リスクアセスメントマトリクスは、リスクを「影響度」と「発生可能性」の2つの軸で評価し、
リスクレベルを視覚的に整理するためのツールです。
これにより、リスクの優先順位を明確にし、適切な対応策を効率的に講じることが可能になります。
以下では、リスクアセスメントマトリクスの構造、具体例、活用方法について解説します。
リスクアセスメントマトリクスの構造
マトリクス表は、縦軸に「影響度」、横軸に「発生可能性」を設定したグリッド状の表です。
各リスクを評価してグリッド内に配置し、その位置によってリスクの重大性を判断します。
1. 軸の定義
- 影響度:リスクが現実化した場合に与える被害の大きさ(例:システム停止、情報漏えい)
- 高:重大な影響
- 中:業務の一部に影響
- 低:影響が軽微
- 発生可能性:リスクが発生する可能性の高さ
- 高:頻繁に発生する可能性が高い
- 中:時々発生する可能性がある
- 低:ほとんど発生しない
2. リスクレベルの区分
影響度と発生可能性の組み合わせで、以下のリスクレベルを設定します。
- 高リスク(赤):直ちに対応が必要
- 中リスク(黄):できるだけ早く対応する
- 低リスク(緑):許容可能、または後回しにしても良い
リスクアセスメントマトリクスの例
以下は、具体的なリスクアセスメントマトリクス表の例です。
発生可能性:低 | 発生可能性:中 | 発生可能性:高 | |
---|---|---|---|
影響度:高 | 中リスク(黄) | 高リスク(赤) | 高リスク(赤) |
影響度:中 | 低リスク(緑) | 中リスク(黄) | 高リスク(赤) |
影響度:低 | 低リスク(緑) | 低リスク(緑) | 中リスク(黄) |
リスクアセスメントの実施手順
1. リスクの特定
情報資産や業務プロセスを基に、リスクとなる要因を洗い出します。
例:
- 顧客情報データベースへの不正アクセス
- システム障害による業務停止
- 従業員の操作ミスによるデータ損失
2. リスク評価
各リスクについて、影響度と発生可能性を評価します。
例:
リスク内容 | 影響度 | 発生可能性 | リスクレベル |
---|---|---|---|
データベースへの不正アクセス | 高 | 中 | 高リスク |
停電によるサーバーダウン | 中 | 低 | 低リスク |
従業員の操作ミスによるデータ削除 | 中 | 高 | 高リスク |
3. 対応策の策定
評価結果を基に、各リスクに対する対応策を策定します。
- 高リスク:優先的に対策を実施(例:二要素認証の導入)
- 中リスク:計画的に対応(例:操作ミスを防ぐチェック体制の強化)
- 低リスク:状況をモニタリング(例:定期的なバックアップの確認)
リスクアセスメントマトリクスの活用例
製造業の事例
- 背景
生産設備を制御するシステムがインターネットに接続されており、サイバー攻撃リスクが懸念。 - マトリクス評価
- リスク1:マルウェア感染によるシステム停止
影響度:高
発生可能性:中
→ 高リスク - リスク2:従業員の誤操作による停止
影響度:中
発生可能性:高
→ 高リスク
- リスク1:マルウェア感染によるシステム停止
- 対策
- マルウェア対策ソフトの導入
- 従業員へのセキュリティ教育の実施
まとめ
リスクアセスメントマトリクスは、リスクを可視化し、優先順位を明確にするための有効なツールです。
- 影響度と発生可能性を軸に評価。
- リスクレベルに応じた適切な対応策を講じる。
- 定期的に見直しを行い、最新のリスクに対応する。
この手法を活用して、企業や組織全体のセキュリティ体制を強化し、効率的なリスク管理を実現しましょう。