情報資産管理台帳は、企業が保有する情報資産を整理し、一元管理するための重要なツールです。
これにより、情報資産の可視化、リスク管理、セキュリティ対策の優先順位付けが可能になります。
本記事では、情報資産管理台帳のサンプルフォーマットを提示し、その作成方法や運用のポイントを詳しく解説します。
情報資産管理台帳とは?
情報資産管理台帳は、企業が保有する「情報資産」をリスト化し、それぞれの資産に対する管理状況、
リスク評価、保護措置を記録したものです。
この台帳を活用することで、情報資産の全体像を把握し、効率的なセキュリティ管理が実現します。
主な目的
- 情報資産の可視化:保有している情報資産を明確化し、管理漏れを防ぐ
- リスクの一元管理:リスクレベルを評価し、重要性に応じた対策を講じる
- 法規制への対応:ISO 27001や個人情報保護法など、関連する規制や標準に準拠
- セキュリティ対策の優先順位付け:重要度が高い資産を優先して保護
情報資産管理台帳のサンプル
以下に情報資産管理台帳のサンプルフォーマットを示します。
このフォーマットは、幅広い業界で活用可能です。
資産ID | 資産名 | 資産の種類 | 所有者 | 保存場所 | 機密性 | 完全性 | 可用性 | リスク評価 | 保護措置 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A001 | 顧客情報データベース | 電子データ | IT部門 | サーバールームA | 高 | 高 | 中 | 高 | 二要素認証、定期バックアップ | バックアップは週次で実施 |
A002 | 社内業務マニュアル | 紙資料 | 総務部 | キャビネットB | 中 | 中 | 低 | 中 | 施錠管理、シュレッダー廃棄 | 規定改訂時に更新 |
A003 | 販売管理システム | システム | 営業部 | クラウド(プロバイダーC) | 高 | 高 | 高 | 高 | MFA、アクセスログ監視 | 契約終了時データ削除義務 |
A004 | サーバー機器 | ハードウェア | IT部門 | データセンターD | 高 | 中 | 中 | 中 | 定期点検、UPS(無停電電源装置) | 環境監視システム導入 |
サンプル台帳の項目解説
以下に、各項目の詳細な説明を記載します。
1. 資産ID
情報資産を一意に識別するための番号です。番号を体系化(例:「A001」など)することで、台帳の検索性が向上します。
2. 資産名
情報資産の具体的な名称を記載します。例:「顧客情報データベース」、「販売管理システム」、「設計図」など
3. 資産の種類
資産の形態を分類します。例:「電子データ」、「紙資料」、「システム」、「ハードウェア」
4. 所有者
情報資産を管理する責任者または部署を記載します。例:「IT部門」、「総務部」、「営業部」
5. 保存場所
情報資産が保存または設置されている場所を記載します。例:「サーバールームA」、「クラウド環境」、「キャビネットB」
6. 機密性
情報が漏えいした場合の影響度を評価します。評価基準は以下の通りです。
- 高:漏えい時に重大な影響(例:顧客情報)
- 中:漏えい時に業務の一部が影響(例:社内業務資料)
- 低:漏えいしても影響が軽微(例:一般公開情報)
7. 完全性
情報が改ざんされないよう維持する重要度を記録します。
例:「高」、「中」、「低」
8. 可用性
情報資産の利用可能性が求められる度合いを評価します。
業務継続に必須なものは「高」と評価します。
9. リスク評価
影響度と発生可能性を基に、リスクを総合的に評価します。
例:「高」、「中」、「低」
10. 保護措置
リスクを軽減するために講じている具体的な対策を記載します。
例:「暗号化」、「ファイアウォール」、「バックアップ」
11. 備考
その他の補足事項を記載します。
例:「週次でバックアップ実施」、「契約終了時データ削除義務」
情報資産管理台帳の作成手順
1. 情報資産の洗い出し
- 各部署で使用している情報資産を網羅的にリストアップします。
- ヒアリングや既存システム台帳の確認を通じて、漏れを防ぎます。
2. 台帳フォーマットの作成
- サンプルフォーマットを基に、必要な項目をカスタマイズします。
- 業種や規模に応じて、「法的要件」や「更新日時」などの項目を追加します。
3. 資産ごとの評価
- 各情報資産について、機密性、完全性、可用性を評価します。
- 評価基準は社内で統一し、客観的な判断を可能にします。
4. リスク評価と対策の策定
- リスクレベルを定義し、「高リスク」には優先的な対策を講じます。
- 対策例:二要素認証の導入、アクセス制御の強化、物理的施錠。
5. 台帳の運用開始
- 作成した台帳を全社で共有し、責任者ごとに管理を徹底します。
- クラウドツールやスプレッドシートを活用して、更新を効率化します。
情報資産管理台帳の活用事例
事例1:中小企業のデータ管理
- 台帳を活用して顧客データや取引情報を一元管理
- 機密性が高い資産に限定して二要素認証を導入し、リスクを軽減
事例2:製造業の設計図保護
- 設計図や技術データを分類し、バックアップ体制を強化
- 脆弱性の高い旧式ソフトウェアを台帳で特定し、優先的に更新
事例3:金融業のコンプライアンス対応
- 個人情報保護法に基づき、台帳で情報資産の管理状況を記録
- 内部監査やISO審査時に活用し、管理体制を証明
まとめ
情報資産管理台帳は、企業の情報セキュリティ管理を効率化するための強力なツールです。
本記事で紹介したサンプルと作成手順を参考に、自社の業務やリスクに最適化した台帳を構築しましょう。
定期的な見直しと運用の徹底により、情報資産の保護とリスク管理を強化し、組織全体のセキュリティレベルを向上させることができます。