社内LANや家庭内のネットワークで「NAS(Network Attached Storage)」を設置している人もいるでしょう。通常ハードディスクを利用するときはUSBケーブルなどで接続しますが、NASの場合ネットワークを経由して接続するため、複数のパソコンで使用できます。NASのなかには、複数のハードディスクを組み合わせてRAIDと呼ばれるシステムを構築し、データ保存の安全性を高めたものも存在します。
しかしデータを安全に保存できると言っても、故障などの原因でNASが起動しなくなり、データの読み書きができなくなることがあります。今回はNASが起動できなくなったり、アクセスできなくなったりした場合の原因と復旧方法について徹底解説いたします。
NASが起動しない原因
NASはネットワークに接続したハードディスクを指します。ハードディスク1本(=単体)でも使用できますが、複数のハードディスクを組み合わせてRAIDを構築することも可能です。RAIDには複数のハードディスクに同時に同じデータを書き込むタイプや、データを分散して書き込むタイプなどがあり、ハードディスク単体でデータを保存するよりもバックアップがある分安全性を高めることができます。
ハードディスクはパソコンの部品の中でも壊れやすく、NASに内臓されているハードディスクも例外ではありません。NASが故障してしまうと、NASの起動が妨げられてしまいデータの読み出しもできなくなります。
それではNASはどのような原因で起動しなくなってしまうのでしょうか。主な4つの原因について紹介します。
- システム障害
- 本体の故障
- ハードディスク故障
- OSのトラブル
システム障害
NASの電源が入らなかったり、アクセスできなくなったりする原因の一つにNASのシステム障害があげられます。システム障害とは、NAS自体のシステムファイルやドライバの破損などによって、NASが起動しなくなることを指します。この場合、不調なのはNAS本体であり、NASに内臓しているハードディスク自体が故障しているわけではないケースもあります。
もし、NASにRAID構成を組んでいる場合、ハードディスクを取り出して、そのハードディスクを単体で直接パソコンに接続するのは絶対に行ってはいけません。RAID構成が崩壊し、更にデータ取り出しが難しくなってしまいます。
本体の故障
NASにはCPU、メモリ、通信装置、USBなどの部品が搭載されており、さらに内部温度の上昇を防ぐために、ファンなどが設置されています。そのような本体の部品が故障することで、NASの起動ができなくなることもあります。部品の故障によってNASが起動しなくなった場合、故障している部品を修理したり交換したりすることで、修復できるケースもあります。ただし、本体側の故障か、ハードディスク内部の故障かは外見からは分からないことも多く、安易に判断しないのが賢明です。
ハードディスク故障
NASに内蔵されているハードディスクが故障している場合も、NASの起動が妨げられることがあります。ハードディスクの障害には「論理障害」と「物理障害」の2種類があります。
論理障害とは
論理障害とはハードディスクの故障のなかでも、ファイルシステム異常など内部のデータに生じる障害です。ハードディスク自体に問題があるわけではなく、記録されているデータの破損によって不具合が発生します。誤操作や削除・初期化(フォーマット)などにより、正しくデータを読み書きできなくなった状態が論理障害です。
物理障害とは
一方、物理障害とはハードディスクそのものの故障が原因の障害です。ハードディスクは様々な部品から構成されていますが、それらが破損することで物理障害が発生します。
物理障害の原因となるのが、ハードディスクに対する衝撃や振動、熱暴走などです。ハードディスクはデリケートなパーツなので、ちょっとした原因によっても物理障害が発生することがあります。またハードディスクにも寿命があるため、長期間使い続けることも物理障害の原因の一つとなります。
同時発生の可能性も
論理障害と物理障害は個別に発生するだけでなく、双方が同時に発生することもあります。このような状態になってしまうと、ハードディスクからのデータの取り出しは、より困難になるでしょう。
OSのトラブル
NASにもパソコンと同様にOS(オペレーティングシステム)が搭載されています。このOSのトラブルが原因でNASの起動に失敗することがあります。OSのトラブルの場合、パソコンにインストールされているNASの管理ソフトからエラー情報を取得できる場合がありますので、まずはマニュアルを確認すると良いでしょう。
NASが起動しない場合の対処法
NASが起動しない場合の2つの対処法について紹介します。
アクセスランプを確認する
NASには動作状況を表示するためのアクセスランプが設置されているものがほとんどです。NASが起動しない場合、アクセスランプを確認することで、起動しない原因を突き止めるヒントになります。
例えばアクセスランプの点滅の仕方や色など、障害の種類や状況によって通常とは異なる状態になることがあります。NASのマニュアルには、障害発生時のアクセスランプの状態について記載されていることがあります。
NASのアクセスランプの状態と、NASのマニュアルに記載されている状況を突き合わせることで、NASにどのような障害が発生しているのか確認できます。
再起動してみる
NASが起動しない場合、NASの再起動によって問題が解決することがあります。特にNASを長期間動作させ続けている場合、NASを動作させているプログラムが停止してしまうことがあり、このようなケースでは、NASを再起動することで、NASを正常に起動させることができます。
NASを再起動させる方法は、NASのマニュアルに記載されています。メーカーや機種によって再起動の手順が異なりますので、NASを再起動させる際には、マニュアルをしっかり読んで正しい手順で行うことが重要です。NASの電源を急にシャットダウンしてしまうと、内蔵されているハードディスクが故障してしまうこともあるので、注意が必要です。
データ復元業者に依頼する
NASが起動しない対処法として、最も確実かつ成功率が高い方法が、データの復元・復旧を専門とするデータ復元業者に依頼することです。
HDDの交換もデータ復元ソフトの使用も、自己判断で行うとデータが復元できないばかりか、別の故障を生じさせる可能性があります。データ復元業者はまず、故障原因を的確に切り分け、原因に応じた対処を行います。データ復元ソフトでは検出できなかったデータも復旧できることがあるため、早い段階で相談してみるのがおすすめです。
NASを復旧させる場合の注意点
もしNASが動作しなくなった場合はどうしたら良いのでしょうか。NASを復旧させるための2つの注意点を紹介します。
障害を悪化させてはいけない
NASが起動しなくなった場合、中途半端に作業したり通電したりすると、状況が更に悪化してしまう可能性があります。NASが起動しなくなったら、まずは電源を切って、安定した場所に保管することを心がけましょう。保管しておけば、それ以上状態が悪くなることはありません。
個人での作業はリスクが大きい
起動しないNASからデータを復旧するために、個人で作業をすることは大きなリスクを伴います。やみくもに復旧作業を試みるのではなく、まずは専門の業者に相談しましょう。NASは精密機械であり、高度な部品やシステムを使って作られています。正しい知識を持たずに作業してしまうと、状態が悪化して、データを復旧させることが困難になることも考えられます。
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まとめ
NASは重要なデータのバックアップ先として使われることが多く、故障してしまうと業務に重大な影響が与えてしまう可能性があります。もしNASが起動しなかったり、故障してしまったりした場合は、NASの電源をオフにしてネットワークから切り離して、安全な場所に保管しましょう。
どうしてもNASに保存されているデータが必要な時は、データの復旧を専門としている業者へ相談しましょう。確実に復旧できると言い切ることは難しいですが、素人があれこれ作業するよりデータを復旧できる可能性は高まります。
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