
8Baseは、コンピュータ上のファイルを暗号化し、復号キーと引き換えに身代金の支払いを要求する、法人を標的としたマルウェア(ランサムウェア)の一種です。
このランサムウェアは多数の業種を標的としており、その手口は非常に洗練されており、なおかつ悪質なものです。
万が一、感染すると企業にとって深刻な被害をもたらすことがあり、インシデント発生時は適切な対応が求められます。
この記事では、8Baseランサムウェアの特徴を交え、被害に遭った場合、企業が対応すべき確認事項などを解説していきます。ぜひ参考にしてください。
目次
8Baseランサムウェアの概要
8Baseランサムウェアは2022年3月に初めて登場し約1年は活動が目立ちませんでしたが、2023年5月中旬から6月にかけて、活動を急増させたランサムウェアグループです。リークサイトで被害者が多数いると主張している事から、急速に悪名⾼い存在となっています。
VMwareのレポートによると、RansomHouseのリークサイトや身代金要求書の類似性が指摘されています。また、Phobosランサムウェアと同様の暗号化アルゴリズムが使用されており、Phobosランサムウェアファミリーに属しているのではないかとも指摘されています。
出典:PCrisk
ランサムウェアに感染している場合は、フォレンジック調査がおすすめです。以下の記事で、調査ができる会社を一覧にしているので、本記事と併せて参考にしてみてください。
8Baseランサムウェアの特徴
8Baseランサムウェアには主に以下のような特徴があります。
- 二重恐喝でSNSで企業名を公表される
- 2種類のランサムノート「info.hta」と「info.txt」が提供される
- 被害者固有ID+開発者メールアドレス+「.8Base」拡張子が追加される
- 暗号化時にファイルサイズをチェックする
二重恐喝でSNSで企業名を公表される
8Baseランサムウェアはデータを暗号化するだけでなく、盗み出したデータを公開するという脅迫を行い、被害者に対してさらなる圧力をかける手法を取ります。情報の公開に際してSNSで企業名を公表することが特徴として挙げられます。
出典:VMware
2種類のランサムノート「info.hta」と「info.txt」が提供される
8Base ランサムウェアはファイルを暗号化する際に、2 つのランサムノート (「info.hta」と「info.txt」) を提供し、ファイル名を変更します。「info.hta」は、すべてのファイルが暗号化されたこと、身代金を払えば復号化ツールを提供すること、身代金の支払い方法や被害者への警告といった内容が記載されています。「info.txt」は、連絡の要求をするような内容が記載されています。
出典:PCrisk
被害者固有ID+開発者メールアドレス+「.8Base」拡張子が追加される
8Baseランサムウェア は、被害者の ファイル名にID、support@rexsdata.pro というメール アドレス、「.8Base」拡張子をファイル名に追加します。たとえば、「1.jpg」を「1.jpg.id[9ECFA84E-3483].[support@rexsdata.pro].8Base」に、「2.png」を「2.png.id[9ECFA84E-3483].[support@rexsdata.pro].8Base」に、というように名前を変更します。
暗号化時にファイルサイズをチェックする
8Baseランサムウェアは、暗号化の速度を上げるために暗号化を行う際にファイルサイズもチェックしており、ファイルサイズが1.5MB未満のファイルは完全に暗号化を行い、1.5MBを超えるファイルは部分的に暗号化を行っています。攻撃者は、被害者が感染に気付き前にできるだけ多くのファイルを暗号化したいという考えから、このような仕様に設定していると考えられます。
出典:fortinet
8Baseランサムウェアの標的
8Baseランサムウェアは、様々な地域や業界の組織を標的にしています。
8Baseランサムウェアの攻撃対象となった国
8Baseランサムウェアからの攻撃被害に遭った国は米国が一番多く、次いでブラジル・イギリス・カナダ・オーストラリアなどが被害を受けています。
最近になって日本企業の被害事例も報告されており、日本国内でも脅威となってきています。
出典:fortinet
8Baseランサムウェアの攻撃対象となった業界
8Baseランサムウェアは中小企業に対して多くの攻撃を行っています。攻撃被害による影響が一番多かったのはサービス業で、製造業・建設業・小売・士業が続いています。
出典:fortinet
8Baseランサムウェアの感染経路
ランサムウェアに感染した際は、感染経路を把握して再発防止に努める必要があります。以下に考えうる感染経路を紹介します。
フィッシングメール
フィッシングメールは、8Baseランサムウェアの主要な感染経路の一つです。攻撃者は巧妙に作成されたメールを送信し、受信者が添付ファイルを開いたり、リンクをクリックしたりするよう誘導します。これにより、ランサムウェアがダウンロードされ、システムに侵入します。メールは、偽の請求書、セキュリティ警告、または信頼できる送信元を装ったものが多く、受信者が疑うことなく操作することを狙っています。
マルバタイジング
マルバタイジングとは、悪意のある広告を通じてマルウェアを拡散する手法です。攻撃者は信頼できないウェブサイトや広告ネットワークを利用し、ユーザーがこれらの広告をクリックするとランサムウェアがダウンロードされます。これにより、ユーザーのシステムが感染します。正規のウェブサイトに表示されることもあり、ユーザーが疑うことなくクリックするため、危険です。
トレントサイト
トレントサイトは、海賊版ソフトウェアやファイルをダウンロードする際にランサムウェアが含まれていることがあります。ユーザーがこれらのファイルをダウンロードして実行すると、システムに感染が広がります。攻撃者は人気のあるソフトウェアや映画、音楽ファイルにランサムウェアを埋め込み、広範なユーザー層を狙います。違法ダウンロードが主な感染経路となります。
リモートデスクトッププロトコルの悪用
リモートデスクトッププロトコル が悪用されて感染することがあります。RDPセッションを乗っ取った攻撃者は、システム内で権限を行使しランサムウェアをインストールします。容易に乗っ取られないようにパスワードを推測されずらい文字列にしておく必要があります。
感染したUSBデバイス
感染したUSBデバイスを使用することも、ランサムウェアがシステムに侵入する一般的な方法です。攻撃者はUSBメモリや外付けハードディスクにランサムウェアを仕込み、ユーザーがこれらのデバイスを自分のコンピュータに接続すると、ランサムウェアが自動的にインストールされます。この手法は、物理的にデバイスを介して感染を広げるため、特に企業内での感染拡大が懸念されます。
8Baseランサムウェア攻撃で生じる被害や影響
8Baseランサムウェアの攻撃を受けた際に考えられる被害や影響を紹介します。
データ暗号化とアクセス不能
8Baseランサムウェアは、企業の重要なデータを暗号化し、アクセス不能にします。これにより、業務が停止し、生産性が大幅に低下することがあります。特に金融、製造などの業界では、日常業務の継続が困難になる可能性があります。暗号化されたデータの復旧には専門的な技術が必要であり、迅速な対応が求められます。
身代金要求
攻撃者は暗号化されたデータを復号するための鍵を提供する見返りに、被害者から高額な身代金を要求します。要求額は数千ドルから数百万ドルに及ぶことがあり、企業にとって大きな経済的負担となります。さらに、身代金を支払っても必ずしもデータが復旧する保証はなく、支払い後も再度ターゲットにされるリスクがあります。
企業の信用の低下
ランサムウェア攻撃は、企業のブランドイメージや信用に深刻なダメージを与えます。データ漏洩やシステムの脆弱性が公になることで、顧客や取引先からの信頼が失われ、長期的な売上減少や取引先との関係悪化が懸念されます。特に顧客情報が流出した場合、顧客離れが加速し、企業の存続に影響を及ぼすこともあります。8BaseランサムウェアはSNSに漏洩を公開するため影響は避けられないでしょう。
8Baseランサムウェアの被害事例
8Baseランサムウェアによる攻撃は国内でも増加しています。
イセトー
概要
イセトー社は2024年5月26日に複数のサーバー、PCが暗号化されていることを確認し、直ちに全社対策本部を立ち上げ、外部専門家の協力のもと調査を開始しました。
2024年6月18日に8Baseのリークサイトにおいて、同社から窃取されたと思われる情報のダウンロードURLの出現を確認し、同社が外部専門家とともに調査を行った結果、公開された情報は同社サーバーから流出したものであること、また流出した情報の中には一部のお取引先様の顧客の個人情報が含まれていることが判明した。
原因
ランサムウェア感染の原因は、VPNからの不正アクセスであったと公表されています。また、情報が窃取された原因については同社の情報の取り扱い不備により、攻撃者によるデータの窃取を許すこととなったとのことです。
なお、2024年12月現在では流出した個人情報を用いた不正利用などの二次被害は確認されていないと発表されています。
出典:イセトー
8Baseランサムウェア感染時の対処法
8Baseランサムウェアの感染が疑われる場合の対処法は以下のとおりです。
ネットワークの遮断
8Baseランサムウェアの感染が疑われる場合、まずはネットワークを遮断しましょう。
ランサムウェアは、感染した端末からネットワークを通じて他の端末に感染を広げる可能性があります。そのため、ランサムウェアの感染が疑われる場合は、まずはネットワークを遮断して被害の拡大を防ぐことが重要です。
メールアドレス・パスワードの変更
メールアドレスやパスワードを変更せず使用し続けるのは危険なため、ランサムウェアの感染が疑われる際は変更しましょう。
ただ、メールアドレスやパスワードの変更を行う際は、ランサムウェアに感染していない端末で行ってください。既に感染した端末で変更すると、変更した情報が詐取され、再び悪用される恐れがあります。
データの復旧
8Baseランサムウェアに感染した場合、暗号化されたデータの復旧が必要となります。事前にバックアップを取っている場合は、サーバーの初期化を行った後、バックアップからデータの復元を試しましょう。
また、データ復号ソフトを使用することで、暗号化されたデータを復旧できる可能性があります。ただし、ソフトのインストールの際に必要なデータを上書きする可能性がある上、復旧できるデータが限られるなど、データ消失のリスクもあることを留意しておきましょう。
データの暗号化については以下の記事をご覧ください。
フォレンジック調査を行う
フォレンジック調査は、ランサムウェア感染時に有効に働きます。染経路を特定することで、同様の攻撃を防ぐための対策が講じられる点、具体的な手法やフィッシングメールの解析を通じて、侵入経路を把握し脆弱性を明らかにできる点において有効です。また、被害範囲を評価し、影響を受けたファイルやシステムを詳細に把握することで、データ復旧やシステム修復の計画を立てることが可能です。
感染経路をフォレンジック調査によって明らかにする
再発防止のためにも感染経路の特定はしておく必要がありますが、、個人で感染経路や被害状況を完ぺきに調査することは難しいとされています。なぜならランサムウェア感染の調査には、ネットワークに関する知識はもちろん、膨大な量のログやデータを分析する必要があり、調査に時間と労力が必要になるからです。
そこで有効なのが「フォレンジック調査」です。フォレンジック調査とは、デジタル機器に残された記録やデータの保全、調査、分析を行う技術であり、ランサムウェアの感染経路調査に適しています。これによって個人では対応できない領域まで調査することができます。ランサムウェア感染時は、フォレンジック調査の専門業者に相談しましょう。
ランサムウェアに感染経路や対処法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
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まとめ
今回は、8Baseランサムウェアの特徴や対策方法などを解説しました。
ランサムウェアに感染すると個人情報が漏えいしたり、サイバー攻撃の拠点にされたりする恐れがあります。ランサムウェアに感染しないためにしっかりと対策を講じ、必要に応じて専門業者への相談も検討しましょう。
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