業者を判断するのは難しい話です。
そこで、30社以上の会社から以下のポイントで厳選した編集部おすすめの調査会社を紹介します。
信頼できるデジタル遺品整理に対応している調査会社を選ぶポイント
- 官公庁・捜査機関・大手法人の依頼実績がある
- 緊急時のスピード対応が可能
- セキュリティ体制が整っている
- 法的証拠となる調査報告書を発行できる
- データ復旧作業に対応している
- 費用形態が明確である
上記のポイントから厳選したおすすめのフォレンジック調査会社は、デジタルデータフォレンジックです。
デジタルデータフォレンジック
公式サイトデジタルデータフォレンジック
デジタルデータフォレンジックは、累計3万9千件以上の豊富な相談実績を持ち、全国各地の警察・捜査機関からの相談実績も395件以上ある国内有数のフォレンジック調査サービスです。
一般的なフォレンジック調査会社と比較して対応範囲が幅広く、法人のサイバー攻撃被害調査や社内不正調査に加えて、個人のハッキング調査・パスワード解析まで受け付けています。24時間365日の相談窓口があり、最短30分で無料のWeb打合せ可能とスピーディーに対応してくれるので、緊急時でも安心です。
運営元であるデジタルデータソリューション株式会社では14年連続国内売上No.1のデータ復旧サービスも展開しており、万が一必要なデータが暗号化・削除されている場合でも、高い技術力で復元できるという強みを持っています。調査・解析・復旧技術の高さから、何度もテレビや新聞などのメディアに取り上げられている優良企業です。
相談から見積りまで無料で対応してくれるので、フォレンジック調査の依頼が初めてという方もまずは気軽に相談してみることをおすすめします。
| 費用 | ★相談・見積り無料 まずはご相談をおすすめします |
|---|---|
| 調査対象 | デジタル機器全般:PC/スマートフォン/サーバ/外付けHDD/USBメモリ/SDカード/タブレット 等 |
| サービス | ●サイバーインシデント調査: マルウェア・ランサムウェア感染調査、サイバー攻撃調査、情報漏洩調査、ハッキング調査、不正アクセス(Webサイト改ざん)調査、サポート詐欺被害調査、Emotet感染調査 ●社内不正調査: 退職者の不正調査、情報持ち出し調査、横領・着服調査、労働問題調査、文書・データ改ざん調査、証拠データ復元 ●その他のサービス: パスワード解除、デジタル遺品調査、セキュリティ診断、ペネトレーションテスト(侵入テスト)、OSINT調査(ダークウェブ調査) 等 ※法人・個人問わず対応可能 |
| 特長 | ✔官公庁・法人・捜査機関への協力を含む、累計39,000件以上の相談実績 ✔企業で発生しうるサイバーインシデント・人的インシデントの両方に対応 ✔国際標準規格ISO27001/Pマークを取得した万全なセキュリティ体制 ✔経済産業省策定の情報セキュリティサービス基準適合サービスリストに掲載 ✔警視庁からの表彰など豊富な実績 ✔14年連続国内売上No.1のデータ復旧サービス(※)を保有する企業が調査 ※第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく。(2007年~2020年) |
| 基本情報 | 運営会社:デジタルデータソリューション株式会社 所在地:東京都港区六本木6丁目10-1 六本木ヒルズ森タワー15階 |
| 受付時間 | 24時間365日 年中無休で営業(土日・祝日も対応可) ★最短30分でWeb打合せ(無料) |
デジタル遺品を整理する方法
デジタル遺品を安全かつスムーズに整理するには、「生前にできる準備」と「死後に遺族が取るべき対応」を切り分けて考えることが大切です。
生前にやるべきこと(デジタル終活)
- 利用中のサービス・端末をリスト化
- 残したい/削除したいものを区別
- ID・パスワードのヒントや保管場所を明記
- エンディングノートやメモを家族と共有
死後に家族が行うべき対応
- スマホ・PCを勝手に初期化せず保管
- アカウントの通知やメールから契約を洗い出す
- ネット銀行や証券口座は相続対応が必要
- パスワードが不明な場合は専門業者に相談
生前の整理と死後の対応を分けて考えることで、遺族の負担を大きく減らすことができます。どちらも早めの準備と正しい対処が鍵となります。
デジタル遺品を整理する際に注意すべき点
デジタル遺品の整理は、個人情報や資産の管理が関わるため、慎重に進める必要があります。以下の3点に特に注意しておきましょう。
遺族で話し合う前に整理しない
デジタル遺品の中には、資産的価値を持つ情報が含まれている場合があります。相続においては、法定相続人全員での「遺産分割協議」を経て、財産の取り分が確定します。
この手続きを踏まずに一部の人が機器を勝手に操作・処分してしまうと、財産隠しや相続トラブルの原因になる可能性があります。まずは話し合いの場を設け、法的な手続きと並行して整理を進めるようにしましょう。
そのまま破棄・売却・譲渡しない
パスワードが解除できないからといって、スマホやパソコンなどの機器をそのまま廃棄・売却・譲渡するのは避けるべきです。内部にはメール、カード情報、連絡先、写真などの個人情報が多く残されており、次のようなリスクがあります。
- 故人の大切な記録が消失する恐れ
- 金銭的価値のあるデータを失う恐れ
- 個人情報が第三者に悪用される恐れ
中身が確認できない機器こそ、勝手に処分せず慎重に扱うべきです。
むやみにパスワードを入力しない
スマホやPCのロック解除を試みてパスワードを何度も間違えると、データの初期化や完全ロックが発動されることがあります。特にiPhoneは10回以上の誤入力で自動初期化される仕様があり、データが完全に消失する危険性があります。
パスワードが不明な場合は、無理に入力を繰り返さず、次のような手順を検討しましょう。
- メモや手帳にパスワードの記録がないか確認する
- 他の家族がパスワードを知っていないか確認する
- 専門のパスワード解除業者へ相談する
デジタル遺品の代表的なトラブル3選
実際に寄せられる相談や報道の中でも、特に多いトラブルを3つピックアップして紹介します。
契約や課金サービスの自動更新
動画配信サービスや有料クラウドなどは、亡くなった後も契約が継続される仕組みになっていることが多く、カードが使えなくなるまで料金が引き落とされ続けます。
データ消失(初期化・削除)
スマホやPCを不用意に初期化したり、削除してしまうと、大切な写真・連絡先・契約情報が復旧できなくなります。
相続を巡る家族間トラブル
故人が保有していたネット銀行口座・仮想通貨の存在を知らず、相続手続きができなかったり、認識の違いから遺族同士の対立に発展するケースもあります。
デジタル遺品の生前対策
デジタル遺品にまつわるトラブルの多くは、「亡くなったあとに情報へアクセスできないこと」が原因です。こうした問題は、生前に適切な準備をしておくことで大きく減らすことができます。
準備のポイントは「何を」「どこまで」「どう保管するか」を決めて、家族が対応しやすい形で情報を残すことです。パスワードやアカウント情報は一人で抱え込まず、信頼できる家族と共有するか、アクセス方法を明確にしておきましょう。
利用サービスの洗い出し
まずは、自分が使っている端末やネットサービスをすべてリストアップしましょう。スマホやパソコン、ネット銀行、証券口座、クレジットカード、SNS、クラウド、メール、サブスクリプションなどを思いつく限り書き出すことで、整理のベースが作れます。
残すもの・削除するものの区別
整理したサービスやデータの中から、「家族に引き継いでほしいもの」「生前に削除したいもの」「死後に削除してほしいもの」などを分類しておきましょう。希望はメモやエンディングノートに記載しておくと、遺族の判断材料になります。
管理方法と保管場所の工夫
アカウント情報は、紙のノートやエクセルなど、自分が管理しやすい方法で一覧化しておくのが理想です。記載するのはログインID、登録メールアドレス、サービス名、パスワードの保管場所(またはヒント)などです。
作成した一覧表は、家庭用金庫や鍵付き引き出しに保管するか、クラウドやUSBメモリに暗号化して保存する方法が一般的です。保管場所と開き方だけは家族に伝えるのがポイントです。
パスワードを生前に共有したくない場合の工夫
「生前にパスワードを知られたくない」という方も多くいます。その場合は、メモ用紙やエンディングノートに情報を記載し、財布や通帳などの私物と一緒に保管する方法が効果的です。
亡くなったあとに家族が自然と手に取るものに同封しておけば、生前に情報が漏れることはありません。パスワードそのものを記載するのが不安な場合は、「ヒント」や「保管場所の場所」を残す形でも十分に役立ちます。
パスワードを生前から知られたくない場合は?
パスワードを生前から共有したくないという方が多い結果、デジタル遺品の問題は後を絶えません。
その場合にはエンディングノートやメモ用紙などにパスワードを記載しておく、遺言状などにパスワードを記載しておくなどの対応が有効と思われます。
メモ用紙などの場合、財布や通帳といった亡くなった際に初めて他人に確認される場所と一緒に保管しておくと、生前に知られることはないでしょう。
まとめ
今回はデジタル遺品の対応方法について解説しました。
遺族は故人のデジタル遺品を整理する際、オフラインとオンラインの両軸で行う必要があります。
また口座やサービスの解約、相続手続、パスロック解除などの作業は非常に煩雑であるため、遺族に負担がかかりがちです。
こうした問題は遺族だけで解決しようとするのでなく、専門業者に対応や協力を依頼することも検討すると良いでしょう。




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