ホテルを狙うサイバー攻撃とは?代表的な手口と宿泊事業者が行うべき対策|サイバーセキュリティ.com

ホテルを狙うサイバー攻撃とは?代表的な手口と宿泊事業者が行うべき対策

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ホテル サイバー攻撃

ホテルや旅館では、宿泊予約情報、氏名、連絡先、決済に関する情報など、多くの重要データを日常的に扱っています。また、フロント端末、予約管理システム、旅行予約サイト、業務メール、館内Wi-Fiなど複数のIT環境が接続されているため、一つのアカウントや端末が侵害されると被害が広がる可能性があります。

近年では、ホテル従業員をフィッシングメールで狙い、予約サイトの管理アカウントを奪ったうえで、正規のメッセージ機能から宿泊客を偽サイトへ誘導する攻撃も問題になっています。さらに、ランサムウェアやWi-Fi環境の侵害なども重なると、顧客情報や業務システムまで被害が広がる恐れがあります。

そのため、ホテルのサイバー対策では、単にウイルス対策ソフトを導入するだけでは不十分です。予約サイトのアカウント保護、従業員教育、ネットワーク分離、端末監視、バックアップに加え、実際に侵害が疑われた際のログ保全や被害範囲の確認まで想定しておく必要があります。

そこで本記事では、ホテルや旅館を狙う代表的なサイバー攻撃の手口から、宿泊事業者が行うべき予防策、不正アクセスや情報漏えいが疑われた場合の初動対応までを解説します。

ホテルや旅館を狙うサイバー攻撃の主な手口

ホテルへのサイバー攻撃では、従業員のメールを入口として予約サイトのアカウントを奪い、その後に宿泊客へ詐欺を仕掛けるなど、複数の攻撃が連鎖する場合があります。代表的な攻撃経路を把握しておくことが重要です。

ホテルがサイバー攻撃の標的になりやすい理由

ホテルや旅館では、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、宿泊履歴など、宿泊客に関するさまざまな情報を扱います。予約や決済に関する情報も扱うため、攻撃者にとって価値のある情報が集まりやすい環境です。

さらに、予約サイト、PMSなどの宿泊管理システム、メール、フロント端末、館内ネットワークなど複数のサービスを利用しているため、一つの認証情報が漏えいすると別のシステムへの侵入につながる可能性があります。

宿泊客を装ったメールから従業員の端末を感染させる

攻撃者が宿泊客を装い、「予約内容を確認してほしい」「添付した資料を見てほしい」などとホテルへメールを送り、従業員に不審なリンクや添付ファイルを開かせる場合があります。

そこで認証情報を入力したり、マルウェアを実行したりすると、メールアカウントや予約サイトの認証情報が盗まれる可能性があります。予約業務では宿泊客とのメール対応が日常的に発生するため、不審な連絡を見分けにくい点もリスクになります。

旅行予約サイトの管理アカウントを乗っ取る

従業員の認証情報が盗まれると、攻撃者が旅行予約サイトの管理画面へ不正ログインすることがあります。管理アカウントが侵害されると、予約情報を閲覧されたり、設定や受領口座情報などを変更されたりする可能性があります。例えば2026年にも国内宿泊事業者でBooking.comアカウントへの不正アクセスにより、売上金の受領口座情報が改ざんされ、金銭被害が発生した事例が公表されています。

予約サイトの正規メッセージから宿泊客をフィッシングへ誘導する

予約サイトの管理アカウントを乗っ取った攻撃者が、正規のメッセージ機能を使って宿泊客へ連絡する場合があります。予約内容や宿泊日など本物の情報を含めたメッセージを送ることで、利用者に信用させやすくなります。

その後、「カード情報の再確認が必要」「予約を維持するため支払いが必要」などと偽サイトへ誘導し、認証情報や決済情報を盗み取ろうとします。宿泊客から見ると正規の予約サイト経由のメッセージであるため、単純な迷惑メールより見分けにくい点が特徴です。

ランサムウェアで予約システムを停止させる

ホテルの業務端末やサーバーへランサムウェアが侵入すると、予約データや共有ファイルが暗号化され、フロント業務やチェックイン対応などに影響が出る可能性があります。

攻撃者がネットワーク内で横展開すると、予約管理システムだけでなく、ファイルサーバーやバックアップまで被害を受ける場合があります。最近のランサムウェアでは、暗号化前に情報を窃取して公開を材料に金銭を要求する手口にも注意が必要です。

ホテルのWi-Fiを侵害して利用者の認証情報を盗む

ホテルでは宿泊客向けWi-Fiが広く利用されていますが、Wi-Fi環境や認証画面が侵害されると、宿泊客が偽のページへ誘導される可能性があります。

Microsoftでは2026年7月に、ホテルなどのWi-Fiネットワークやキャプティブポータルを侵害し、利用者を偽の認証画面へ誘導して認証情報を窃取する「CaptiveCrunch」を報告しており、宿泊客向けネットワークとホテル内部の業務ネットワークが適切に分離されていない場合は、宿泊客側の被害だけでなく業務環境への影響も考慮する必要があります。

予約サイトの乗っ取りは宿泊客への二次被害にもつながる

ホテルへの攻撃では、従業員の端末やアカウントが侵害されるだけで終わらない場合があります。予約サイトが乗っ取られると、正規の予約情報を利用して宿泊客へ詐欺メッセージを送れるため、顧客側へ被害が連鎖する可能性があります。

不審なログインや予約サイト上の異常を確認した場合は、アカウントの復旧だけでなく、どの予約情報が閲覧されたのか、どの宿泊客へメッセージが送信されたのかまで確認することが重要です。

ホテルがサイバー攻撃を防ぐために行うべき対策

ホテルのサイバー対策では、予約サイトのアカウント、従業員端末、館内ネットワーク、バックアップなどを分けて考える必要があります。一つの対策だけに依存せず、多層的に防御することが重要です。

予約サイトの管理アカウントに多要素認証を設定する

予約サイトの管理アカウントには、可能な範囲で多要素認証を設定します。パスワードだけでログインできる状態では、認証情報が漏えいした場合にそのまま不正アクセスへつながる可能性があります。

また、管理者アカウントを必要以上に共有せず、担当者ごとにアカウントを分けると、異常操作を追跡しやすくなります。

不審な予約メールを見分けるため従業員教育を行う

ホテル従業員は日常的に予約変更や問い合わせメールを処理するため、フィッシングへの教育が重要です。リンク先でログインを求められた場合や、添付ファイルを急いで開くよう促された場合は、一度確認するルールを設けます。

過去に確認された攻撃例を用いて訓練すると、実際の業務に近い形で判断力を高めやすくなります。

宿泊客用Wi-Fiと業務ネットワークを分離する

宿泊客が利用するWi-Fiと、フロント端末や予約システムなどが接続される業務ネットワークは分離して運用することが重要です。

ネットワークを分離することで、宿泊客側の端末やWi-Fi環境で問題が発生した場合でも、ホテル内部の業務環境へ影響が広がるリスクを抑えられます。

ホテルのシステムを定期的に脆弱性診断する

予約管理システム、Webサイト、VPN、外部公開サーバーなどに脆弱性が残っていると、不正アクセスの入口として悪用される可能性があります。

脆弱性診断では、外部からアクセス可能なシステムや設定に問題がないかを確認し、優先順位を付けて改善できます。システム更新や新しいサービス導入時にも確認すると効果的です。

EDRなどでフロント端末の不審な挙動を監視する

フロントや予約担当者の端末は、メールや予約サイトなど外部との接点が多いため、マルウェア感染の監視が重要です。

EDRなどを利用すると、不審なプログラムの実行や通信、端末上の異常な操作を検知しやすくなります。検知した場合に誰が確認し、どのように隔離するかまで事前に決めておくことが大切です。

ランサムウェアに備えてバックアップを分離して保管する

予約データや業務上重要なファイルは、ランサムウェア被害を想定してバックアップを取得します。

ただし、バックアップが本番環境と常時接続されていると、一緒に暗号化される可能性があります。必要に応じてネットワークから分離したバックアップを確保し、実際に復元できるか定期的に確認してください。

ホテルへのサイバー攻撃が疑われた場合の初動対応

サイバー攻撃が疑われる場合は、被害拡大を防ぎながら、後から原因や影響範囲を確認できるよう記録を残すことが重要です。感染端末や侵害アカウントを封じ込めたうえで、予約サイトやサーバーのログを保全します。

感染が疑われる端末をネットワークから隔離する

従業員の端末でマルウェア感染や不審な通信が疑われる場合は、ほかの端末へ影響が広がらないようネットワークから隔離します。

ただし、後から原因調査が必要な場合は、むやみに初期化やファイル削除を行わず、現在の状態を記録しておくことが重要です。

感染端末を隔離する流れ
  1. 異常が確認された端末を特定します。
  2. 業務影響を確認しながらネットワーク接続を切り離します。
  3. 発見日時と実施した操作を記録します。

侵害された予約サイトのアカウントを停止する

予約サイトに身に覚えのないログインや設定変更がある場合は、不正アクセスされたアカウントの利用停止や認証情報の変更を進めます。

パスワード変更だけでなく、可能であれば既存のログインセッションや接続中の端末も確認し、攻撃者がアクセスを継続できない状態にします。

予約サイトのアカウントを保護する流れ
  1. 不審なログインや操作を確認します。
  2. 侵害が疑われるアカウントを停止または保護します。
  3. パスワードや多要素認証などの設定を見直します。

宿泊客への不審なメッセージ送信を停止する

予約サイトのアカウントが乗っ取られている場合は、宿泊客へ不審なメッセージが送られていないか確認します。

偽の支払いページや本人確認ページへのリンクが送信されている場合は、予約サイト側への報告とあわせて、影響を受けた宿泊客への案内を検討する必要があります。

宿泊客への二次被害を確認する流れ
  1. 不審なメッセージの送信履歴を確認します。
  2. 送信対象となった予約や宿泊客を整理します。
  3. 予約サイトや社内担当者と連携して二次被害防止を進めます。

サーバーや予約システムのログを削除せず保全する

ログには、不審なログイン、設定変更、ファイルアクセスなど、攻撃者の活動を確認する手掛かりが残る場合があります。

復旧を急いでログを削除したりシステムを初期化したりすると、侵入経路や被害範囲を確認しにくくなる可能性があります。利用できるログを可能な範囲で保全してください。

保全しておきたい情報
  1. 予約サイトや業務システムのログイン履歴を保存します。
  2. サーバーや端末の操作・通信ログを保存します。
  3. 取得日時と対応履歴を時系列で記録します。

顧客情報が閲覧または持ち出されていないか確認する

不正アクセスが成立していた場合は、どの宿泊客情報へアクセスされたかを確認します。ログイン履歴だけではなく、ファイル閲覧、予約情報の参照、データのダウンロードなどの操作も確認してください。

個人情報や決済に関する情報が閲覧・取得された可能性がある場合は、影響範囲を整理し、社内の法務・情報セキュリティ担当者などと連携して対応を検討する必要があります。

顧客情報の影響範囲を確認するポイント
  1. 不正アクセスが疑われる期間を特定します。
  2. 期間中に閲覧・取得された予約情報を確認します。
  3. 対象となる顧客情報の種類と件数を整理します。

侵入経路や情報漏えいの範囲を特定できない場合は専門業者に相談する

ホテルへのサイバー攻撃では、予約サイト、メール、フロント端末、サーバーなど複数のシステムが関係する場合があります。そのため、最初に見つかったアカウントだけを確認しても、どこから侵入されたのか、どこまで被害が広がったのかを判断できないことがあります。

特に、宿泊客への不審なメッセージ送信、顧客情報へのアクセス、ランサムウェア感染、不審な外部通信などが確認された場合は、複数のログを時系列で照合する必要があります。

フォレンジック調査では、端末、サーバー、クラウドや予約サイト周辺のログなどを解析し、不正アクセスの侵入経路、攻撃者の活動期間、閲覧・持ち出された情報、影響を受けた端末やアカウントなどを整理できます。自社だけで被害範囲を特定できない場合は、専門業者への相談を検討してください。

おすすめのフォレンジック調査会社

ホテルへのサイバー攻撃では、予約サイトのアカウントを復旧しただけでは、顧客情報の閲覧や持ち出し、ほかの端末への侵入まで確認できない場合があります。不正アクセスや情報漏えいが実際に疑われる場合は、ログや端末をもとに被害範囲を確認することが重要です。

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まとめ

ホテルや旅館では、従業員へのフィッシングをきっかけに予約サイトのアカウントが乗っ取られ、宿泊客への詐欺や顧客情報漏えいへ被害が広がる可能性があります。ランサムウェアやWi-Fi環境への攻撃にも備える必要があります。

多要素認証、従業員教育、ネットワーク分離、EDR、脆弱性診断、分離バックアップなどを組み合わせて対策し、不正アクセスが発覚した場合は端末やアカウントを封じ込めたうえでログを保全してください。侵入経路や情報漏えいの範囲を自力で判断できない場合は、専門調査による確認も検討しましょう。

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