
エンドポイントセキュリティは、サイバー攻撃の初動対策として、今や企業の情報セキュリティの中核的存在となっています。
テレワークやクラウド活用が進む2025年、社内ネットワークの境界はあいまいになり、パソコンやスマートフォンなど“端末そのもの”が攻撃の入口になっています。本記事では、「エンドポイントセキュリティとは何か?」を初心者にも分かりやすく解説しつつ、実務に役立つ対策手法やEDR・XDRといった最新の防御技術、導入のポイント、製品選定のコツまでを包括的に紹介します。
目次
エンドポイントセキュリティとは?基本の定義と必要性
エンドポイントセキュリティの定義
エンドポイントセキュリティとは、企業内で使用される端末(PC、ノートPC、スマートフォン、タブレットなど)に対して行う情報セキュリティ対策のことです。ウイルス、マルウェア、ランサムウェア、不正アクセスなどの脅威は、主に「エンドポイント」から侵入します。このため、サーバーやネットワークの防御だけでなく、「端末レベルでの防御」が不可欠になっています。
なぜ今、エンドポイントセキュリティが重要なのか?
主な背景要因 | 説明 |
---|---|
テレワークの普及 | 自宅やカフェなど多様な場所で端末が使われ、攻撃対象が拡大 |
境界防御の限界(ゼロトラスト化) | 境界型セキュリティでは内部侵入を前提とした対策が必要になった |
マルウェアの高度化 | ランサムウェアや標的型攻撃が巧妙化し、従来のウイルス対策だけでは不十分 |
シャドーITの拡大 | 社員の私物スマホや個人端末からの情報漏洩リスクが増加 |
エンドポイントセキュリティの主な対策手法
エンドポイントセキュリティ対策は、多層的に実施することが重要です。以下は代表的な手法です。
① アンチウイルスソフト(AV)
最も基本的な対策。既知のマルウェアやウイルスをリアルタイムで検知・駆除するソリューション。ただし近年では「未知のマルウェア」や「ファイルレス攻撃」などには不十分。
② EDR(Endpoint Detection and Response)
EDRは、エンドポイント上の不審な挙動を検知・記録し、インシデント対応を支援する仕組みです。
- 攻撃の初期段階から兆候を検出
- ログの可視化と分析が可能
- 感染時の隔離や対処をリモートで実施可能
③ MDM(モバイルデバイス管理)
スマホやタブレットなどのモバイル端末を一元管理するツール。紛失時のリモートロック・データ消去なども可能。
④ DLP(Data Loss Prevention)
情報漏洩を防ぐための対策。ファイル送信、USB接続、画面コピーなどの不審なデータの動きを制限・記録します。
⑤ EPP(Endpoint Protection Platform)
アンチウイルス、ファイアウォール、Webフィルタリングなどを統合した包括的なエンドポイント防御プラットフォーム。中小企業にも導入しやすく、比較的低コストで導入可能です。
エンドポイントセキュリティの最新トレンド|EDR、XDRとは?
EDRとは?
Endpoint Detection and Responseの略。エンドポイント上の動作ログや通信記録を収集・分析し、攻撃の兆候や原因を特定、迅速な対応を支援するツールです。特に標的型攻撃や内部不正など、従来のアンチウイルスでは検出困難な攻撃に対処可能。
XDRとは?
Extended Detection and Responseの略で、EDRをさらに拡張し、ネットワーク・クラウド・メールなど複数のセキュリティ領域を統合的に監視・分析する仕組みです。
- SIEMやSOARとの連携が前提
- SOC(セキュリティ運用センター)との連携が容易
- インシデントの全体像を俯瞰できる
中小企業が導入しやすいエンドポイントセキュリティ例
製品名 | 特徴 | 対象規模 |
---|---|---|
ESET PROTECT | 軽量・高精度なウイルス対策、クラウド管理対応 | 小~中規模企業 |
Microsoft Defender for Endpoint | Microsoft 365と統合、EDR・DLP対応 | 中~大企業 |
Sophos Intercept X | AIによるマルウェア検出、EDR・ランサム防御機能付き | 全規模 |
Kaspersky Endpoint Security | 低価格で多機能、アンチウイルス・ファイアウォール搭載 | 中小企業向け |
エンドポイントセキュリティ導入のステップと注意点
導入ステップ
- 自社の端末数と利用環境を把握
- 必要なセキュリティ機能を選定(AVのみかEDR含むか)
- ベンダーとトライアル導入・PoC(概念実証)を実施
- 本番環境に展開し、運用体制を整備
- 定期的なログ分析・ポリシー更新を実施
導入時の注意点
- 社員への教育・説明が不十分だと業務支障が起きやすい
- 導入後の運用監視がされないと「導入しただけ」になる
- 専門知識が不足している場合、MSPやSOCとの連携も検討
まとめ
サイバー攻撃の約8割は端末を狙ったものです。そのため、従来の境界型防御だけでは不十分であり、「端末そのものを守るエンドポイントセキュリティ」がセキュリティ戦略の中核となっています。エンドポイントセキュリティは、「ウイルス対策+監視+教育+管理」の4つを組み合わせた総合的対策です。企業規模を問わず、まずは自社の端末環境を正しく把握し、必要な範囲から段階的に導入を進めることが現実的かつ効果的です。