
企業の信用を一瞬で失墜させる「情報漏洩」。その被害は、個人情報や機密データの流出にとどまらず、顧客離れ・株価下落・行政指導・損害賠償など、多大な経済的損失や社会的信用の喪失にもつながります。本記事では、国内外の最新統計データをもとに情報漏洩の原因をランキング形式で紹介し、企業が取るべき対策や再発防止策についても詳しく解説します。
情報漏洩の主な原因ランキング
以下は、IPA(情報処理推進機構)やJNSA(日本ネットワークセキュリティ協会)の調査をもとにした情報漏洩の原因トップ10です。
順位 | 原因 | 割合(参考:JNSA 2023年) | 主な特徴 |
---|---|---|---|
1位 | 誤送信 (メール・FAXなど) |
約25% | メールの宛先ミス、添付ファイル間違いなどヒューマンエラーが最多 |
2位 | 紛失・置き忘れ (USB・PC・書類) |
約20% | 外出時や在宅勤務中のUSB紛失、ノートPCの電車内置き忘れなど |
3位 | 不正アクセス | 約15% | サーバーやクラウドサービスへのハッキング、パスワードリスト攻撃など |
4位 | 内部不正 (従業員による漏洩) |
約12% | 不満を持った社員による情報持ち出し、退職後のデータ流用など |
5位 | マルウェア感染 | 約10% | ランサムウェアやスパイウェアによるファイル盗取・暗号化 |
6位 | 設定ミス (クラウド、サーバー等) |
約6% | アクセス制御設定ミスで第三者からデータが閲覧可能に |
7位 | 紙媒体の情報漏洩 | 約4% | ゴミ箱からの書類回収、誤配布などアナログ経由の情報漏洩 |
8位 | パスワードの管理不備 | 約3% | パスワードの使い回し、メモ書き、弱いパスワードなど |
9位 | 委託先からの漏洩 | 約2% | アウトソーシング先や協力会社からの情報流出 |
10位 | システム障害・バグによる流出 | 約1% | アプリの不具合、開発時のデバッグミスなどが原因 |
上位原因の詳しい解説と事例紹介
【1位】誤送信:最も多い“うっかり”による漏洩
主な原因例:
- メールのTo/Cc間違いで全社員に個人情報を誤送信
- 添付ファイルのバージョンミス
- FAX番号の打ち間違い
対策:
- メール送信前のダブルチェック機能の導入
- 添付ファイル自動暗号化システムの活用
- DLP(情報漏洩防止)ツールの導入
【2位】紛失・置き忘れ:テレワークの普及でリスク増大
事例:
- 在宅勤務中にUSBを持ち出し、そのままカフェに置き忘れ
- 営業職員が顧客リストを保存したPCをタクシーに忘れる
対策:
- モバイルデバイス管理(MDM)やリモートワイプ機能の導入
- USBメモリ使用の制限とログ管理
- 社内データのクラウド集中管理
【3位】不正アクセス:高度化するサイバー攻撃
手口の一例:
- パスワードリスト攻撃
- VPN脆弱性の悪用
- フィッシングメールからの認証情報搾取
対策:
- 多要素認証(MFA)の導入
- 定期的なパスワード変更とアクセス権限の見直し
- IDS/IPSやWAFによる防御の強化
情報漏洩の主な原因と関係構造
企業が取るべき情報漏洩対策まとめ
技術的対策
- DLP(情報漏洩防止システム)
- エンドポイント管理(EPP・EDR・MDM)
- 暗号化(ファイル/通信)
組織的対策
- セキュリティポリシーの整備
- 操作ログの記録と監査
- 権限管理の最小化(ゼロトラスト)
人的対策
- 定期的な情報セキュリティ研修
- 内部通報制度(ホットライン)整備
- メール送信前のルール徹底(例:2人チェック制)
まとめ
情報漏洩の原因は「高度なハッキング攻撃」だけではなく、日常的なヒューマンエラーや基本的な対策不足が大半を占めています。企業に求められるのは、「人・技術・組織」の三位一体でのセキュリティ体制の整備です。リスクを正しく理解し、自社に合った現実的かつ段階的な対策を導入していくことが、信頼される企業づくりの第一歩となるでしょう。