INCランサムウェアは、2023年7月になって被害が確認されました。データが暗号化され、拡張子が「.INC」が追加される・身代金を請求されるなどが主な特徴で、INCの亜種ランサムウェアも確認されています。
本記事ではサイバー犯罪に使用されるINCランサムウェアについて解説します。
目次
ランサムウェアとは
ランサムウェアとは、ファイルを暗号化もしくは画面をロックして、データの復号やロックの解除と引き換えに身代金を要求するマルウェアです。ランサムウェアは感染力も強く、一つのデバイスが感染してしまうとネットワークを共有しているドライブやサーバーを通じ、感染が広がってしまいます。
なお、要求された身代金を支払ったとしても、データが復号される保証はありません。反社会的勢力の増長につながる恐れもあるため、身代金は絶対に支払わないようにしてください。
INCランサムウェア(.INC)の特徴
INCランサムウェア(.INC)はユーザーのファイルを暗号化し、金銭目的の脅迫文を表示します。このINCランサムウェアの特徴について詳しく解説します。
暗号されたファイルの拡張子は「.INC」が追加される
INCランサムウェアは、暗号化型マルウェアに属します。INCランサムウェアに暗号化されたファイルの拡張子は「.INC」が追加されます。
例えば、「契約書.pdf」というファイルがINCランサムウェアに暗号化されると「契約書.pdf.INC」となります。
出典PCrisk
「INC-README.txt」という名前のテキストファイルが作成される
INCランサムウェアに感染してデータが暗号化されると、「.INC」という拡張子が追加され、ファイルが暗号化されてしまいます。
その後、デスクトップ上に「INC-README.txt」というファイル名で、72時間以内に攻撃者に連絡を要求したり、攻撃者がシステムを迅速に復旧できるとアピールするという特徴があります。
また、他のランサムウェアと同様に身代金を仮想通貨で支払うよう指示されます。
デスクトップの壁紙が勝手に変更される
INCランサムウェアには亜種が存在しており、INCランサムウェアの亜種に感染すると以下の壁紙に変更されるようです。
INCランサムウェア(.INC)感染時の対処法
INCランサムウェアの感染が疑われる場合の対処法は以下のとおりです。
ネットワークの遮断
INCランサムウェアの感染が疑われる場合、まずはネットワークを遮断しましょう。
ランサムウェアは、感染した端末からネットワークを通じて他の端末に感染を広げる可能性があります。そのため、ランサムウェアの感染が疑われる場合は、まずはネットワークを遮断して被害の拡大を防ぐことが重要です。
メールアドレス・パスワードの変更
メールアドレスやパスワードを変更せず使用し続けるのは危険なため、ランサムウェアの感染が疑われる際は変更しましょう。
ただ、メールアドレスやパスワードの変更を行う際は、ランサムウェアに感染していない端末で行ってください。既に感染した端末で変更すると、変更した情報が詐取され、再び悪用される恐れがあります。
データの復旧
INCランサムウェアに感染した場合、暗号化されたデータの復旧が必要となります。事前にバックアップを取っている場合は、サーバーの初期化を行った後、バックアップからデータの復元を試しましょう。
また、データ復号ソフトを使用することで、暗号化されたデータを復旧できる可能性があります。ただし、ソフトのインストールの際に必要なデータを上書きする可能性がある上、復旧できるデータが限られるなど、データ消失のリスクもあることを留意しておきましょう。
データの暗号化については以下の記事をご覧ください。
フォレンジック調査を行う
フォレンジック調査は、ランサムウェア感染時に有効に働きます。染経路を特定することで、同様の攻撃を防ぐための対策が講じられる点、具体的な手法やフィッシングメールの解析を通じて、侵入経路を把握し脆弱性を明らかにできる点において有効です。また、被害範囲を評価し、影響を受けたファイルやシステムを詳細に把握することで、データ復旧やシステム修復の計画を立てることが可能です。
INCランサムウェア(.INC)の感染経路
ランサムウェアに感染した際は、感染経路を把握して再発防止に努める必要があります。以下に考えうる感染経路を紹介します。
フィッシングメール
フィッシングメールは、INCランサムウェアの主要な感染経路の一つです。攻撃者は巧妙に作成されたメールを送信し、受信者が添付ファイルを開いたり、リンクをクリックしたりするよう誘導します。これにより、ランサムウェアがダウンロードされ、システムに侵入します。
メールは、偽の請求書、セキュリティ警告、または信頼できる送信元を装ったものが多く、受信者が疑うことなく操作することを狙っています。
出典PCrisk
マルバタイジング
マルバタイジングとは、悪意のある広告を通じてマルウェアを拡散する手法です。攻撃者は信頼できないウェブサイトや広告ネットワークを利用し、ユーザーがこれらの広告をクリックするとランサムウェアがダウンロードされます。
これにより、ユーザーのシステムが感染します。正規のウェブサイトに表示されることもあり、ユーザーが疑うことなくクリックするため、危険です。
トレントサイト
トレントサイトは、海賊版ソフトウェアやファイルをダウンロードする際にランサムウェアが含まれていることがあります。ユーザーがこれらのファイルをダウンロードして実行すると、システムに感染が広がります。
攻撃者は人気のあるソフトウェアや映画、音楽ファイルにランサムウェアを埋め込み、広範なユーザー層を狙います。違法ダウンロードが主な感染経路となります。
リモートデスクトッププロトコルの悪用
リモートデスクトッププロトコル が悪用されて感染することがあります。RDPセッションを乗っ取った攻撃者は、システム内で権限を行使しランサムウェアをインストールします。容易に乗っ取られないようにパスワードを推測されずらい文字列にしておく必要があります。
感染経路をフォレンジック調査によって明らかにする
再発防止のためにも感染経路の特定はしておく必要がありますが、、個人で感染経路や被害状況を完ぺきに調査することは難しいとされています。なぜならランサムウェア感染の調査には、ネットワークに関する知識はもちろん、膨大な量のログやデータを分析する必要があり、調査に時間と労力が必要になるからです。
そこで有効なのが「フォレンジック調査」です。フォレンジック調査とは、デジタル機器に残された記録やデータの保全、調査、分析を行う技術であり、ランサムウェアの感染経路調査に適しています。これによって個人では対応できない領域まで調査することができます。ランサムウェア感染時は、フォレンジック調査の専門業者に相談しましょう。
ランサムウェアに感染経路や対処法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
おすすめのフォレンジック調査会社
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INCランサムウェア(.INC)の感染対策方法
INCランサムウェアに感染しないための対策方法について解説します。
データをバックアップする
データのバックアップは定期的にとりましょう。また、デバイスと接続のない外部の媒体に保存することがベストです。
オフラインのメディア、もしくはクラウドにバックアップをとることによって、万が一ランサムウェアの被害に遭遇した場合でも、ネットワークを通じての感染を防止し、データが暗号化されるリスクを防ぎます。
不審なメールや添付ファイル・URLは開かない
INCランサムウェアの主な感染経路はメールによるものです。不審な添付ファイルを安易に開かないようにしましょう。
また、INCランサムウェア以外でも、ランサムウェアの感染の多くは、不審なメールに添付されたファイルやURLをクリックしてしまうことが原因であるため、注意しましょう。
ランサムウェア対策ソフトを導入すること
ウイルス対策ソフトを予め導入しておくことで、ランサムウェアへの感染被害を抑えることができます。
ソフトを選ぶ際には、名の知れた開発者が作成している権限のあるものを選ぶようにするなど、信頼のおけるものを使用しましょう。ソフトには無料のものから有料のものまであり、多くの開発者が存在します。中には、マルウェアが仕組まれた悪質なソフトが出回っています。悪質なソフトを使用してしまった場合、データを復元するどころか、ソフトが原因でマルウェアに感染してしまうケースもありますので、注意しましょう。
感染が疑われる際に留意すべきこと
感染が疑われる場合に留意することについて解説します。
身代金の支払いには応じない
身代金を支払ったとしてもデータが元通りになる保証はありません。それだけでなく、身代金の支払いによって、犯罪に加担してしまう場合もあります。
サイバー攻撃者が提供してくるプログラムをダウンロードしない
暗号化を解くためにサイバー攻撃者が復号ツールを提供してくる場合がありますが、ダウンロードしないでください。データの復号どころか、新たにマルウェアに感染させるなど、さらに状況が悪化してしまうリスクがあります。
直ちに感染デバイスをインターネットから切り離す
ランサムウェアへの感染の疑いが発覚したら、直ちにそのデバイスのネットワーク接続を切りましょう。
ランサムウェアはネットワークを通じて他のデバイスに感染するという特徴があるため、ネットワークから切り離すことによって感染拡大の可能性を防ぐことができます。
メールアドレスやパスワードを変更する
感染が疑われるデバイスで使用していたメールアドレス・パスワードを変更しましょう。ランサムウェアに感染したデバイスで使用していたメールアドレスやパスワードを悪用されて二次災害が起こる可能性を防ぐことができます。
また、メールアドレスやパスワードの変更は、ランサムウェアに感染していない他のデバイスから行うようにしてください。感染したデバイスからメールアドレスやパスワードを変更したとしても、新たなメールアドレスやパスワードの情報が攻撃者に盗まれ、再び悪用されてしまいます。
まとめ
今回は、INCランサムウェアの特徴や対策方法などを解説しました。
ランサムウェアに感染すると個人情報が漏えいしたり、サイバー攻撃の拠点にされます。ランサムウェアに感染しないためにしっかりと対策を講じ、必要に応じて専門業者への相談も検討しましょう。
ウイルス感染調査には「フォレンジック調査」という方法が存在します。フォレンジックとは、スマホやPCなどの電子機器や、ネットワークに記録されているログ情報などを解析・調査することで、社内不正調査やサイバー攻撃被害調査に活用される技術のことです。別名「デジタル鑑識」とも呼ばれ、最高裁や警視庁でも正式な捜査手法として取り入れられています。